第一章 2
「さっきから返せって、あたいたちが人攫いみたいなこと言ってるっすけど、あたいたちそんなの全然知らないんすからね!!?」
何だって?
「ははぁ…さてはダイ、あんた、あたし達と他の誰かさんのこと、間違えたね?」
嘘だろ…?
じゃあ、まさか僕が入ったあの樽は全然関係無いこの人達のところに運ばれて…?
この気持ちをなんて言うんだろう…分かってるよ、気まずいって言うんだろ!!
と、半ばキレ気味に考えていると、
「あ、マジに人違いだったんすか?」
「情けないどころか、とんだど阿呆ですか。」
容赦なく針の筵にされてしまった。
「なぁなぁ、今って何がどうなってんの?」
「カスカは少し黙っててください。」
「何でだよぉ」
そこではっとした。こうしてる内にも、セシル達はどこか遠くに連れてかれてしまう!
「人違いでした!本当にすみませんでした!じゃ、僕もう行かないといけないので!」
慌てて貨物室から出ようとしたところ、
ヒュパンッ!!
しなやかな鞭にからめ取られた。
「ちょっと待ちなよ。あんた、それだけ好き勝手言っといて、すいませんで逃げようとなんてしてないよねぇ?」
鞭の主であるポニーテールの女がにやっと微笑った。
「本当にすみませんでした!でも、僕本当に急がなきゃいけなくて…っ!!」
「それって、さっき言ってた<みんな>に関係してそうっすね?」「そうです!だから本当に急がないと…」
なおももがいて出ようとする僕に、
「まぁ、どちらにせよここからはしばらく出れませんよ。」
と冷静に眼帯は告げた。「え?」
「何故なら、
我々はもう出航してしまっているからです。」
「…嘘…。」
呆然とする僕を手繰り寄せながら勝ち誇ったようにポニーテールの女は口を開いた。
「ま、あたし達だって一応海賊だからね。船出は速い訳よ。」
「…海賊…?」
この人数で?
思ったことが顔に出てしまったらしい。ポニーテールの人は得意げに、
「そうさ、たった四人ではあるけど、あたし達は海賊……ニキータ海賊団さ。そして、あたしが船長のニキータ。よろしく。」
そして僕の鞭をパラリとほどくと先ほどの悪い笑みが嘘かのようにカラっと笑った。
「さて、ダイ。あんたがこんなとこに間違って来ちゃったいきさつをとくと聞かせてもらおうか。…時間はなかなかあるからね?」
いい笑顔とは裏腹に、仕舞われた鞭がパァンっ!!と乾いた音を立て、もう僕はこの場からは逃れられないことを悟ったのだった…。
さて、ところ変わって僕らは今食堂と呼ばれている辺りにいる。
正直、食堂とは名ばかりの狭いとこに机がおいてあるだけの空間だ。
「…というわけで、速くしないともう…セシルを助けられなくなってしまうんです!!」
僕はさっきまでの経緯を一気に語った。
「なるほどね…結構シリアスに訳ありだった訳か…」
ポニーテールの女…ことニキータ船長は顎に手をやってなにやら考えているようだった。
「ダイ…、
そいつらは一人や二人ではなく何人もの子供…、それも女の子を攫って行ったんだね?」
「はい…」
考え込んでいたと思えば、ニキータ船長はいきなり僕にそう聞いてきた。「船長……やっぱりこれってあいつらっすか…?」
「ああ、その可能性は大いにある。」
あいつらって誰だろう。しばらく眼に手をやって何事か思案していたニキータ船長は、ふっと顔を上げた。またもガッチリと燃えるような両目でこっちを見てくる。不思議と僕も目が離せなくなる。
「いいかい、ダイ。もしあたし達の読みが間違ってなかったら…
そのセシルって子の命は保障されたも同然だろうね。」
ガタッと大きな音がした、と思ったらそれは僕が慌てて立ち上がった音だった。
「本当ですか!!」
しかし、僕が喜び勇んでそう聞いた途端、彼女の目が一瞬揺らいだ。
「ただ…」
何故かたったそれだけで言いようのない不安がこみあげてくる。
「死ぬよりももっと酷いことになってしまうかもしれない。」
…何だって?
なんで…?
「ダイ、あんた錬金術って知ってるかい?」
「え?」
なんでいきなり…?
「錬金術とは。」
いきなり壁にもたれていた眼帯が語り出した。
「元は他の金属を金にしようとするところから始まった学問で、今ではあらゆる分子などを組み替えて新しい物質などを生み出す学問であり……ある意味では一種の魔術です。」
「いきなり雄弁になるんだ、あいつは。」
「え?え?その…錬金術とやらとなんの関係が…?」
「うん…」
ニキータ船長は頭をガシガシと掻きながら何とも歯切れ悪く話し出した。
「さっきあいつが言ってたように、錬金術では不老不死の研究が進められてるんだ。
でも、その研究には非道徳的で、倫理観に反するような……
おぞましい人体実験がつきものなんだよ…。」
嫌な予感がしてきた。
まさか…セシルは…。
「そんで、その実験には……
女体が一番適してるらしいんだ」
ニキータ船長はとても言いづらそうに眼を伏せた。止めてよ、そんな顔…っ!!
気が付けば外ハネも辛そうな顔をしているし、眼帯も無表情ではあるけれど、どこか憂いを帯びた眼をしている。
カスカと呼ばれていた女だけは相変わらず焦点が合ってなかった。
「だから…もしかしたらそのセシルちゃんって子は…」
膝から力が抜けた。
まさか…そんなのって…。
そんなのって人身売買なんかよりもよっぽどタチが悪いじゃないか!!
あまりに痛々しかったのか、海賊団の人たちは、黙って僕を見下ろしていた。
どれほどこの気まずい沈黙は流れただろうか。
いきなりニキータ船長はハッキリした口調で語り出した。
「あたし達はそいつを追って海賊やってるんだ。その、倫理観を捨て、欲に取り憑かれちまった錬金術師…
そいつ率いる化け物みてぇな海賊団をさ。」
そしてツカツカと僕に歩み寄り、両肩を掴まれた。
「なぁ、ダイ。
あたし達と一緒に来ないか?」
破顔一笑。
眩しいくらいに顔全体で微笑みかけられた。
「…え?」
「旅は道連れ世は情けって言うだろ?あたし達は奴を追っている。あんたは取り戻したい奴がいる。
…これもなんかの縁だろうよ!
ちょうどそろそろ人手が欲しいな~って思ってたとこだしね」ニキータ船長は他の三人を順繰りに見回した。
「あんたたちはどう?」
「カスカはああですし、トッドに至ってはもう…。人が増えることに異論はありませんね。」「ちょ!えぇ!?なんすかそれ!カスカさんはともかくっすけどぉ…ま、かわいい男の子は増えるに越したことはないっすよ」
「ん?なんだそいつ仲間になんのか?…じゃあな、トッド。元気でな」
「なんで私がいなくなる方針なんすか!?今のどこからその発想に!?話聞いてないのもろバレっすよ!!」
さっきまでの僕のせいでの残念な沈黙はどこへやら、いきなり始まった漫才に思わず笑ってしまった。
本当は笑ってる場合じゃないはずなんだけどね。
いつの間にか、八つの目が僕の方を向いていた。
「ダイ、あんたは?」
答えはもう決まりきっていた。
やっとコメディ方向にもっていけそうになってきました!
もうテンションガンガンで持って行きたいと思います。
後ニキータ船長のセリフが小説紹介文で書いたセリフと大分違う物になってしまいました…。
が!
細かいことを気にしちゃ負けよ!!のスタンスでこれからも呑気に続けて行きたいなぁ、と思ってる次第でありまして…←
応援よろしくお願いします!!←




