38話 スファレライトの輝き
――ダイヤ――
D級パーティーの『スファレライトの輝き』は、
アリの包囲網を突破していた。
しかし仲間たちは、少しずつ気づき始めていた。
「どう考えてもD級じゃないだろ。
ダイヤは強すぎるよ」
タルクが仲間を見回す。
ダイヤは何も言わず、
アリの動きを観察している。
「でも、頼れるリーダーだし……
私には悪い人に見えないよ」
カルサイトが魔石を拾いながら答えた。
「なにか……訳があるんじゃない?
誰だって秘密の一つくらいあるでしょ」
フローラは俯きながら呟く。
「……フローラは俺たちに隠し事があるのか?」
タルクがじっと見つめて問いかけた。
「当たり前でしょ」
「なんだよそれ」
「いうわけないでしょ。
秘密なんだから」
タルクは目線を落とし、ため息をついた。
「俺さ……前のパーティーが全滅して、
もう冒険者やめようと思っていたんだ」
静かに、皆が耳を傾ける。
「そんなときダイヤに誘われた。
回復役をしてくれって……」
カルサイトがタルクの方を見る。
「それでどうしたのよ?」
「断ったよ。
でもさ……」
タルクは空を見上げる。
「居てくれるだけでもいいから頼むって、
深々と頭を下げられたんだ」
皆の沈黙の中、
遠くのアリの足音だけが聞こえていた。
「なんだか必死でさ……
断れなかったんだ」
カルサイトが少し笑った。
「ふふ。
私は楽をしたかっただけよ。
ダイヤには好きにしたらいいって言われたの」
全員がカルサイトを見る。
「責任も押し付けられないし、
すっごく居心地がよかった」
照れながら、
少しの間を置いて言い切った。
「私はこの仲間が好きよ」
「ずいぶん身勝手だな」
「身勝手で悪い?」
フローラが割って入る。
「私は優越感に浸りたかったから」
「急に爆弾発言するなよ」
タルクがからかうように言った。
「みんな似たようなものでしょ」
そのとき、
ジプサムが口を開いた。
「俺は……元剣士だった」
皆がジプサムを見る。
「でも戦うのが怖かったんだ」
いつもは無口のジプサムが淡々と続ける。
「だから守る役になった。
それでやっと居場所ができた気がする」
その輪の中にダイヤが戻ってきた。
そして言った。
「スファレライトの輝き……
なぜ、俺がこのパーティー名を付けたのか。
少し話してもいいか?」
皆の視線がダイヤに集まる。
「スファレライトにはいろんな意味が込められている。
嘘つき、裏切者、幻惑、調和。
ダイヤモンドに匹敵する輝きを持っているのに、
本物なのに偽物だと疑われてしまう石なんだ。
人々を魅了する輝きは本物だ。
そして……
本物かどうかは
見る側が試されている。
……
その輝きが人の孤独を癒し、
自己の魅力を再認識するきっかけとなればと思って……
俺は、本物になりたくて
この名前を付けた」
少しの沈黙のあと、
静かに口を開く。
「俺は別の国の出身なんだ」
仲間たちが一斉に見る。
「神童ともてはやされて……
調子に乗って、
仲間を傷つけて……
逃げてきた」
ダイヤはうっすらと笑い。
「俺は嘘つきで……
ただの負け犬だ」
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