46話 女王アリの忠誠
アリの女王は、目に光を失ってうなだれていた。
「なぜ、お前はこのダンジョンを襲った?」
「……」
「理由によっては、生かしてやってもよいのだぞ」
その瞬間。
女王の瞳に光が戻った。
と同時に、
シンエイとコノハが警戒する。
レッドだけが興味深そうに見ている。
ドリュウは、顎に手をやり黙っていた。
「寛大な魔王様……
わらわのダンジョンは別の女王に奪われました」
そう言って、頭を下げている。
命乞いでもしているのか?
こいつ……もしかして仲間にするチャンス?
でも、また襲われでもしたら……。
あの数の眷属を増やせる相手だ。
危険すぎる。
なあ、カンカイ。
<……>
返事がない。
さっき、寝るとか言ってたか……。
「わらわは敗れました。
そして命じられるままに、このダンジョンへ攻めたのです」
コノハが睨みつける。
「わらわに帰るとこなどありません。
なにとぞ、温情をかけてくださいまし……」
甘えるように顔の前で手を合わせている。
俺には必死の表情に見えた。
「斥候のアリが来るまで、
この群れはこのダンジョンを目指してはいなかったでちゅ!」
コノハが叫ぶ。
「魔王様! こいつ嘘をついてまちゅ!」
コノハが、腕を上下に振り回していた。
「わらわに、この場所を知る術がありません」
「こやつ、頭が回りまちゅ。
言葉に騙されないでくだちゃい」
コノハと女王アリが睨み合う。
シンエイが、女王アリを押さえつけながら言った。
「拙者は、こ奴の統率力は認めます。
ですが、脅威でもあります」
アリの女王が地面に頭を擦り付けていた。
「わらわは、魔王様に忠誠を誓います」
迷うなぁ。
どうやって、こいつに勝ったんだ、俺。
カンカイは寝ているようだし……。
今度こいつが暴れたら、俺に勝てるのか?
そのときだった。
ドリュウが立ち上がる。
「王よ」
「なんだ」
「オラも発言していいでやすか?」
ドリュウが女王を見下ろしながら言った。
「少し女王に質問でやす」
女王がドリュウのほうへ鋭い視線を向ける。
「お前、仲間になったら何ができるでやすか?
何をしてくれるというんっすか?」
「わらわは眷属を使って迷宮を作れる。
部屋だって作れる。
働き者だぞ」
「それ、オラの仕事っすね」
ドリュウが沈黙している。
「王様。
オラを進化させてもらえやせんか?」
「どうした、急に」
「こいつを建設要員にするっす。
オラは武器職人になるでやすよ」
「そんなことができるのか?」
「へい。
オラはカンカイ様の時代に、
武器防具、宝箱を作ってたっす」
コノハは、うなずいていた。
「あたちの生み出した木で、
今は木製の宝箱をドリュウに作ってもらってまちゅ」
そんなこともしていたのか。
俺は知らなかったぞ……。
優秀すぎるだろ。
「今回は、アリの大量の血が手に入りまちたから、
鉄が作れまちゅ」
「え?」
大量の血?
コノハは、かわいい顔をして……
さらっと怖いこと言ったぞ今。
***
こうして――
血を与え、ドリュウは進化した。
ダンジョンもついに十階層になっていた。
女王アリも、俺の血を分け与え臣下となった。
今回のアリ討伐で、かなり魔力に余裕があるように思う。
皆がダンジョンの後始末に追われる。
コノハがダンジョンを掃除するように、
木の根を使って血を吸い上げる。
大量の血から鉄分を取り出し、コノハが鉄を生成した。
ふと、気づいたことがある。
コノハの背丈が……
伸びている?
もしかして進化した!?
ついにコノハが念願の姿に!?
振り向くコノハの姿は……。
いつものコノハでは、なかった。
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