19話 罠
「なんてことしてくれたんだよ!」
頭を抱える俺の前で、コノハが胸を張っている。
モグラのドリュウは優秀だった。
階層をまたぐ通路を作ってくれたのだ。
――というのに。
その通路を、コノハが木の根で塞いでしまった。
切っても切っても、次々と生えてくる。
このままでは、ボス部屋の階段からしか移動できない。
「一階層のボス部屋の階段まで、結構遠いんだよな……」
ため息をつく俺を見て、コノハが胸を張った。
「大丈夫でちゅ!」
「何が大丈夫なんだ?」
すると――
通路を塞いでいた木の根が、
するすると地面の中へ引っ込んだ。
「え?」
「魔王ちゃまが通るときは、
ちゃんと開くようにしてありまちゅ」
「……」
「これで、冒険者はここから通れまちぇん!」
ドリュウが感心したように頷いた。
「ボス部屋はこれからどんどん増えまちゅ。
階層が増えるたびに、
どこがボス部屋になるかわかりまちぇん」
そこまで考えていたのか。
「玉座から各階層に直接移動できる……
そういう仕組みか」
「はいでちゅ!」
「やるな、コノハ」
コノハはもじもじと、嬉しそうに身をよじった。
「やるっすね」
ドリュウが親指を立てている。
……俺より、よっぽど有能じゃないか。
そんなことを思って、俺は少しだけ恥ずかしくなった。
こんな俺が魔王だなんて。
大した能力もないくせに、
回復魔法を手に入れただけで浮かれていた。
王なんて、俺にはふさわしくない。
でも……
楽しい。
こんな頼もしい仲間がいるんだ。
だったら、せめて。
みんなが楽しめるダンジョンを作ろう。
俺は、王なんだから。
<ほう。ようやく王としての自覚が芽生えたか。
ならば、人間を狩る罠などを作るとよいかもしれんな>
「罠か!? うーん……」
考え込んだ俺に、ドリュウが鋭い視線を向けた。
「王様。
オラに任せてくんねえか?
その罠ってやつを」
そういえば、
こいつは先代魔王にも仕えていた魔物だったな。
ドリュウが、悪そうにニヤリと笑う。
「落とし穴を作って、串刺しにしてやりましょう」
<さすが、建築大臣のモグラじゃ。
よく分かっておる!>
なるほど。
……ちょっと工夫すれば、お宝が手に入るんじゃないか?
「そうだ!
罠で驚かせて、武器や防具を置いていってもらおう。
そういうのはできないか?」
「え!?
びっくりさせるだけ?」
ドリュウが目を丸くしている。
「だから、落とし穴で人間をぶっ殺せば、
武器や防具は手に入りやすぜ」
俺は、真剣なまなざしで答えた。
みんなに分かって貰うには、はっきりと言った方が良い。
そう思った。
「人間は殺さない」
その場の空気が、ぴたりと止まった。
ドリュウが、不思議そうにこちらを見てくる。
「ドリュウには話してなかったか。
冒険者にも楽しんでもらう。
何度も来てくれるような……。
そんなダンジョンにするんだ」
沈黙が続く。
……違う。
俺は、何が言いたいんだ?
本心を、言わないと……。
「俺はダンジョンに行きたくても行けなかったんだ!
ダンジョンはロマン!
楽しいものだろ!」
その言葉で、空気が変わった。
ドリュウが、ぽんと手を叩く。
「……なるほど」
そしてニヤリと笑う。
「今度の王様は、
面白いことを考えていやすね。
わかりやした。
任せてくだせえ。
最高に面白い罠を、作ってやりますよ」
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