17.次への準備
朝になってアタシたちは次の目的地へ向けて出発した。ナライドでは宴席を設けるような話も出たが、街があんな状態では無理がある。
それよりも街の復興と困っている人たちのためにお金も食料も使ってほしいと告げることが精いっぱいだった。
もっと食料を持ってきていれば良かったが、こちらも予定外に目的地を増やしたのでギリギリなのだ。
そんなわけでここからは時間勝負なところもある。馬には悪いけど多少無理してもらって道中を急ぐ。幸い街道沿いは草も豊富だし小川もあって助かった。
問題は人間のほうだが、こちらは我慢して干し肉を噛みしめて耐え忍ぶのみである。なんといってもこれ以上の被害者を出すわけにもいかない。
「偽聖女たちにはこの干し肉の恨みを乗せた分だけ懲らしめてやらないと気が済まないっすね。夜はせめて温かいもんが喰いたいですよ」
「ユーケスは贅沢だな。飢えるよりは干し肉がマシってもんさ。でももしかしたらまた留守番になったサンカーのほうがうまいもの食えてたりしてな」
「なんだよ、ニッシュだって似たようなものだろ。やっぱり喰うことってのは大事だってことだな」
アタシにとってはビーフジャーキーなんてあんまり食べる機会がないから物珍しいけど、騎士になると遠征のたびにこればかりらしい。
それでも小隊や中隊で動くときには調理をするといっていた。今回は小規模なのでそう言うこともなく、せいぜい干し肉をたき火であぶるくらいが関の山である。
「もう、二人とも文句ばかり言わないの。聖女であるハルカ様が文句ひとつ言わないのにさあ」
「全くその通りだ。これでもあるだけありがたいと思えるくらい疲れたほうがいいと見えるな。良くは休息前に少し訓練でもやることにするか?」
「いえいえ、隊長…… それは結構ですから……」
「アタシは干し肉を食べる機会が少ないから気にならないけど、こればっかりだったらきっと嫌になっちゃうだろうなあ。夜はせめてなにか作ろうかなっていっても材料も調理器具もないんだったわね」
「やっぱり少しくらいは持ってきたほうが良かったですよね? スープ程度でもあると無いとじゃやる気に関わってきますし」
「モモは料理どのくらいできるの?」
「私は食べられるもの作る程度はできます……」
どうやらあまり得意ではなさそうな返答である。しかしタクリームは非番の日に作ることがあるらしく自慢げに胸を張った
「タクリームは小隊の時は調理番だったからなあ。煮込み料理なんて結構うまくて楽しみだったよ。ねえ隊長? 今後は調理器具と食材を持ってきましょうや」
「まあ今回も二か所回って帰るつもりだったし、まさかナライドがあの惨状とも思ってなかったからなあ。次からは長旅になるだろうから聖騎士隊の規模も見直しになるだろう」
「でも私は絶対にハルカ様番を続けますからね? 次回選抜の時はお願いしますよ? 私が一番長くおそばでお仕えしているんだから当然選ばれるはずですけど!」
こんな最低限の装備で遠征へ出されているのに文句を言うどころか、再びアタシについてきたいと言ってくれるモモの言葉はうれしい限りだ。
「それにしてもサンカーはいつも留守番になってしまってかわいそうだわね」
「まあユーケスを置いて行っても良かったんだが、後発の騎士団との繋ぎ役としては少々不安が残るから仕方ありません。それにモモはもちろんのこと、タクリームも水の加護持ちでハルカ様と相性がいいですしね」
「やっぱり火の加護持ちが一番多いの? 今回も六人中半分が火だもんね」
「そうでもありませんが、攻撃力が高いのは火ですから。少人数の時は火を多く入れたくなるものなのです。しかしまさか聖なる加護を水に乗せることができるとは驚きました」
「偶然ひらめいただけだし、深い考えはなかったんだけどね。うまくいってよかったわ。だからあまり過剰にほめないでくれるかな? 恥ずかしいから……」
「ひらめきは十分すごいことですよ? さすがハルカ様です!」
「じゃあこうして次の場所へ行ってしまおうってのも意外にいい感じのひらめきかもしれないわね。なんとしても偽聖女の悪行を止めるわよ!」
「左様でございますね! それでは本日は腐敗地域のそばまで行って陣を張りましょう。夜が暮れてしまうと腐敗の影響がわかりにくくなりますからそこまでですね」
「それじゃなるべく多く進もう!」
その後は何度か休憩を取ったくらいで順調に行程をこなし、薄暗くなってきたところで陣を張って休息を取ることにした。
もちろん偽聖女の一派がやってきても対処できるよう、最大の厳戒態勢であったことは間違いなかった。




