28話 呪言
D級パーティー『スファレライトの輝き』は
ダンジョンの中に入ると、ボス部屋まで最短距離で向かった。
今日は、冒険者が続々と訪れていた。
B級冒険者、アパタイトのパーティーもその中にいる。
スライムを倒し魔石をいただく。
「急いで、一番乗りを果たしましょう?
ボスは私たちがいただきね!」
支援魔法師のカルサイトは、上機嫌で意気込んでいた。
「今度は罠にかからないように
カルサイト、油断しちゃだめだからね」
フローラが魔法を放ちながらカルサイトに注意する。
そして赤い扉を開け、ボス部屋へ入った。
ボス部屋へは、冒険者のルールとしてパーティーが入った場合、
他のパーティーは入らないようになっている。
しかし、そんなルールを知らない魔王サンクは、
パーティーが入ると自動的にコノハの根が扉を閉める。
カンヌキがかかる仕組みになっていた。
***
「今日は冒険者がたくさん来てくれたね」
満足げにサンクはダンジョンを覗いていた。
「まおうちゃま。
もう四階層のボスなのでちゅから、
早く戻ってくだちゃい」
「レッドがそう簡単にやられるわけないだろ?
見てみろ。この前来たB級冒険者も来てるぞ。
レッドに串刺しにされた体は、そのままじゃないか!」
俺が大笑いをしていると、レッドからたしなめられた。
「王様。
この前来た、D級パーティーの方だけど、
あれ、やっぱりヤバい奴だよ」
「どういうことだ?」
「パーティーのレベルはD級なんだけど、
あの、ダイヤってやつは化け物だよ。
勝てる気がしないね」
「は!?」
攻撃も防御も、眷属のスライムがやられると……
レッドに魔力データとして送られてくる。
しかし、情報が全く役に立っていなかった。
眷属たちが攻撃しているのに、
ダイヤの体に当たっただけで消滅している。
「王様。
あの冒険者ダイヤをどうにかしてほしいよ。
あいつ強すぎるって!」
レッドは、ぷるぷると震えていた。
「この前は、
分身で逃げる暇もないままやられちゃったから、
今回も復活、お願いするね」
「いや……お前が死んだらどうするんだ?」
「レッドが死んだら、復活まで一日かかりまちゅ。
なので、代役を立てないといけまちぇんね」
「代役は、少し大きくなったスライムでお願いするよ」
「おい、負けるの前提はやめろ!」
「じゃあね~。
あとはよろしく~」
「はいでちゅ」
「コノハまで……」
「あたちは、このダンジョンの参謀でちゅから」
まるでコノハが魔王に見えてきたよ。
「なんでちゅか?」
「なんでもないです……」
「心の声も聞こえるのか?」
ぼそっと小さな声で言ったのに、
コノハが振り向いて睨んできた。
<お前も、用心するんだな>
「……。
そんなにあのダイヤって奴は強いのか?」
<我の敵ではない。
だが、お前は何も分かっておらんだろ……>
「そうだったな。
俺は弱小の回復師だった。
どうやれば、ダンジョンを守れるんだろう」
<いや、それが分かっていないと言っておるのだ……。
……ならば、手をかざし、ダンジョンを守りたいと願え。
それしかないわい>
「それだけで良いのか?」
<だぶんな……>
「まおうちゃま。
レッドがやられまちた!
代役を立てまちゅ」
「もうやられたのか?」
「二階層のカブトは進化してデカくなったからな。
奴なら突進して潰して終わりだろ?」
「いえ、
もう死にまちた……」
「はあ?
カブトがか?
早すぎるだろ!」
ダイヤとは、いったい何者なんだ。
いや、まだカマキリのシンエイがいる。
奴に期待しよう。
「おうちゃま」
「今度は何だ!」
コノハが言いづらそうにしている。
「シンエイがにげまちた」
「はああああっ!!!」
礼儀や人情に熱そうなあいつが逃げた?
何かの間違いだろう。
「冷静なあいつが……
いや、まだ加入したばかりの仲間だ。
裏切ったのか!?」
「シンエイのボス部屋を通過して、
こちらに向かって行まちゅ!」
そして、
階段から、光に灯された長い人影が映る。
ゆっくりと、ダイヤを先頭にして降りてきた。
D級パーティーとは思えない貫禄を持って……。
「どうか許してください!
俺はただの回復師で、戦闘はできないんです」
俺はすかさず、土下座をするように手を伸ばし地面へ伏す。
声は、恐怖で震えていた。
***
だが、ダイヤたちにはこう聞こえていた。
「ぎょぎょぎゃぎゅぎゅぎぎぇぎゅぎゃぎゃぎ!
ぎょぎぇぎゃぎゃぎゃぎょぎゃぎぎゅぎゅぎぎぇ、
ぎぇんぎょうぎゃぎぇぎぎゃぎんげぎゅ」
呪いの呪文のような、
不気味な笑い声のような断末魔。
そして、
強制的に平伏させられ、ダイヤが跪いた。
膝が勝手に落ち、呼吸さえ止まる。
魔王サンクへ、ダイヤたちがひれ伏したのだった。
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