45話 覚えていない勝利
魔王カンカイがサンクと入れ替わり、
アリの侵攻をひとりで止めてしまった。
女王アリは拘束され、
残りのアリはすべてカンカイによって討ち滅ぼされた。
血を搾り取られ、サンクの体へと吸収された。
そしてサンクの体からは、
禍々しいオーラが溢れていた。
<サンク……
サンク……
目覚めよ>
「はっ!?」
胸を押さえる。
確か……
刺されたはずだ。
「俺は死んだのか?」
だが、胸に傷はなかった。
<ようやく目覚めたか……。
アリは片づけてやったぞ。
あとはお前に任せた>
「え?
どういうこと?」
<おお、それとな……
アリの魔力を奪ってやった。
感謝しろ>
「なんだって!?」
<少し疲れた……。
我は休む>
おい、カンカイ。
<……>
目の前には……。
心配そうにこちらを見つめるコノハがいた。
どうやら俺は玉座に座ったまま、眠っていたらしい。
眼下には配下が伏していた。
「あっ……まおうちゃまのお目覚めでちゅ。
皆のもの、面を上げるでちゅ」
レッド。
ドリュウ。
シンエイ。
そしてコノハが跪いている。
カブトはボス部屋の繭の中で、静かに眠っていた。
「この者の処遇はどういたしまちゅか?」
シンエイに拘束されたまま、アリの女王が伏している。
「なんで拘束されてるの?」
「それは、カンカイちゃまが……」
コノハが口を押えた。
「はっ!?
いえ……まおうちゃまのなされたことでちゅ」
「俺が?」
まったく覚えてない。
「そうでちゅ」
……確かに、カンカイがそんな話をしていた気もする。
魔力を奪った、とか。
「そうだった……たしか……」
そう、つぶやいた瞬間。
「さすが魔王様!」
シンエイやレッドが尊敬の眼差しを向けてくる。
「いや今の言葉は思い出したって意味で……」
配下たちは、俺の言葉を誰も聞いてなかった。
……まあいいか。
「そういえば魔物の魔力って奪えるの?」
レッドがその言葉に答える。
「僕の眷属は魔物にやられると、
情報を持った魔力が戻ってくるんだ……です」
レッドの語尾がおかしい。
「でも、残りの魔力は……
勝ったものが魔力を奪う感じだね……です。
魔王様の奪い方は、すべて奪ってた感じだけど……です」
「ああ、だから眷属同士で戦うと
勝った奴の体が大きくなってたんだ!」
「そうだね……です」
「なんだよレッド。
さっきから変だぞ」
「だって魔王様が次はないって言うから……」
「俺そんなこと言った?」
「え~!?
覚えてないの?」
レッドの表情が、いつものように戻ったみたいだ。
顔はないけど……。
でも、これでよかったのか?
……俺はレッドに何をしたんだ?
「さて」
俺は女王アリの方を見た。
どうしようかな……。
「前へ」
シンエイが女王を押し出した。
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