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モーニングショット

 また今朝もミサイルが飛んできた。


 寝起きに一発、朝の身支度を整えている内にもう一発だ。友達から届いたおはようのメッセージを確認する暇もない。


 憧れのハイスクールライフも幕を開け、私の夢見た青春は順調に進んでるというのに、あのミサイルだけはやっぱりお邪魔だ。

 誰が何のための攻撃なのだろう、破壊は一時の快楽と興奮を得るだけで、その先には後悔と罪悪感しか残らないのに。どこの誰かさんか知らないけれど、破壊なんて人に迷惑がかかっちゃうんだから、興奮したいだけならお酒か風俗でどうにかしてほしいなあ。


 なんて私が毒電波を放ちながら家を出ると、そこにはミサキちゃんがセーターのポケットに手を突っ込んだまま、眠そうな顔でぼうっと立っていた。

 見た目は少し怖い感じのコだけど、こうして毎朝私をお出迎えしてくれるし、ちょっぴり朝の早い私に合わせてくれて、毎日一緒に登校してくれる。いい子。

 あまり良いとは言えないスタートの切り方だったけど、こうして素敵なお友達が出来たことはとっても嬉しいし、二人で他愛ない会話をするこの朝の時間が、私は大好きだ。


 しかしそんなこちらの気持ちも知らないで、またふらっとミサイルは現れる。

 ミサキちゃんにはもう見られちゃったから遠慮はしないけど、私みたいな可愛い女の子がミサイルを消滅させるだなんて、もし他の人に見られたりしたら一大事だ。そうじゃなくても、ミサイルなんて見ただけでも普通はパニックだろうし、すっごい爆発音が聞こえたら誰だって大慌てだろう。

 つまり、私の愛しい愛しい大事な青春を守るためには、誰一人にも見られることなく、尚且つ音もなくあのミサイルを消さなくてはならないのだ。えーん。

 ま、そのくらいできますけどね?だって私インテリジェンスなスーパーAI導入してますから。ただ手間なの。


「ごめんね、ミサキちゃん。ちょっと先に行ってて、用事が出来ちゃった」

「ん。わーった。また教室でねー」

 私がもじもじしながら告げると、察しのいいミサキちゃんは、特に詮索することなく見送ってくれた。ほんといい子。


「またあとでねー!すぐ片付けるからー!」


 ミサはそう言い残して、手を振って駆けてゆく。

 ああ、またあのミサイルの迎撃でもしにいくのかな、頼りになる子だなあ。なんてことをミサキは考えながら、一人学校に向かって歩いていく。

 今日の一限はなんだったかな、お昼は何を食べようかな、そんな女学生らしいことを思いながら、提げたバッグからスマホを取り出し時刻を確認して、まだ時間に余裕はあるなと一人つぶやいて、スマホにイヤホン端子を挿す。そのままお気に入りの曲を選んでかけ流すと、片耳にだけイヤホンをひっかけて、鼻唄交じりに登校していった。


「クッソ!思ってたより遠いな!」

「お早く!マスター!ミサイル着弾まで残り二分です!」

「わーってる!わーってるっつーの!」

 するとその時だ、ミサキの目の前に突如現れたのは、どういうわけだか大剣を構えた男子生徒であった。手に持った大剣は発光しながら声を放ち、馴染みある制服に身を包んだ男子は、人間離れした速度と表情で道を駆けてゆく。

 その上最悪なことに、よりにもよってミサキには見覚えがあったのだ。


 ああなんということだ、よもやミサが思いを寄せる相手が、コレだとは。


「マスター!緊急事態、えまーじぇんしー!近くに一般人の反応を確認!ルート案内を変更します」

「バカ!今更遅いんだよ間に合わないだろ!そういうのは早く言え!コノ!」

「あー!今バカって!バカって言いましたね!何をー!誰が危険物の感知をしていると思っているのです!?そうですこの私ですとも!私が索敵及び案内をしているのですよ!あー、今傷つきましたー!謝ってください!謝って!謝れ!!」

「うぅるっさいよ!一般人近くに居るんだろうが!誰かに見られたらどう、す……る?」


 春の陽気も記憶を失う、酷く凍えた空気が辺り一帯に張り詰め、一人の女子と男子は互いに目を合わせた。この絶対零度も身震いする冷たい空気は、彼女の視線から発しているのだろう。


「……おい、どうしよう見られた、見られたぞ。気絶か、気絶させとく?」

「落ち着いてくださいマスター、ほら、彼女イヤホンをつけてます。きっと聞かれていませんって」

「いや、いやいやいや待て待て、ほら、ちゃんと車の音とか聞くために片耳だけにつけてるタイプの子だぞ、無理があるって」

「いえ、ほら今あくびして目をこしこししています、彼女は朝に弱いタイプのねぼすけさんだと私は判断しました。恐らく今も夢と現の狭間に居る状態、ここはダッシュで駆け抜けましょう、ワンチャン変な夢ですみますって」


 朝靄立ち込める街の中、小声で大剣と会話をする奇妙な男子生徒は、ミサキの顔を流し見すると小さく頷いて、そのまま凄まじい速度で駆け出し姿を消した。


 お気に入りの曲が二ループ目に差し掛かった所でミサキは空を見上げ、青い空に浮かぶ白い雲を吹き飛ばす勢いで、大きなため息を吐いた。


「あれ?ミサキちゃんこんなところでどうしたの?待っててくれなくてもいいのにぃ〜」

 すると、一仕事終えてきたのか、ミサは可愛い顔と声をころころさせながら小走りで駆けてきた。

「……ミサ、アンタも大変だね」

 一つ大人びた顔と態度と声色で、ミサキは微笑みながらイヤホンを外すと、慈愛と哀愁で濡れた瞳をミサへと向けた。

 事情を知らぬミサは首を傾げて「えー?」と声を漏らすと、すぐに目を細ませ笑顔になって、ミサキの腕に身体を寄せてひっついて、そのまま二人は他愛のない会話を交わしながら、仲良く学校へと向かっていった。



「……あれ、マスター。反応が消えてますね」

「ハァ!?おま、ふっざ、ふっざけんなよ!?お前俺がどんな思いでここまで走ってきたと……!」

「無いもんは無いんですぅー!私に文句言わないでくださーい!!はーいじゃあ私ストラップに戻りまーす!遅刻したくなけりゃ走ることですね!」

「アッ!おま、せめて学校前まで肉体強化残せよ!オイ!遅刻は内申に響くんだっつーの!バカ!」

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