僕は
ページ配分が良く分からない。
小説を応募するのには、時間がかかる。普段はルーズリーフに小説を書いているから、パソコンで打ち直すか、原稿用紙に書き直すかしなければいけないし、細部の調整もある。
「正直、面倒臭いんだけどなあ…」
僕は別に怜亜先輩みたいに、将来は作家になりたい、とか思っていない。ただ、本を読むのは好きだし、自分で小説を書くのも好きだった。だから文芸部に入ったのだが、部員が部長である怜亜先輩と僕の二人だけ、というのは正直言って驚いた。最低人数二人ギリギリで成り立っていた文芸部は、前の部長の三年生が抜けて正に崖っぷちだったらしい。僕は初対面の時、怜亜先輩に手を握られ、
「君は文芸部の救世主よ~、希望よ~」
と言われた。ピョコピョコとび跳ねながら、嬉しそうに言うものだから、僕は頭を下げて、
「よろしくお願いします」
と言ったのだった。
でも別に、作家になりたかったワケでもない。なれるのならなるし、なれないならならない。流れに逆らわず、身を任せてしまおうと思っている。要するに、特に夢とか、無いのだ。
「さっさと仕上げよう…」
「空君、小説を出しに行きましょう」
三日前に原稿が出来上がっていたから僕は、はい、とだけ返事をして怜亜先輩の後を追った。
ポストの前まで来ると、怜亜先輩はパン、と両手を合わせた。
「ほら、空君もやるのよ」
ほらほら、と言われて、僕も手を合わせる。
「「どうか、入賞しますように」」
僕と怜亜先輩の声が重なり、碧い空に吸い込まれていった。
「大変よ、空君!」
怜亜先輩が珍しく慌てた様子でパタパタと僕の所まで走って来た。どうやらシューズを忘れて来たらしく、スリッパだった。
「どうしたんですか?またどっかの図書館の本二年間位借りっぱなしだったんですか?」
僕の問いに、怜亜先輩が頬を膨らませる。
「そんな事しません!」
腰に手を当て、唇を突き出して言う。
「何言ってんですか、今まで二度もあったでしょう。その度に、一緒に謝りに行って、とか言って無理矢理連れて行ったでしょう」
「うぅ…。さ、三度目の正直だもの」
「二度あることは三度あるっても言うんですよ」
僕がため息と吐きながら言うと、怜亜先輩はまた、うぅ、と呟いて、拗ねてしまった。
「空君の意地悪っ」
「僕は基本的には温厚な人間なんですよ。怜亜先輩が悪いんです。変な事するから」
「私がいつ、変な事をしたって言うの?」
「何言ってるんですか。あなたの行動全てが変なんですよ」
「酷いわ、もっと先輩を敬いなさい。女の子みたいな綺麗な顔して、口が悪いんだから」
僕は慌てて怜亜先輩の口を塞いだ。
「…っ…!」
今だに何かモゴモゴと言っているが、気にせず辺りを見回す。良かった。ほとんど人が居ない様だ。
「―――――っ!…っっ!」
怜亜先輩がペシペシと僕の腕を叩く。どうやら口と一緒に鼻まで塞いでしまった様だ。
「すみません」
ゆっくりと手を離す。
「ひ、酷っ…ハアー、ハアー、酷い、わ」
息も絶え絶えに、怜亜先輩が言う。余程苦しかったようだ。
「すみません」
拗ねられても困るので、素直に頭を下げる。
「でも、あーゆー事は、なるべく言わないで下さい」
怜亜先輩が首を傾げる。
「あーゆー事って?」
「だから、顔が綺麗とか何とか…」
「どうして言ってはいけないの?」
「―――――っ、とにかく、お願いします」
「……。分かったわ。…あ、そうだ、最初の目的をすっかり忘れてしまっていたわ」
怜亜先輩がぽん、と手を打つ。
「何ですか?」
「あのね、空君の、作家デビューが、決まったのよ」
「…え?」
嬉しそうに手を合わせる怜亜先輩を見ながら、僕の頭の中は白く、白く、染まっていった。まるで、頭の中に雪が降ってきたかのように。
ラストスパート入ります!!
頑張って完結まで書ききりますよ。




