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第一章 3

僕は足を揃え、背筋をシャンと伸ばしてから大きく頭を下げた。


「こちらこそ…よろしくお願いします!!」


漁師のおじさんに海の男はハキハキ挨拶するもんだ!とよく教えてもらったけど、まさにその通りだ。

なんだか自分の中にも渇が入るようで、腹の底から力が湧いてくる気がした。


そんな引き締まった気持ちで顔をあげると、

「ちょっとダイ、あんたいつまでそうしてるんだい?」

いつの間にか机上には酒瓶がズラリと並び、宴会の様相を呈していた。

「ええっ!!酒瓶出るの速くないですか?

気持ち的にも物理的にも!」

もうこのけじめ的なサムシングが台無し!!


気恥ずかしさとふてくされのないまぜになったような気持ちで渋々近寄っていくと、

「あー…、

椅子足りないっすね…代わりにこれ使っといてください」

トッドと呼ばれていた外はねのひとが樽を寄越してくれた。

「ありがとうございます…」

しかしでかかった。

しかも不安定だった。


なんだかこの樽が今後のこの海賊団と僕の雰囲気を象徴してるようで自分の事ながらいたたまれない…。


「おっし、そうだね!まずは自己紹介からいってみるかい?」

いきなり、すでに顔が桜色になってきているニキータ船長が周りを見回した。

「じゃ、まずは新入りのダイから!」

「えっ!!」

いきなりの指名に思わず声が裏がえった。

それだけで船長はこんだけ豪快に笑ってるんだから笑い上戸なんだろう。

少し憮然とした気持ちを抱えつつ、僕は立ち上がった。

「ダイです。ファミリーネームはカカントです。

えっと…12歳です。」

もう何を話したら良いか分からなくなってしまった。

「特技とかはあるんすか?」

「特技…ですか…?」

見れば、ニヤニヤしながらトッドさんがじぃっと僕をみていた。

「えっと…声まねが得意です。」

へぇ!!と反応したのはニキータ船長。「なんかやって頂戴よ!!」


「あー…、ん、ん…こんなんとかで良いっすか?」

「あたしっすね!!」

何故だか分からないけど昔からこれだけは得意だった。これで多少小遣い稼ぎが出来るくらいに。

「じゃ、じゃ、次あたしで!」

何らかの対抗意識が生まれたのか、今度はトッドさんが立ち上がった。

「海賊団のエンターティナーとして!、新入りになんか負けてらんないっすよ!」

「お調子者じゃなくて?」

何故だか眼帯の人はいつでも彼女に冷たい。

「リナ・リナ・トッド。名前がトッドっすから間違えないでくださいよ!

花も恥じらう18歳!

特技は多すぎて言い切れないっすからまぁそのうち教えてあげますよ!

因みにダイ君いれなかったらあたしが入ったの一番遅いんす。この海賊団に。」

そうご機嫌でいうトッドさんの特徴は、ブロンドよりも黄色に近い髪の毛が全部肩の上で外に向かってはねているとこだろうか。

身長はセシルよりちょっと高い位だから…160位かな。

剥き出しの腕に黒い布が巻いてある。

「ん?この腕隠しっすか?」

あまりにそこを見つめてしまっていたからだろうか、トッドさんは、

「色々便利なんすよ、これ。イロイロと」

と言って笑った。


「カスカは?次どーぞ」

あれで自己紹介は終わったんだろう、トッドさんはカスカさんの方を向いた。

「んあ?ジコショーカイだ?」

雲の上を見ようとするような表情でカスカさんは考え込んだ。

カスカさんは小柄だ。僕より小さい位だから、僕と同い年くらいだろう。ぱっと見少年か少女か分からない、というか少年にしか見えない。

ブカブカのタンクトップから覗く腕には包帯ががんじがらめに巻かれている。みんな腕を隠したいんだろうか。

しばらくすると、短いボサボサの短髪を掻きながら、彼女は口を開いた。「カスカ。名字忘れた。…せんちょ、オレ何歳だっけ?」

「おいおい…16だろ?」

年上だと…?

それも四つも年上だと…?

「ダイ君信じられないって顔つきっすね…」

「あー?なんだよお前。…12だっけか」

「そう…だけど?」

なんだか悔しかった僕は思い切ってタメ口をきいてみた。

相変わらず焦点があってないかと思いきや、カスカさんはしっかり僕の目を見て、(信じられないほどの凄みがあった)ニヤリとと口元を歪めた。

「んなのまだガキだな。」


…ですよね。

まあ、12だからね。子供ですよね。

「でもなんかすっげえ悔しい…」

「なんか言ったかぁ?」「別にっ!!」


僕がふてくされてそっぽを向くと、

「お前思ってたより面白ぇじゃねぇか」

カスカさんがニヤニヤしながら頬杖をついた。

「さっきみてぇによく分かんねぇこと言ってるより断然らしいぜ。」

「…。」

もしかして、励ましてくれたのか……?

「断然、ガキらしい。」「やっぱり!そんな感じなんだろうなと思いました!」


ギャハハハ!

およそうら若き少女の発する笑い声と思えない程豪快に笑いながら、カスカさんは頬杖を解き頭の後ろに組み替えた。

よく見ると、彼女は器用な事に椅子ではなく背もたれの上でヤンキー座りをしている。

なんて言うか、どの行動一つとっても彼女は僕の理解の範疇をブッ越えていた。



「で、シーランは自己紹介しないのかい?」

僕らの騒ぎが一段落した時に、すっかり壁の華と化していた眼帯の人…もといシーランさんにニキータ船長が矛先を向けた。

シーランさんは一瞬その端正な眉を面倒臭げにひそめた後、ため息をつくと、

「フォン=シーランです。以後、お見知りおきを。」

とだけ言ってまた壁の華に。

「シーラぁン…もっと言うことあるだろ~?あんたならさ~」

ニキータ船長の絡み方が明らかに酔っ払いのそれになっている。

「特に無いですね。余り自分のことを言うのも好きではないんですよ。」


シーランさんは痩身で長身だ。

でも不健康な印象は無くて、むしろガラス細工のよう。

正直とんでもない美人だと思う。なんで男装なんてしているんだろう。

腰まである銀髪を、オールバックにして結わえているのも綺麗だ。

唯一気になるのがやっぱりその無骨な眼帯だけど、それがあってもやっぱり整った顔をしている。


ただ、性格に難がありそうだ…。


とか何とか考えていたら、隣から規則正しいいびきが聞こえてきた。


「あー、船長バタンキューっすね」

「全く、お酒に弱いのに飲みたがるんですから。手に負えませんね。」

「結局船長は自己紹介できてないっすけど」

「いや、まあでも起こすのもあれですし。寝かしといてあげましょうよ」

「おし、んじゃあ…運ぶぞ」

そう言うが速いか、カスカさんは一人ヒョイとで170センチはありそうな船長の体を持ち上げた。

「お…重くない?」

思わず船長にたいしてあまりに失礼な質問をしてしまったら、当のカスカさんはけろりとした顔で、

「別に。」

と答えて奥へとっとと行ってしまった。

「ダイ君片付けるの手伝ってくださいな」「あっ…、はい!!」

僕は並ぶ酒瓶(ほとんど減ってない)を片付けながらしみじみと思った。


どうやら、思ってたより……大分とんでもないとこに入っちゃったみたい…。

次回から冒険に向けて加速するつもりです!!

応援よろしくお願いします!!

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