9.帰宅
腐敗地域の浄化から戻ってからは、毎日お茶したり素振りしたりに戻るのかなと考えていたが、思わぬところで立ち合いができて良かった。
最初にバカにされたのはちょっと癪だけどちゃんと見直してもらえた、と思う。まあまたいつか難癖つけてくるかもしれないけど、とりあえずしばらくは平気だろう。
それにモモとはもっと仲良くなれたものうれしい。騎士では数少ない女子だ。メイドとしてそばにいてくれるアルマのほかには中高齢の女性ばかりなので話し相手が増えるのは助かる。
だがそれもいいことばかりではなかった。
「なんと! ハルカ様は元の国へお戻りになってしまわれるのですか!? 正直寂しいです。まだまだ教えを請いたいことがあると言うのにまっこと残念」
「でもね、また来ると思うんだよね。ドーセリアン次第だけどきっと呼ばれるだろうなあ。だって全国にはまだまだ腐敗地域があるんでしょ?」
「はい、魔物が村や町を襲うような緊急性の高い場所だけでも数か所、そのほかにもすべて合わせれば二十ほどが確認されております」
「じゃあやっぱりまた来ないといけないわね。もしかしたらほかの聖女が選ばれるなんてことがあるかもしれないけど、自分ではどうにもできないしね」
「それは困ります! いえ、困ると言うか寂しいと言うか残念と言うか…… いったいどうすればまたおいでいただけるのでしょうか」
「そこはやっぱりドーセリアンに聞かないとわからないわね。あとで聞いておくね」
「お願いします。絶対に戻ってきていただきたく存じます。私はすでにハルカ様を師として仰いでいるのですから!」
「ちょ、ちょっとモモ? 師だなんて大げさよ。アタシの剣技はまだまだ未熟なんだもの。帰ったらもっともっと修行しないといけないくらいにはね」
「それは驚きです。もっと強いお方が存在するなんて信じられません……」
さすがに全員がスローモーションに見えるなんて言えなくて、アタシは苦笑いで返すしかなかった。
◇◇◇
そしていよいよ帰宅できる日がやってきた。
「じゃあこちらの世界の何かを持てばもう一度聖女に選ばれると言うことなのね? 多分ってところに不安は感じるけどほかに手がないなら仕方ないわ」
「なにぶん前例のないことですので…… ですがエターナル王国由来の品がきっと聖女様との縁を結んでくれることでしょう」
「それがこのペンダントってことなの? ちょっと大きすぎない? ずっと身に着けているのは難しいんだけど」
「首から下げなくともカバンへ入れておいていただくかおそばに置いていただければ効果はございます、おそらくですが」
「それと次に呼び出すときは夜にしてもらえるかな。昼間だとどこにいるかわからないし危ないもん。夜なら家にいるから安心―― えっと、なるべく遅い時間にお願いね」
「かしこまりました。日をまたいだあたりと考えておきましょう。それであれば問題ございませんか?」
「うん、大丈夫。それじゃ送ってくれるかな?」
手には学校用のカバンを持ち肩には木刀袋を背負ったアタシは、来たときと同じように魔法陣の中心に立った。
ドーセリアンやほかの長老が周囲に立ち、なにやらもごもごやっていると思ったら周囲が光り輝いてくる。
次に目を開けたときには元居た場所へと戻ってきていた。なるほど、帰るときは同じ場所に戻ってくると言うことなのか。
それにしても二十日も行方不明だったのだから騒ぎになっているに違いない。本当のことを言っても信じてもらえないだろうし、さてどうしたものだろう。
とりあえず日付と時間を確認しようとスマホを取り出す。その画面を見てアタシは飛び上るほど驚いてしまった。
「なにコレ!? あの日のあの時間のままじゃないの! そんな都合のいいことある!?」
思わず叫んでしまうとちょっとおかしい人みたいに思われそうであわてて口をふさいだ。でも驚かないほうが無理だろう。
と言うことはこれからすぐに道場へ向かわないといけない。アタシはいつものように小走りで道場へと向かった。




