53話 A級パーティーvs女王ムマ
A級パーティーの三人と、アリの女王ムマが戦っている。
鎧のアリは、A級パーティーによって一瞬で撃退された。
しかし……
魔法使いのフェルスが羽アリにやられた。
精鋭のアリたちは、先程の戦闘をじっと観察している。
黒い眼だけが三人を順に追っていた。
何度も戦闘を繰り返し、進化してきた個体だ。
鎧のアリとの戦闘は、
三人の弱点を見抜く小手調べとなっていた。
防御力の薄いフェルス。
そこを狙われた。
するすると木の根がフェルスを包み込み、
地面へと引き込まれていく。
***
「俺たちはA級だぞ……」
トパーズの声が震えた。
もうそこに余裕の表情はない。
体は堅くこわばっていた。
「D級の報告では六階層まであるはずだ」
表情が曇る。
「ここは四階層のボスだぞ……。
どうやってD級パーティーが、六階層まで行けたんだ?」
アリたちは、じりじりと距離を詰めてくる。
「もしかして、こいつは……
開拓のダンジョンと呼ばれる女王アリじゃないのか?」
クオーツが、そう呟いた。
「広すぎて深層まで行くのに苦労したダンジョン。
開拓のダンジョンの女王では?
その時に聞いた噂は……」
トパーズは驚きから思わず声を漏らした。
「たしか、フェロモンの女王……
惑わし、喰らっては能力を奪う」
クオーツも思い出したように言った。
「そう言えば俺も聞いたことがある。
生まれた眷属は変化し、感覚を共有するという奴か……
どう考えても、階層ボスとしては強すぎるだろ」
羽アリが、ゆっくりと二人を挟み込む。
羽アリの持っている槍は、赤い血のような色をしていた。
トパーズとクオーツは背中合わせに防御姿勢をとる。
巨大なアリが距離を詰める。
一歩ごとに地面が揺れた。
巨大アリの背に据えられた玉座から、
ムマが退屈そうに微笑んでいた。
A級パーティーは、もう二人しかいない。
三人の時のような連携は取れない。
トパーズがクオーツに目くばせする。
「こんな修羅場なんて、
何度も経験してきたじゃないか」
「ああ。
俺たちはA級だ。
何度も潜り抜けてきた」
「意地を見せてやろうじゃないか」
トパーズがニヤリと笑った。
そして走り出す。
クオーツも続いて走り出した。
トパーズの連続攻撃が巨大アリへ叩きこまれ、
羽アリの攻撃はクオーツが盾で受け止めた。
トパーズが巨大アリの脚を斬り落とし、
機動力を奪う。
その瞬間、二体の連携が崩れた。
羽アリはクオーツに向けて槍を突き出す。
盾がそれを受け止めた瞬間――
背後からトパーズが飛び出した。
鬼神の如く目を見開き、
反転しながら舞うように剣を振り抜く。
羽アリの首は宙を舞い……
地面へ転がった。
「殺されたフェルスの仇討ちだ。
あの世で詫びろ」
トパーズがそう言って祈りを捧げた。
トパーズが剣をムマへ向ける。
その刃先がキラリと輝いた。
「相手は三匹。
さあ、反撃と行こうじゃないか」
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