黄金の羽ばたきと収穫
黄金の岩塩プレートで焼いた巨大ホタテの宴から一夜明け、新天地での生活は本格的な「開拓」へと移っていた。
メグミが朝一番にテラスへ出ると、対岸の斜面が朝日に照らされ、まばゆい黄金色に波打っているのが見えた。
「……やっぱり、あれは全部麦なのね。それも、今がちょうど収穫時期みたい」
メグミの腕の中で、黄金の羽を休ませるふくちゃんが「プィッ!」と鋭く鳴いた。まるで「僕に任せて!」と言っているようだ。
「カイルさん、お醤油を作るには、あの麦が必要なの。……でも、あんなに広い範囲、手作業で刈るのは大変そうね」
すると、メグミの傍らに寄り添っていたスピカが、静かに頭を下げた。
(……メグミ。私の背にお乗りなさい。湖を渡り、あの黄金の地へお連れしましょう)
「えっ……スピカ? 今、私の心に直接声が……」
メグミは驚きに目を見開いた。この豊かな土地の魔力のおかげか、あるいはスピカの魔力が完全に回復したせいか、スピカとの絆が「言葉」として結ばれ始めていた。
こうして、スピカの背にメグミが乗り、その後ろを巨大化したモモがハルとカイルを乗せて、湖の浅瀬を悠々と進んでいった。
対岸の斜面に辿り着くと、そこには見渡す限りの野生の麦が広がっていた。カイルが「魔法の鎌」を構え、気合を入れようとした、その時だった。
「プィィィーーーッ!!」
メグミの腕の中から飛び出したふくちゃんが、空中で一気に巨大化した。黄金の翼を大きく広げると、太陽の光を反射して、あたり一面が眩い金色に染まる。
「ふ、ふくちゃん……!?」
ふくちゃんが力強く羽をばたつかせると、猛烈な「風」が巻き起こった。その風には、ふくちゃんの羽根からこぼれ落ちる黄金の脂粉がたっぷりと混ざりあっている為キラキラ輝いている。
すると、どうだろう。脂粉が触れた瞬間、麦の穂に潜んでいた害虫たちは、浄化の光に驚いて一斉に逃げ出していった。それと同時に、鋭いカッターのような風の刃が、完熟した麦の根元だけを、一寸の狂いもなくサァッ……と綺麗に断ち切っていったのだ。
「……ええっ!? 一瞬で……全部……?」
わずか数秒。
カイルが鎌を振るう暇もなく、目の前の斜面には、綺麗に刈り取られた黄金の麦が、ふかふかの絨毯のように横たわっていた。
「ガ、ガハハ……! 聖獣殿の前では、私の剣技も形無しですな。……これは呆気にとられましたぞ」
カイルが苦笑しながら鎌を収めると、ふくちゃんはドヤ顔(?)でメグミの元へ降りてきて、可愛らしく首を傾げた。
「ふくちゃん、すごすぎるわ! ありがとう!」
メグミがふくちゃんの柔らかな胸毛を撫で回すと、ふくちゃんは満足げに目を細めもっと「もっと褒めろ」「カキカキ」しろとでも言うように頭を下げた。
その後は、みんなで笑いながら、刈り取られた麦を束ねてモモの籠へ積み込んでいく、楽しいだけの「収穫の時間」となった。




