29話 魔王サンク
D級パーティーとは思えない貫禄……。
自信に満ち溢れた所作。
ダイヤっていう冒険者、怖いんだけど……
俺は、何も能力を持たない冒険者だった。
そんな俺が勝てるわけがない。
そうだ。
これしかない!
「どうか許してください!
俺はただの回復師で、戦闘はできないんです」
俺はすかさず地面へ伏し、土下座をするように両手を伸ばした。
声は恐怖で震えていたけれど……。
「静かだ。
足音も聞こえない」
俺は恐る恐る顔を上げた。
「あれ!?
どういうこと?」
ダイヤやその仲間たちが片膝をつき、ひれ伏している。
「何が起こった?」
しかし、
ダイヤが鬼気迫る顔で立ち上がる。
そして、一歩。
また一歩と近づいて来る。
その足が地面にめり込みながら……
「ひっ!
ひえ~~~!!!
こっちに来るな!」
俺は咄嗟に両腕をスライドさせるように振り払った。
その動作と同時に、ダイヤたちが側面の壁に吹き飛ばされる。
「ぐふっ」
D級パーティーは壁に激突し、そのまま意識を失った。
***
――冒険者ダイヤの目線――
……。
俺はダイヤ。
今は冒険者だ。
違う……
これは……
子供の頃の記憶?
俺を避けないでくれ。
そんな目で見ないでくれ。
冷ややかな人の目が、俺を見ている……
……。
「はっ!?」
今、何が起きたんだ?
意識がはっきりとしない。
「ぎょうぎゃ、
ぎょぎぎゅぎゃぎょぎゅぎぎゃぎょうぐぎょぎぎゃぎゃごう」
朦朧とした意識の中で、目がうっすらと開く。
「はいでちゅ、まおうちゃま。
さすが魔王様でちゅ。
みたでちゅか、魔王ちゃまの力を!」
小さな妖精が腕組みをして胸を張っていた。
「フフフフフッ」
「ぎぎぎゃぎゃぎゃぎぎゅぎゅぎげぎゃげ」
「ほんとに優しいんだから、魔王ちゃまは……ポッ」
体が楽になっていく……。
そして、暗闇に引きずられていった……。
…………。
……。
しばらくして、俺は意識を取り戻した。
眠ったようにベッドに横たわっている。
「どういうことだ!?
武器も防具もなくなっている……」
そうだ。
仲間は無事なのか?
「おい!
タルク! ジプサム! カルサイト! フローラ!」
周りを見渡す。
ベッドが横並びに置かれていた。
その上に仲間たちが丁寧に寝かされている。
みんな身ぐるみを剝がされていた。
「おい!
無事なのか!
タルク! タルク!」
隣に寝ていたタルクの肩を揺する。
肩に温かみが残っている。
死んではいない。
「どういうことだ。
あのゾンビのような邪悪な気配を感じたかと思うと、
一瞬にして意識を失ってしまった」
無事なのが不思議で仕方ない。
殺されてもおかしくなかったのに。
おまけに、
壁に叩きつけられた時にできた傷まで治っている。
「おい! タルク起きろ!」
「う……うん……はっ!?
敵だ!
気をつけろ!」
タルクがベッドから飛び起き、持っていない杖を構える。
「あれ?
俺の杖は?」
「きゃっ!
私の防具は?」
カルサイトが気づいたようだ。
「でも、なんで?
魔石だけは取られてない」
俺はベッドから起き上がり、扉を開けた。
すると……
そこは一階の出入り口付近の見覚えのある場所だった。
……俺たちは助かったのか?
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