59話 似ていく者たち
レッドが鉄の甲冑を作り出した。
それを見たドリュウの顔がみるみる青ざめていく。
「オラの仕事が……。
魔王様。オラはお払い箱ですかい?」
うなだれ肩を落とし、おでこに手を当てる。
「ただの宝箱職人に成り下がってしまったでやす……」
木の宝箱から鉄の宝箱へと向上させたのはドリュウだ。
鉄の武器や防具も作っていた。
それなのに……
レッドは、いとも簡単に見事な甲冑を作ってしまったのだ。
大量の汗を額から流しながら、ドリュウが必死に訴える。
「代わりのアリがいるなら、土木工事にも戻れないでやす!
オラを進化させて欲しいっす!
何かの役に立ちたいでやすよ!」
寡黙なドリュウが、ここまで必死になるのは珍しい。
俺の体には、
カンカイと入れ替わったあとに得た魔力で満ちている。
「仕方ないな……。
魔力にも余裕がある」
俺はぐっと拳を握り締めた。
「ドリュウ! お前を進化させてやろう」
「ありがとうございやす!」
今のドリュウは、モグラの顔をした小人のような姿だ。
だが名前はドリュウ。
次こそは土の竜……竜人になったりして!?
俺は少し期待していた。
手に傷をつけ、流れる血をドリュウに与える。
すると……。
ドリュウの体が変化していく。
人間の半分くらいの背丈。
がっちりとした体格。
髭の生えた……
小人?
まるでドワーフのような姿になっていた。
「ありがとうございやす」
「それで、どう能力が進化したんだ?」
「さあ?」
<ま、待て……
優秀なドリュウまでが、サンクの病にかかってしまったのか>
カンカイが困惑している。
「俺の病ってなんだよ。
人を病原菌扱いしやがって」
<おお!
お前の病原菌が俺の毒を侵したのか!?
毒を以て毒を制すか>
「だから意味が分からないんだって!」
俺はドリュウの喜んでいる姿を眺めていた。
そして、ふと気づいた。
「みんな、俺の姿のようになっていくんだよな」
「オラはよく分かんないっすけど、
カンカイ様のときもあの方が元人間だったので、
人間の姿に近くなりやした」
「竜にはならないの?」
「なりやせん」
「ドリュウって名付けたんだよ?
俺の願いは?
カブトの頭にはカブトムシの角が生えてるよ」
「土流って土を流す職人。
そういう意味じゃあないんでやすか?」
「勘違い野郎じゃん」
<お前の方が大概じゃがな>
さっきから病原菌だの、俺の方が勘違い野郎だとか……
カンカイって、俺のこと嫌いなのか?
<似たような者同士と思って……>
もう知らない。
カンカイの声は聞こえない。
聞かない。
「あわわわわわわ」
俺は耳を閉じたり開けたりして見せた。
「あ! そうだ。レッドは?
レッドは人間にならないの?」
「なってるよ」
レッドが普通に答える。
「形だけはね。
形だけなんだ。
悲しいよ……」
そして……
レッドが人間の姿になった。
真っ赤な人間。
「人間じゃないね……」
<そうだな……>
「そうだな」
初めて俺とカンカイの意見が一致した。
「僕だけなんかのけ者になった気分だよ」
レッドの顔が寂しそうに見えた。
そう思えた。
「こうすることもできるけど……」
今度は体が銀色に輝き始めた。
これは鉄人形……。
「ある意味凄いと思うけど」
ドロドロと溶け始め、元の赤いスライムに戻った。
「スライムの姿のままのほうがいいでしょ?」
「……。
うん。
確かに」
形だけが人間になっても意味はない。
……見た目って大事なんだな。
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