冒険者と対面
ビクト-ルの話によると、サラマンダーの巣は砂漠の果ての枯れた大地だと言う。けれどそんな大地に何故か昔から生え続けている木があり、それを守るようにサラマンダーが炎の防壁を作っているらしい。
ただ、エリクサーの材料に必要な素材なので、極秘にエルフの護衛依頼が時々入っていたそうだ。
「それもここんとこピタッと止まってたから、どうしたのかと思ってたんだが…」
若干無精髭の生えた顎を撫でながらビクト-ルが難しい顔をしている。髭を剃れば5才くらい若く見えるのに勿体ないと思いながらも、イルナはその場の会話を静かに聞いていた。
と言うか、それなら場所は分かってたんじゃないかと思ったが、極秘事項とかで薬師達は頑なに場所を言わなかったらしい。ハンター達も依頼内容は喋れないので、最後の素材である生命の木の場所がわからなかったようだ。
「パパから聞いてると思うけど、薬師達はみんなヴァルデマーの呪いで眠ってるんだよ」
「それなんだが、何でそのヴァルデマーとか言う奴はエルフの村の場所を知ってたんだ?」
「ああ、それはねぇ」
そう言えばそうだ。エルフは人に知られないように集落を魔法で隠している。イルナも転移のオーブで移動したので、どこにあるのか知らないのだ。普通に移動して向かうのは不可能だ。
「ヴァルデマーの部下?なのかな。まあそういうのにドラウ族がいるんだよ」
「何だって?それなら…」
「え、ごめんキルスティ。ドラウ族は魔族でしょう?どうしてエルフの村を知ってるの?」
「それはねぇ、ドラウ族はエルフになれなかったエルフの亜種だからだよ」
「え…」
つまり、元々はエルフとして生まれるはずだったが、それが叶わなかった種族だとか。
「エルフは神に準ずる種族。簡単に言えば小神族に分類されるんだ。だから長命だし精霊とも会話できるんだよ~」
「そうなんだ…。じゃあ、ドラウ族は…」
「彼等は邪悪な魂を持って生まれてきてしまったのよ。だから小神族として認められず、精霊とも対話できない。だから見た目はエルフに似ているけど、同じ種族にならないの。だけど、エルフを探知する事ができるから…」
「だから見つかったって訳か」
シルヴァの言葉にビクト-ルが付け足すように言葉を発する。それにキルスティも頷いて話を続けた。
「うん。ただ、エルフも無力じゃないから返り討ちに合いたくなかったみたいだねぇ。それで、回復魔法を使えるエルフとエリクサーが作れる薬師に呪いをかけたみたいだよ」
「やる事が小物だな」
「実際のヴァルデマーはそんな感じだもん」
「え、じゃあドラウ族って魔族じゃないの?」
イルナがキルスティに尋ねる。
「あ、うん。魔族だって主張してるけど、本来は妖精の亜人にあたるかなぁ」
なんという事だ。色々と情報量が多すぎる気がする。
するとその時、部屋をノックする音が響いた。それを聞いてビクト-ルが「忘れてたぜ」と呟き、入室を許可する。
「失礼しますよ、マスター」
「全く、いつまで待たせるんだよ」
「すまん、まだ話が終わってなくてな」
突然現れた冒険者らしき二人にイルナが戸惑っていると、ビクト-ルが苦笑しながら二人を紹介してくれた。
「イルナお嬢さん。この二人はこのエミール王国の冒険者だ。口も固いし信頼できる」
「は、はい…?」
「アンタ等の護衛につく。よろしくしてやってくれ」
そう言われて二人の冒険者がペコリとお辞儀をする。
「俺はボリス。よろしくね」
「俺はアルフだ」
「よろしくお願いします…」
二人ともすごい体格だ。細いように見えて筋肉がすごいのが服の上からも分かる。それだけでこの二人がいかに強いのか伺えた。
「この二人はSランクの冒険者だ。少々の事じゃあ殺られねぇから安心しな」
「Sランク…ですか…?」
「え、何、お嬢さん冒険者のランク知らないの?」
イルナが微妙な反応をしたせいか、ボリスと名乗った男が驚いて乗り出してきた。それを避けるようにイルナも仰け反る。
ボリスは赤毛で大きめの三白眼で、人懐っこい顔つきだ。年齢は聞いていないが、どう見ても十代にしか見えない。後で聞いてみたら21才だと言っていたので、年齢詐欺だと思ってしまったのは内緒だ。
そしてアルフは藍色の髪にグレーの瞳で、ちょっと陰がある美男子だ。そのアルフがボリスの体をぐいっと引っ張り、イルナから遠ざけた。
「冒険者ランクはFランクから始まってE、D、C、B、A、Sとランクが上がる。だからこの二人は最高ランクの冒険者ってわけだぜ、イルナお嬢さん」
ビクト-ルが丁寧に教えてくれたが、アルフがジトッとした目をしてビクト-ルを見る。
「よく言う。あんたはSSランクの冒険者だろ。最高ランクはまだある」
「そうなんですか…」
何だか未知の世界だ。とにかく聞いている限りこの場に居る三人はすごい人達のようだ。
「あ、そうだ。ビクト-ル、これパパから」
「おっ」
空間魔法でどこからかキルスティが木箱を取り出す。テーブルの上にゴトリと置くと、ビクト-ルが嬉々として蓋を開けた。
「おおっ!さすがはカジミールだぜ!薬師が眠ってるってぇのによくこれだけ用意できたな!」
「え、それってまさか…」
ボリスが驚愕の表情をすると、何故かビクト-ルが得意気な顔をした。
「おうよ、こいつぁ正真正銘のスプリームポーションだぜ。しかもエルフの長のお墨付きだ」
「何だって!」
それを聞いてアルフもちょっと興奮気味だ。さすがエルフだとか騒いでいると、シルヴァとランナルが顔を見合せ、キルスティに目配せをする。イルナはと言えば、自分が作ったとは言えずにちょっと居心地が悪そうだ。それを見たキルスティは、呆れたように騒ぐ三人に言い放った。
「それ作ったの、イルナだよ」
「「「え」」」
三人の動きがピタリと止まる。
そのまま復活するまで少なくとも一分はかかった。




