16話 深化 臣下
冒険者を撃退した夜。
俺は興奮気味に寝床についた。
芋虫のカブトが、
俺専用のベッドを糸で作ってくれていた。
ふかふかで寝心地が良い。
気持ちよさから、興奮は落ち着き眠りについていた。
すると――
自分の見たことのない世界が広がった。
深い暗闇の中で、復讐の炎が心に燃え上がる。
悲しみと怒りの感情が入り乱れていた。
その時、体から血が噴き出した。
噴き出した血は霧となり、
ダンジョンの外へと広がっていく。
「覚えておれよ人間。
俺を見捨てた冒険者。
お前等もろとも消し去ってやる」
そんな声が聞こえた。
朝起きると、目から血の涙が零れていた。
「なんか、怖い夢でも見たような気がする。
夢って何で起きたら忘れるんだよ」
トコトコとコノハがやって来た。
「おはようごじゃいます。
まおうちゃま」
コノハの頭の葉っぱが、左右に大きく揺れてる。
なんだか、ものすごく喜んでいるように見えた。
「昨日の冒険者のおかげで、
ダンジョンが成長ちまちた!
さあ、今度はあたちにも、魔力をくだちゃい」
小さな体で、両手を差し出しておねだりしている。
「……。
なんのことだ?」
「きゃーーー!!!
スライムには二度も魔力を与え、
死にそうになるくらい可愛がって!
もともとお仕えしていた
あたちたちには、
なにもなしでちゅか!?」
地団駄を踏みながら、
ぷんぷんとすねているが、
可愛らしい。
<可愛いからと言って、
見とれているだけでは、
魔王としてなっとらんの>
仲間は大事にしてるぞ。
<奴らも、スライムのように進化したいのじゃ。
分かってやらんか>
なるほどな。
だけど、コノハにはあのままの姿でいてほしいな。
<好きにせい。
今はお前が魔王じゃ>
部屋から出ると、迷路のような穴が無数にできていた。
<これが二階層だな。
今出てきた部屋が、魔王の玉座というところか>
カンカイがいたような立派な門や、玉座はないんだな。
<それは、お前が部下に指示を出して作ればよかろう。
そのためには、部下の進化も必要だろうがな>
へ~。
おまえ、物知りだな。
<我は、お前の前の魔王だぞ!
物知りとはなんだ……>
「ここから一階層まで行くのは大変そうだな……」
これじゃあ、一階層の様子が見れない。
<またこの展開か……>
どうしたもんか……。
「コノハ。
お前はこのダンジョンで、何をしているんだ?」
「先代の記憶を思いだちまちゅ。
ちょっとお待ちくだちゃい。
あたちの先代のドライアドの記憶は……」
「ドライアド?」
「はい。
進化すればドライアドになれまちゅ」
「マジか。
可愛いコノハが、
綺麗なお姉さんになるのか」
どちらも捨てがたいな。
「ドライアドだった頃の記憶だと……
排泄物の管理や、お宝……」
「排泄物!?」
「はいでちゅ。
人間はどこでもここでも汚して回る不届きものでちゅ」
そりゃそうか……。
人間だもんな。
何日もダンジョンにいたら、出すものは出すからな。
そして――
これからこのダンジョンには、
少しずつ臣下が増えていくことになる。
まだその時の俺は、
そんなことも知らなかった。
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