↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
詐欺師聖女 ~呪われ王子(※ピュア)にめちゃくちゃ懐かれてます〜  作者: 月白セブン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/28

お化けも逃げ出す能天気③

本日2話目の公開となります


 リオンたちが庭をぐるっと一周散策し戻ってくると──なぜか使用人たちがずらりと整列していた。


(え、なにごと?)


 リオンとレンはビクッと肩を揺らし、硬直してしまった。

 それくらい、みんな真剣な表情でこちらを見ている。

 いや、アルを見ているような。


 そういえば、先ほど庭で誰かが驚いた顔してこっち見て、走って行った。

 報告に行ったのかもしれない。

 なんの報告かは不明だが。


 朝の食事までずっと下を向いていた彼らは、今しっかりと顔を上げて、アルを見ていた。

 一体何なんだ。


 昨夜、顔も見ずに扉を開けてくれた執事が一歩前に進み出た。



「……アルヴィス殿下っ! 瘴気が消えられたのですね!」

「本当に、ようございました……っ! 今まで大変なご苦労を……」



 上擦った声で、懸命に泣くのをこらえているような。


 よく見れば、他の使用人たちも感極まって涙ぐみ、なんなら本当に涙を流している人もいる。

 ……昨夜までの避けっぷりがウソのようだ。


 アルと使用人たちが話を弾ませる中、双子は集団から離れたところでひそひそと話した。



「……ねーちゃん。これってさ……。本当はあんな態度したくなかったけど、そうせざるを得ない何かがあった、ってことなんじゃないかな」

「うん。昨日はこの人たちのアルへの態度に超むかついたけどさ。呪われた王子って本当のことで……もしかしてこっちの人ってなにか実際に見えてるってこと?」



 そう考えると、今までみんながアルを避けざるを得なかった、というつじつまが合う。



(呪いとか、なんなのそれって思ったけど……本当に呪われていたんだとしたら?)



 噂で怖がってたわけではなく。

 本当にそれが目に見えてたから、視線を合わすことができなかった、ということなら?



「うん。僕も思った。呪いって……なんなんだろう?」



 視線を合わせられない、顔を上げられないほどの呪いか。

 だが双子にはまったく見えない……ってなると。



「……こっちの人にはみんな標準で、霊感があったりするんじゃ?」



 呪いといえば、やはりお化けや悪霊。

 霊感がある人は怖がるが、そもそも霊感がない人には存在すら見えないんだから怖がりようがない。



(お、これ、我ながら良い推理なんじゃない!?)


 ルルが足元で「ミャウミャウ」と鳴いてる。

 抱っこしてあげると、すやすやと眠り始めた。


(子猫はよく寝るんだよね。あー、かわいい)



「っ! ねーちゃん、それだ! きっとお化けがみえてるんだよ! だからアルの顔、みんな見れなかったんだ!」

「そうだよきっと。すんごい怖いお化けの顔がそこにあったから、視線合わせられなかったんだ」



 とんでもないことにようやく気付き、双子の目は輝いている。



(そうか。アルにはお化けが憑いてたんだ。そのお化けが消えたんだ! 私たち、霊感皆無だから見えないもんね!)



 ということは、だ。


 ここの人たちは、アルにすごいお化けが付いているって分かっていて、非常に怖い中、それでもこの離宮に仕えてくれていたということでは?

 つまり、お化け屋敷で働いていた状態だったのでは?


 この屋敷は人の気配こそ薄かったけど、掃除は行き届いてた。(虫はいたが)


 それは──本人に近づけはしないけど、アルが大事だったってこと……ではないだろうか。

 お化けが憑いた人がいて、それが自分たちの目に見えていて恐怖しかないのに、その状況でも働くというのは──すごいことだと思う。



(そっかぁ。見えてるものが全部じゃないのか)



「あれ? でも瘴気が消えて、って言ってたよね?」


 お化けじゃなくて、瘴気って言ってた。

 瘴気って、鬱々とした気持ちのことのはずなのに……?



「お化けが消えたから、精神的に元気になって、鬱々した気持ちがなくなったんじゃね?」

「それだ。レン、天才」



 リオンはポンと手を叩いた。


 お化けが憑いてたから、アルは元気がなかった。

 つまり、こちらの世界の瘴気病というやつだ。


(で、そのお化けが成仏したから、瘴気病も治ったってことか!)



 双子は神妙な面持ちで、今後について二人で話し合った。


「みんな霊感がある世界なんだよ? その中に『なんにも見えませ~ん!』っていう二人が現れたらどうなると思う?」

「……実験されるかもしれない。僕なら、本当に見えないのかってお化け大量に連れて来て確認するね」

「そうよ! お化けの住む廃墟に連れて行かれて、逆に呪われるとか……よくあるでしょ!?」



 ぞわぞわ~っと悪寒がし始めた。

 お化けなど見えはしないけれど、廃墟に連れて行かれてお化け実験されるのは絶対イヤだ。



「つまり──見えないことは秘密にしておこうってことだね。ねーちゃん」

「そう。だからこの話題は禁止。雄弁は銀、沈黙は金だよ!」



 自ら聞こうとしなければ、墓穴を掘ることもない。


 本来なら、瘴気って何? とか、呪いって何? とか、リオンたちの考えとあっているのか聞くところだけど、それはつまり──お化け実験につながる。


 アルがそんなことするとは思ってないけど、どこから漏れるか分からない。

『沈黙は金作戦』決行開始に、二人は大きく頷きあった。



「でもアルってば、なんで呪われちゃったんだろうね」

「……祠、壊しちゃったんじゃね?」

「祠かぁ。それはダメだわ。呪われるわ」

「こっちに祠があるのか、知らんけど」



 罰当たりなことをして呪われるのはセオリーである。

 祠、壊したらダメ。絶対。



「でもさ? なんでアルのお化け、いなくなったんだろうね~?」

「それはねーちゃんのせいじゃね?」



 あっさりと断言したレンに、私は首をかしげるしかなかった。



「え、なんで私?」

「あんまりに能天気でポジティブなあっけらかんとしたアホの隣にいると、その生命力で逃げ出すってなんかで見たことある」

「あ、そっか~! なるほど……って、それ完全にディスってるよね?」



 ルルを抱っこしててレンを叩けない代わりに、ふくらはぎをゲシッと蹴っ飛ばした。



「いてっ! で、でもっ! 自己肯定感爆高のメンタルモンスターが、お化け見えるわけないじゃん!?」

「……見えてたら多少なりとも怖がるもんね」

「そうだよ! だからねーちゃんの能天気ポジティブに恐れをなして、お化けが逃げたんだよ!」



 すっごい良いこと言った! みたいにむふーっと顔を輝かせてるレンだけど。


(なんかむかつくんだよね)


 でもそれは一理あるかもしれない。

 双子と出会ってアルのお化けが消えたんなら、リオンの能天気ポジティブも役に立って……。



「……やっぱ、なんかむかつくな」


 しかめっ面になり、もう一回レンを蹴っ飛ばした。




 ──この時のリオンたちの推理は何もかも外れていたのに、すべて当たらずしも遠からずだったのだが。

 ……当然知る由もない。



◇



 ──その後、この離宮の環境は激変した。


 みんな、すっごく明るくなったし、アル自身も顔を上げるようになった。


 リオンたちがアルを独り占めしたいところだったけど、アルが楽しいのが一番である。

 とはいえ、小耳にはさんだところによると、どうやら朝になるとアルの呪い(お化け)は復活しているらしい。


 しかも、メイドさんの朝のアルを見て「ひぃっ!」ってなってるところに、リオンが「おっはよー!」とアルに触れると、どうやらお化けは消えているらしいことが判明した。


「リオン様……っ! 本当にすごいですっ!」


 メイドに感激されても、双子にはなにも見えていない。

 そこを突っ込むことは当然しないし、話を合わせるべく「いやぁ……えへへ」と愛想笑いでしのいでいるのだけど。



「ほんとに私のおかげってこと……?」

「やっぱ能天気ポジティブだから、お化けも逃げてくんだ……さすがねーちゃん……」

「う、うるさい……っ」



 何も見えないから分からないけれど、状況を見る限り……。

 不本意だけど、どうやらそういうことのようだ。

 なんか、かなり悔しい。





明日は連休前なので、キリのいいところまで5話まとめて投稿します!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。