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新たな訪問者


籠いっぱいの麦を積み込み、一行はロッジ前の小石が敷き詰められた静かな岸辺に戻ってきた。


 収穫のお祝いに、昨日カイルたちが運んできた「黄金の岩塩プレート」を再び熱する。

 今日のメインも、スピカが湖底から獲りたての、身がはち切れんばかりの巨大ホタテだ。


「ジュウゥゥ……!!」


 熱い岩塩プレートの上でバターが溶け出し、ホタテの出汁と混ざり合って、香ばしい蒸気が立ちのぼる。


「……んん~っ! おねえちゃん、この匂い、昨日よりもっと美味しそう!」


 ハルが鉄板のすぐ横で、今か今かと焼き上がりを待っていた。ふかふかのモモの背中にもたれかかり、お箸(メグミが削り出した木の枝)を握りしめて目を輝かせている。


「ハル、そんなに身を乗り出したら危ないわよ。……はい、焼けたわ!」

 メグミがハルの小皿に、ぷっくりと太った貝柱を乗せてあげた、その時だった。


「……? 聖女様、何かが来ます。……誰かが、この『聖域』に招かれたようですな」


 カイルが視線を向けた先、霧の向こうから小さな「丸太の小舟」が、静かに岸辺へと滑り込んできた。


 舟から現れたのは、ウサギのような長い耳を持った、小柄な訪問者だった。大きな瞳を不安げに揺らし、鼻をクンクンさせている。


『……メグミ、この子は「いい子」だよ。森の妖精たちが、道を通るのを許してくれたの』


 妖精さんたちが耳元で教えてくれる。その子は、自分のお腹をギュッと押さえながら、消え入りそうな声で言った。


「……あ、あの……いい匂い。……お腹、空いた。……これ、あげる。……食べ物、かえて……」


 その子は、網袋に入った透明で美しい「青い石」を差し出した。


 ふくちゃんがトコトコと近づき、その子の匂いを確認すると、安心させるように優しく「プィッ」と鳴いて、その子の足元にすり寄った。


「わあ、うさぎさんみたいなお耳! ……ねぇ、君、お腹ぺこぺこなの? お名前は?」


ハルが身を乗り出して尋ねると、その子は「な、なまえ……」と口ごもり、グゥゥ~……と盛大に鳴った自分のお腹の音に真っ赤になった。


「あはは! いいよいいよ、名前は後で! おねえちゃん、早くこの子にも食べさせてあげて!」


ハルが自分の皿を差し出さんばかりに急かすので、メグミも思わず吹き出した。

「そうね。……はい、ホタテ、ちょうど焼けたところなの。熱いから気をつけてね?」


メグミが焼きたてのホタテを一切れ差し出すと、その子は耳をピンと立たせ、ハルと顔を見合わせてから、おそるおそる口に運んだ。


「……んんん……! ……美味しい! ……こんなの、森にない……お星さまの味がする!」


一気に貝柱を飲み込み、その子の瞳に感動の涙が浮かぶ。ようやく人心地ついたのか、その子は網袋をぎゅっと抱え直し、丁寧にぺこりと頭を下げた。


「……ピ、ピピン。ぼく、ピピン。……ごちそうさま。……お星さま、おいしかった」


ハルが嬉しくなって、自分のホタテも頬張る。

「ピピンっていうんだね! 僕はハル! おねえちゃんが作るご飯は、世界一なんだよ!」


ハルが胸を張って自慢すると、ピピンもふにゃりと頬を緩め、大きな耳をパタパタと動かした。

 カイルはそんな二人を見て愉快そうに笑った。


「……ガハハ! どうやら、妖精に選ばれた最初のお客様は、ハル坊に負けず劣らずの美食家だったようですな!」



新天地での新たな生活は

ふくちゃんの驚異的な力による収穫と、妖精に導かれた「いい子」――耳長族のピピンとの出会い。


メグミたちのスローライフは、ハルの新しい友達とともに、より賑やかに、より美味しく加速していく。


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