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回復魔法だと思ったら即死魔法でした ~最弱回復魔法師の力を受け継いだ俺、気づいたらダンジョン魔王に~  作者: マリアンナイト


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43話 守るもの

 赤い霧が、城へと迫っていた。


 それなのに……


 王妃は、自分だけが生き残ることを拒んでいた。


「王の命令です。

 どうかお願いします」


「いやです」


 側近の兵士が、真剣な眼差しで言った。


「王様からの言伝です。


『お腹にいる子を頼んだ。

 必ず生きてくれ。

 未来を託した』


 それが王の御意志です」


「家族が一緒でなければ、

 意味がありません」


 それでも王妃は、


 涙を流しながら首を振る。


「お願いします。

 もう時間がないのです。

 ……失礼!」


 兵士は、王妃を抱え上げると、


 地下神殿にある勇者召喚の部屋へと押し込めた。


 それから間もなく……


 地下神殿の扉の隙間から、


 赤い霧が流れ込んできた。


 まるで水が満ちるように、


 止まることなく、


 静かに、


 確実に、


 神殿を侵していく。


 兵士たちはもがきながら、


 次々と倒れていった。


 赤い霧は……


 賑やかだった街も、


 堅牢だった城も、


 すべてを飲み込んでいった。




 その時――


 滅びゆく王国に抗うかのように、


 神殿の魔法陣が死の気配に反応した。


 ……まるで何かを守るように。


 すると――


 地下宮殿の勇者召喚部屋から、


 まばゆい光が溢れ出し、


 地下神殿が真っ白な世界に塗り替えられた。



 ***



 ――そして現在。


 ダイヤの仲間たちは、


 それぞれの過去を語り合っていた。


「神童ともてはやされて……

 調子に乗って、仲間を傷つけて……

 逃げてきた」


 ダイヤは、うっすらと笑う。


「俺は嘘つきで……

 ただの負け犬だ」


 そう言った、その瞬間だった。


 ダンジョンの入口から、


 赤い霧が噴き出してきた。


 ダイヤの額から、汗が一滴流れ落ちる。


「これは、疫病の赤い霧……」


 その声は震えていた。


「やばい! 

 すぐにここから逃げるぞ!」


 今まで見たことのないダイヤの慌てように、


 仲間たちの表情が強張った。


「リュウドウ王国はこれからだと思って俺は……

 アダマス王国を捨てて来たというのに……


 これじゃあ、


 セイジョウ王国の二の舞だ……」


 ダイヤが頭を抱えた。


 ダイヤモンド・アル・アダマス。


 それが彼の正式な名前だった。


 ***


 リュウドウ王国周辺では、


 赤い霧が壁のように迫っていた。


「あれは……疫病の赤い霧……」


 年老いた老人が、


 呆然と立ち尽くしていた。


 子供も、


 夫婦も、


 老人も、


 朝日に照らされながら、


 赤く染まっていく。


 リュウドウ王国の鐘の音が、


 絶え間なく鳴り響いていた。


 街を赤い霧が覆いつくし、


 城を飲み込み……


 鳴りやまなかった鐘の音が、


 ぴたりと止まった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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