第17話 報酬
あれから数週間後、無事探索を終えて街へと撤退した4人は探索の報告を組合へと行い地図を提出した後、親分から声をかけられて工房へとやって来ていた。
「なぁ、嬢ちゃんよ。作った俺が言うのもあれだが……本来ならそんなくるくる回せる物じゃねぇぞ、それ」
「え?そうなんですか?でもちょうどいい重さですよこれ」
ルシィーナはそう言うと、ゆっくり置いたはずにも関わらずズンっという音と共に上機嫌でくるくると回していた杖が机に置かれ、ミシミシという音が机から聞こえてくる。
「魔剛鋼にデカいオリハルコン、そしてダマスカス。俺らドワーフでも2人がかりでようやく運べる重さなんだがなぁ……」
「まぁルシィーナ殿は極北の民、力強さと体格の良さが特徴の民でござるからな。とはいえこの様な形の杖、初めて見たでござるよ」
「私も初めて見ましたね。親方さん、これはなんという武器で?」
「あぁ。なんたってお嬢ちゃんが大鉈を使った戦いが出来るって言ってたからな、支障が出ない程度に組合わせてみたんだ」
そう言って親父さんの撫でるルシィーナの杖は橙色の丈夫で魔力伝導率の高い魔剛鋼で造られており、頭部分にあるひし形には特大サイズのオリハルコンが嵌っていた。
しかしそれだけでなく、杖の柄の片側には広い刃幅と、杖の頭近くまである刃渡りの巨大なブレードが取り付けられており、杖であり大剣でもあるような雰囲気を放っていた。
「近接戦をすることもできる大刃の付いた杖。名付けてブレードロッドだ!」
「ブレードロッド、いい名前ですね!」
「だろう?」
「はい!」
「お、おぉ……そのまんまですねぇ」
「まんまでござるなぁ……いやまぁ、本人が良いならそれでいいでござるが。っと、向こうも終わったみたいでござるな」
「ここまでしてくれとは言ってないんだけどなぁ……」
「あ、ノーちゃん!それがノーちゃんの武器なの?いいねー!かっこいいねー!似合ってるよー!」
「そ、そうかな?えへへ……」
ルシィーナに褒められ、照れながらも尻尾をぶんぶんと振って喜ぶノートゥーンの手には、手甲鉤と呼ばれる鉤爪の様な武器が握られていた。
「ほぉ。あの土蜴の甲殻を甲手に、爪の部分は手堅くダマスカスとミスリルの魔合金でござるか。これまたいいものを拵えて貰えたでござるな、ノートゥーン殿」
「うん。これは気に入った」
「おぉ、珍しくノーちゃんが素直だ」
「い、いいでしょ!だって気に入ったんだもん!」
「ハハハッ!気に入ってくれたなら何よりだ」
「でも親方さん。本当にこんな素晴らしい武器、タダで貰っちゃって良かったんですか?」
「元より恩返しって意味だったからな。それに新しい洞窟にあれだけ大量の鉱石、オマケにどデケェ土蜴まで着いてきたからな。逆にそれだけでいいのかってくらいだ」
「それに、新たな探索し甲斐のある場所が見つかったとあれば、これからこの街には今まで以上に人が集まりますからね」
親方が景気良さげにガハハと笑いながらそう言っていると、いつの間にやって来たのか組合の受付のお姉さんが付け加えるようにそう説明する。
「あ、受付嬢のお姉さん。えーっと確か……」
「エコーでございます」
「そうそうエコーさん!……エコーさん?」
「はい。エコーでございます」
「言われてみれば格好は違うけど顔つきとかは似てるような……」
「似てるも何も、私はエコー。受付嬢のエコーでございますよ。さて、本題に移りたいのですがよろしいですか?」
「あ、はい」
「ルシィーナさん、何事も深く切り込めばいいと言うわけじゃありませんよ」
「そうでござるよ。特に組合受付嬢は謎が─────」
「本題、移らさせていただきますね?」
「「はい」でござる」
有無を言わさぬ威圧感でエコーさんはそう言うと、机の上に明細を広げ今回の冒険の様々な発見に着いた報酬を説明してくれる。
「以上。新しい大型の洞窟の発見、希少鉱の鉱脈の発見、驚異となりうる魔物の討伐の3点を合わせ、今回の報酬は中金板8枚とさせて頂きます」
そして説明が終わると最後にまとめと言わんばかりに今回の冒険の成果を読み上げ、横2cm縦3cm程度の純金で出来た金の板をリーダーであるマシュウに手渡す。
「おぉ。中金板8枚とは、思った以上の報酬でござるな」
「ですね。これなら暫くは困る事なく次の冒険への準備が出来ます。報酬は均等に別けるのが冒険者の基本なので4枚はお2人に」
「あ、ありがとうございます。えっと、お2人共これって……」
「金の板?」
「報酬でござるよ。金の価値はどの国でも不変でござるからな。大中小、新たな発見、働きに応じたサイズと枚数が報酬として渡されるのでござる」
「てっきりカルラドアコアでの働きで報酬を貰ってると思ったのですが、貰ってなかったのですか?」
「はい、実は。流れで行く事になって帰ってきたらそのままお2人にコラルジハルラ行きを誘われて……って感じでしたもので」
「それは……悪い事をしたでござるな。お詫びといってはあれでござるが今回の報酬、拙者の取り分の半分はお2人に」
「え?!いやっ、悪いですよ!私達こそ今回色々教えてもらったのに!」
天裂に金板を一枚渡されたルシィーナは受け取れないと言った様に首を振りながら、そう言って掌に乗せたままの金板を買えそうとする。
「だとしても、確かに半分無理矢理に近い形で連れて来たのは私達ですし、私の報酬も半分貴女方へ」
「えぇぇっ?!だ、だから受け取れませんって!ノーちゃんも何か言って上げてよー!」
「くれるって言ってるんだし貰ったら?」
「ちょっ、そんなノーちゃん!」
「ハッハッハッ!これに関してはお嬢ちゃんよりも妹ちゃんの方が肝が座ってるな!お嬢ちゃんや、あんまり断るのも失礼に当たる、早い内に受け取っときな」
「それに、共に冒険を終えた熟練の冒険者が新人の冒険者へ報酬の一部を送るのは冒険者の慣習でもありますから」
「そ、そうなんですか?エコーさん」
「そうですよ。それにもう1つ、貴女方へはあちらのエコーが渡しそびれた報酬を渡すよう言い使っておりますのでこちら、大金板2枚をお受け取りください」
そう言ってエコーにさっきの金板よりも一回り大きく分厚い金の板を渡されたルシィーナは、凄く気不味い顔で天裂達の方へ顔を向ける。
「か、慣習にもありますからね。何も気にする必要はないですよ。えぇ」
「そうでござる。今回の報酬のだいたい2倍半の報酬を目の前で渡されだとはいえ……で、ござるよ」
「あはははは……所でエコーさん、さっきあちらのエコーって…………」
「さて、では私も用は済みましたしこれでお暇させて頂きますね。では」
やはり聞いてはいけない事だったのであろう、とてつもない殺気の様な圧を漂わせ、一方的にそう言って立ち去っていくのだった。
異世界物あるある
通貨が共通




