有崎の憂鬱 ショートストーリー
最近、高野は憂鬱である。有崎が入社してから三ヶ月が過ぎ公私共に充実していた。が、ここの所有崎の様子がおかしい…気がする。今でも有崎の帰りが早い時には夕飯を作って待っていてくれるが、たまに何かを考えていてボーっとしたり、”う!”と唸り頭を振ったりしていて”どうした?”と聞けば寂しそうに微笑み”何でもない”と言う。
そういう時はそっと抱きしめると安心した様に身を預けてくれる。愛おしい…
仕事で何かあったのかと思い営業部で有崎の指導をしている弓月に聞いても何も無いと言っていた。ちなみに、弓月に付き合っている事は話しをしてある。驚いていたがふたりが幸せならそれで良い!と豪快に笑って祝福してくれ、今では良き理解者だ。
「はあ~」
会社のデスクで大きなため息をつくと今年入社した新人の高坂が声を掛けて来る。
「どうしたんですか?大きなため息ついて…また俺何かしましたか?」
高坂は何でも器用にこなす企画部の期待の新人である。飲み込みも早く仕事をこなすものだから皆から作業を頼まれ、キャパオーバーになり高野が皆にストップを掛けた事があった。それ以来高坂になつかれてしまった。
「いや、何でも無いよ…それより無理してないか?言いずらいだろうけど無理
な物は無理!とちゃんと言うんだぞ。」
「はい、大丈夫です。高野さんが言ってくれたので皆さん気を使ってくれて
ますから」
「なら良かった」
「で、相談なんですが…この企画で…」
高坂は自分のノートパソコンを高野の前に出した。
「おいおい、高坂君の指導は佐藤だぞ、佐藤に聞いてくれ…」
「…佐藤さん、ずっと電話中で…」
高野が佐藤を見ると受話器を握り話しながら高野に”すまん”とジェスチャーしている。
「…あ…ああ、うん、何?どこ?」
「ここなんですが…」
高坂の企画書に目を通していると
「高野~~!」
と大きな声で弓月が有崎を連れてやって来た。
「…先輩…声なんとかなりませんか?うるさい!ちょっと待って下さい!」
そう言うと高野は高坂に指示と提案をした。
「ありがとうございます」
「後は佐藤の意見も聞いてみて」
「はい」
高坂は一礼して席に戻る。その際有崎に”よっ!”と軽く挨拶をした。有崎も”うん”と返事をしたが一瞬寂しいそうな顔をして直ぐに元の優しい表情に戻った。
「で、何ですか?また問題でも?」
「問題が無ければわざわざ来ないだろ~」
「…茶化しに良く来ますよね~」
”そうか?”と言い二人は本題へと入る。弓月は高野と問題点を話し合っていた。一緒に聞いていた有崎だが視線を感じ顔を上げると高坂が高野を見ているのに気がついた。高坂は有崎に気が付きニコッと笑う。有崎も笑って返すがぎこちなくなってしまった。
「なんか…嫌だ…」
誰にも聞こえない小さい声で有崎は呟いた。
その後も企画部を通り過ぎる時に高野を見ると、高坂がまとわり付いている事が多く、高野に確認すると”そうかな?”と気にしていない様子だ。
「まったく…高坂は!高志さんも高志さんだよ!少しは気にして欲しいよ!」
有崎は高野家で料理を作りながらひとりぼやいている。
イライラしていいる為、野菜たちは必要以上の力によって木端微塵と化していった。
「はあ~、でも高坂のせいではないんだよな~」
そう、有崎はこのイライラの原因が何かを知っている。”嫉妬”だ。高野に寄り添っている高坂が羨ましいのだ。
「あ~あ、企画に希望出せば良かったかな~」
部署を同じにすると自分の気持ちがだだ漏れしてしまうと思い営業部にしたのだ。しかしその判断は正解だったように感じる。何故なら高坂みたいな奴が一緒に居て高野に絡み付いているのをずっと見ていたら身が持たなかっただろう。
「なんで高志さんは好かれる性格なんだろう…それに本人が気づいてないし」
鈍感、人たらしの意味を理解した有崎であった。
「でも、高坂も距離感考えてよ!まったく~!」
木端微塵になった野菜たちはビーフシチューとスパゲッティサラダとなりました。
「美味しい!いつもありがとう」
そう言って満面の笑顔をされると心が軽くなる。”好きだよ”と抱きしめられると心のわだかまりが溶けてゆく。優しいキスをされると心が満たされる。
「俺ってちょろいのかな…」
最近そう思う有崎だった。
「有崎!」
仕事を終えて会社のロビーを歩いていると高坂に声を掛けられた。
「え…高坂?何?」
「今日この後時間ある?」
「…うん」
「ちょっと聞きたい事があって。付き合ってよ!飲みながら話そう」
そう言うと後ろから同期入社の三浦も歩いて来た。
「三浦も時間ある?飲みに行こうぜ!」
三人は良く行く近くの居酒屋へと足を運んだ。
「三浦~、システム課はどう?」
「慣れるまで大変だけど面白いよ」
高坂の問いに淡々と答えながら運ばれてきた揚げ出し豆腐に箸を付ける。
「有崎は?」
「う~ん、大変だけど戦略練ったりトークの情報探したり楽しいかな」
「そっか、俺は最初じっくり企画を練り上げるものかと思ったのに結構時間
がタイトで情報収集が厳しくてめげそうになったよ」
高坂の話を聞き有崎は高野を思い出した。会社ではいつも忙しそうにしている。会っても話す時間などほとんどなく会った時の微笑んだ顔が励みになっていた。
「そんな時に高野さんが声を掛けてくれて無理するな!って…無理してたとは
自分も気が付かなくて…でも高野さんは気付いてくれてさ、なんか…力が
ぬけたというか…俺、いっぱいいっぱいだったんだな~って…」
高坂はビールを口に含み当時を思い出したのか”ふっ”と笑った。
高野の名前が出て有崎は高野と高坂が寄り添って話していた場面を思い出した。別に特別な事ではないし通常業務の事でふたりが特別な関係な訳では無い。無いが…
「で、有崎は高野さんと仲がいいんだよな。色々と教えてもらいたくてさ」
「え?…うん…良いよ…」
顔では笑っているが心中穏やかではない。高坂が高野の事をどう思っているのか…自分と同じ気持ちではないのか…頭の中で色々な想いが駆け巡る。
「高野さんか…システム課でも名前が時々出ているな…」
鶏の唐揚げを頬張りながら三浦がぽつりと言った。
「え?そうなの?」
食いつき気味に聞く高坂と対照的なのは有崎。何故そんなに名前が売れている?
「うん、さりげなくフォローしてくれてるらしく先輩が話しをしている時に
名前が出る事があるな~詳しくは分からないけど」
高坂はうんうんと頷いて聞いている。
「で、有崎!高野さんの趣味は?家はどこ?有崎は何でしりあったの?」
高坂は前のめりで聞いてた。三浦は相変わらず箸を動かし美味しそうに食べている。有崎は聞かれた事に答えていくが、出会いは高野の弟”ヒロ”と友達で趣味が同じ兄がいるという事で出会った。と公では言っている。
まさか高野の笑顔に一目惚れしたとは言えないからだ。
「キャンプか!今度行く時は俺も誘ってくれないかな!行きたい!」
「うん、聞いてみるよ…」
「やった!俺、高野さんともっと親しくなりたいんだ!有崎もよろしくな」
「うん………」
何故、高野にそんなに執着するの?と聞けず心のモヤモヤが溢れていく。
7月に入り今月は高野の誕生日がある。有崎はプレゼントを何にしようかと悩んでいた。
「お揃いの物がいいなぁ~ 普段使いの出来る物で…」
携帯でショッピング画面を見ながら呟く。有崎の誕生日は意図せずお揃いの財布になって嬉しかったのを思い出す。
「高志さんのそう言う所なんだよな…無意識…はぁ~…これなんかいいかな…」
共通の趣味の物ならばお揃いでもおかしくないかもしれないとカートに入れて他の物は無いかとまた探し出す。
昼時間、食堂に移動中に高坂から声を掛けられた。
「有崎、ちょっと聞いていい?」
「高坂…な、何?」
「高野さんの誕生日って7月って聞いたんだけど!何日?」
「あ…ああ、7日だよ…」
「え~~~!明日か…今日早く上がれば…」
高坂は考え込んだ。そして有崎に”ありがとう”と言い離れていった。
「え?何?プレゼント?…」
有崎の心がまた重くなる。
君の瞳に映る笑顔 ご覧いただきありがとうございます。
”嫉妬”に苦しむ冬真です。高志は冬真の気持ちに寄り添えるのか…
明日もアップします。楽しんで頂けたら幸いです。
あらかると




