44話 死の変化
サンクと入れ替わり、
カンカイがサンクの体を使ってアリを退治していた。
コノハとレッドが簡易結界を作り、
ダンジョンの魔物たちは避難していた。
そして――
力を込めた魔王の体から、
赤い霧が噴き出した。
「死の口づけ」
ダンジョンにいるすべての存在へ、
赤い霧が広がっていく。
女王アリも、その配下も、
次々と倒れていった。
赤い霧はダンジョンの外へと溢れ、
アリの残党と、
ダイヤたち冒険者にも襲いかかる。
街の悲鳴は消え、
城の警鐘も途絶えた。
「フハハハハ!
見たか我の力を」
ダンジョンの中を、
カンカイの笑い声だけが響いた。
「コノハ、もう出てきて良いぞ」
「さすがでちゅ……
カン……
まおうちゃま……」
コノハの表情は、
どこか悲しげだった。
「少し力を抑えすぎたかのう。
本来ならば、
永遠の霧の世界へと変貌するはずだが……
すぐに晴れてしまう程度の力しか出せぬな」
「まおうちゃま。
あれを見てくだちゃい」
女王アリが……
「グー……ピー……」
寝息を立てていた。
「どういうことだ」
カンカイが顎に手を当てる。
「全開ではないにしろ、
毒は猛毒のはずだ」
「外の奴らも寝てるだけでちゅ」
外の樹木を通して、
コノハが観察している。
「なに!?」
「僕は何もしてないよ。
……です。
外の眷属も寝てるだけだもん」
「おかしい……
何が起こった?」
いまだ目覚めないサンク。
「サンクの……
人間を殺さないという思いが、
我の毒すら歪めたということか……?」
「サンクおうちゃまは……」
「うむ。わるかった。
今の王はサンクだからな。
ここまでにしておこう」
その時――
巨大なアリが目を覚ました。
「目障りだ」
カンカイは指先で、軽く弾いた。
それだけで、
巨大なアリの頭が吹き飛んだ。
「そうだな……
最後に掃除でもしておくか」
指先から、赤い縄のようなものが伸びる。
カンカイは、それを女王アリに巻きつけた。
「こいつの生殺与奪の権は、
新たな王に任せよう」
威厳をまといながら、
カンカイはダンジョンの入口に立つ。
すると、
アリの残党たちが引き寄せられ、
一つの巨大な塊となった。
それを抱き締めるように腕を閉じる。
アリの塊は、
血を絞り出されるように縮み……
やがて消えた。
「うむ。
こんなところか……」
そう言って、
カンカイはサンクへと体を引き渡した。
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