24話 止まれ
まるでおどけているかのように、
レッドはサムアップの形を作ってみせた。
「油断するな!
敵に集中しろ!」
その瞬間を、カマキリは見逃さなかった。
羽を広げ追うカマキリ。
背後へと逃げるレッド。
壁の隅に追い込まれる。
逃げ場などない。
だが一瞬、レッドが二重に見えた。
土煙を上げ、ぐるぐると逃げ惑うレッド。
鎌が振り下ろされ……。
レッドの体が、赤い霧となってしまった。
「レッドーーー!!!」
カマキリは、レッドなど通りすがりの食事にすぎなかった。
試し切りにしかならない弱小の魔物と言わんばかりに、
自分の鎌を口元へ運び、手入れしている。
奴はそのまま二階層へと降りていった。
「レッドが死んでしまった……」
<よく見ろ>
「レッドよ。
安らかに眠れ……」
「安らかに眠れ。
な~む~」
赤い影が俺の隣にうっすらと見えた。
「えええええ!!!!!」
「情報が、かなり取れたよ」
ひょっこり現れるレッド。
「あいつ強いね。
三層のボスにしたほうがいいかも?」
「生きていたのか……」
「さっき安らかに眠れって言った?
復活させないつもりだったのか!?」
「そ、そんなわけないだろ……。
ぴゅ~、ひゅひゅー」
「しらばっくれてる……。
僕、分身して逃げるって前に言ったよ?」
「そんな余裕があったのか」
レッドが生きていてくれてよかった。
でも、まだ安心はできない。
「芋虫のカブトが危ない。
はやく魔力を与えないと……」
まだ正式な配下じゃないからな。
***
カブトの眷属たちを美味しそうに食べるカマキリ。
もう、カブトのボス部屋まですぐそばだった。
カマキリがついにボス部屋を見つけてしまう。
鎌を舐めるように手入れしている姿が、
俺には奇妙に笑っているように見えた。
糸で作られたボス部屋の扉は、
カマキリによって、粉々に切り裂かれた。
何の警戒心も持たず、
カマキリはカブトの元に近づいていく。
「シャーーーッ!」
カブトが糸を吐く。
しかし、
糸はカマキリの鎌によって切り刻まれてしまった。
「コノハ。
カブトの元へ誘導してくれ」
「はいでちゅ!」
木の根が次々に引っ込んでいき、
木の幹が俺とコノハを乗せて移動する。
カブトのボス部屋へと繋がったその時――
カマキリがカブトへと突進して
鎌が振り下ろされる。
もう間に合わない……
「ま、待て!」
そう手をかざした。
辺りが沈黙に包まれる。
すべての動きが止まっていた。
カブトの体を鎌が突き刺す寸前で、
まるで時間が止まったかのように静止している。
カマキリは、ぷるぷると震え――
崩れるように倒れた。
「今だ。
カブトこっちへ来い」
手招きすると……。
カブトも。
カマキリも。
引きずられるように近づいてくる。
「おお……
カブト」
よく見ると、泡を吹いて失神していた。
「そんなに怖かったのか」
俺は急いで、
カブトに魔力を与えた。
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