32話 王としての務め
カマキリのシンエイは、逃げたのではなかった。
すべては、
俺がダイヤに集中できるようにするためだったらしい。
余計なお世話なのだけど……。
でも、本当に、真面目なやつだ。
それも悪くないか……
本当に、俺は部下に恵まれている。
俺も、王として応えないとな。
あれ?
たしか、B級冒険者も来てたよな。
「アパタイトとか言っていたかな?
あのB級冒険者にも勝ったのか?」
「そのような者を拙者は存じませぬが、
来た者すべて迎え撃ちました。
が、しかし……」
何か言いたげのようだ。
「そのまま続けよ」
カンカイ!
今のセリフ、王様っぽかったよな?
<その言葉のほうが余計じゃ>
「はっ。
魔王様の言いつけ通り、
殺してはおりません。
コノハ殿に後始末を相談したところ、
魔王様が新たな部屋を作られたとか……」
さすがコノハだ。
優秀な参謀だな。
配下への連絡が早い。
「未来を見据えたお考え……
流石でございます。
生命力を抜き取り、
骨の髄まで奪い取るわけですな」
えーっ!
そんなつもりじゃないんだけどなぁ。
「よくぞ俺の考えを見抜いたな。
褒めて遣わす!
そのまま、ボスとしての務めを果たせ」
でも、王様ってこんな感じでいいんだよな?
「今回のお前の不手際。
無罪放免とする」
なんだか調子に乗って
王様気分で演技しちゃったけど……
これでよかったんだろうか……。
<お前としては中々だったな>
お前に褒められると、
なんだか嫌な気分になるな。
<そこは照れるところじゃないのか!>
あとは、レッドとカブトを生き返らせて、
誰を進化させようかなぁ。
そんなことを考えていると――
「まおうちゃま!
また侵入者の魔物が現れまちた!」
ダンジョン経営も楽じゃないな……
「俺に任せよ!」
<良い感じじゃないか>
***
そして、冒険者たちの街では――
夜の酒場が冒険者たちで賑わっていた。
「疫病のダンジョンとか言ってたやつは誰だよ!
魔石が取り放題で、ボスも弱いときたぜ」
酒を酌み交わし、
稼いだ金が冒険者の懐を温めていた。
だれも、それがダイヤの功績だとは知らずに……。
「三階層のボスは手強かったけどよ、
誰も死なずに生還している。
このダンジョンで一攫千金が狙えるんじゃねーか?」
「武器や防具を取られてるぞ」
「魔石で買い替えてもおつりがくるわ!」
B級冒険者のアパタイトだけが、
しんみりしていた。
「俺の武器防具は、高かったんだぞ~。
魔石じゃ足りないって」
こうしてダンジョンの評判は、
少しずつ広まっていくことになる。
しかし、彼らは気づいていなかった。
それは、
新しい魔王が動き始めたということでもある。
しかし、
それに気づいていたのは、ダイヤただ一人だった。
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