26話 魔王、ひとりで迎え撃つ
カマキリは身動きが取れず、もがいていた。
「これは何と柔軟で固い糸。
鉄のようでもあり、赤い血のような糸ですな。
切り抜けることもできますが、少々時間がかかるか……」
レッドやドリュウ、コノハが警戒する。
「いや、そのように警戒はされなさらなくても大丈夫です。
王の実力は拙者が体験しております故、
抵抗は致しません」
「なら、俺の配下になってくれるのか?」
「いえ……」
糸に巻かれながら、カマキリはすっと立ち上がった。
そして、深々とお辞儀をする。
「拙者からお願い仕る。
配下に加えていただきたく存じます」
よく見ると、
カマキリの姿は二足歩行の人間のようになっていた。
六本足だった体は、二本足と二本の腕へと変化している。
腕は鎌のままだ。
「お前に名前をやろう。
そうだな……
これから俺の剣になれ。
シンエイ」
「はっ!」
「これからお前の名は、シンエイだ!」
「かしこまりました。
魔王様」
こうして、各階層のボスが決まった。
一階層はスライムの眷属。
ボスはレッド。
二階層は芋虫の眷属。
ボスはカブト。
三階層はカマキリの眷属。
ボスはシンエイ。
なお、三階層はシンエイの眷属がまだ育っていない。
それまでは、
コノハの眷属木人とドリュウの眷属モグラが担当する。
四階層は工事中……。
魔王サンクが一人で担当することとなった。
「ちょっとおかしいでしょ?
ね、コノハちゃん。
俺が一人で階層を担当するなんて」
「そんなこと、ありまちぇん!
まおうちゃま。もっと自信を持ってくだちゃい」
「そんなこといっても、
ボスを倒してきたやつらが弱いわけないじゃん。
俺、回復師だよ」
「回復師ではありまちぇん!
まおうちゃまでちゅ!」
そんな言い争いをコノハとしていると……
「王様。
玉座が完成しやしたぜ」
建設大臣のモグラ、
ドリュウが顎を突き出して鼻をこすっている。
黒鉄門とはいかないが、
装飾がほどこされた立派な木造の門ができ上がっていた。
「すごいなドリュウ。
やっと俺も、王様になったような気がするよ」
「中も見てくだせい」
立派な玉座が鎮座していた。
石段が作られ、少し高い位置に据えられている。
「ありがとう!
ぐすん……」
「おうちゃま……」
コノハがじっと見つめている。
「そんなに喜んでもらったら、
オラ、本望でさ」
「目に汗が入っただけだ」
そう言って、みんなで笑い合った。
さっそく、多くの冒険者が訪れていた。
D級冒険者ダイヤのパーティー。
B級冒険者アパタイトのパーティー。
多くの冒険者で、ダンジョンは賑わっていた。
しかし、
一階層のボス、レッドは不満げだった。
「王様。
あの冒険者ダイヤをどうにかしてほしいよ。
あいつ強すぎるって!」
冒険者ダイヤは先頭に立ち、奥へ奥へと突き進んでいく。
せっかくの階層ボスは、彼のせいで次々と撃破されていた。
ボスが復活するまで一日かかる。
そのあいだは眷属で強い者が代役として据えられた。
だが、
……あまり意味をなしていなかった。
そして――
彼らが、サンクの目の前に来ていた。
D級冒険者ダイヤのパーティーと睨み合う。
「俺一人で、こいつらをどうすればいいんだよ~」
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