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休まず特訓してます


「できた…」



 一週間かかって、ようやくスプリームポーションが完成した。完成品をカジミールに見せると、満足したように頷いた。



「さすがですね、イルナ様。スプリームポーションは完璧です」

「良かった…!」

「さすがイルナだね!」



 安堵の溜め息をつくと、キルスティも一緒に喜んでくれる。そういう些細な事が嬉しくて、自然と笑顔が浮かんだ。そして、完成品のスプリームポーションを眺めながら、カジミールは笑顔でイルナにさらに課題を出す。



「ではこのスプリームポーションを100個作ってください」

「え」



 ようやく作れるようになったばかりのイルナに、恐ろしい要求を平然とするカジミールはさすがエルフの長…と思えばいいのか。それよりも100個とは、またすごい量だ。



「あの、そんなに沢山どうして必要なんですか?」



 嫌だという訳ではないが、単純に疑問に思ったのだ。何故ならエルフは人間より魔法が得意だ。ポーションなんかなくても回復くらい簡単にできる。そう思って尋ねると、カジミールは何て事はないかのように答えた。



「ただの練習用です。作ったポーションはイルナ様が持って帰ってくださっていいですよ」

「まあ」



 そうだったのか、とイルナは中途半端に納得した。エルフの村には様々なハーブや薬草が生えている。スプリームポーションを作るのに材料には全く困らなかった。だからなのか、特に制限される事もなくポーション制作に専念できた。



「スプリームポーションを100個作った後は、エリクサーの材料を集めてもらいますので、それまで魔法の練習もしておいてください」



 そう言われ、ひとまず工房から追い出された。言葉遣いは丁寧だが、カジミールはイルナの扱いが結構雑だ。けれどそれを不快に思う事もなく、今度はキルスティと一緒に近くの森へと移動した。



「イルナ、今日はどうする?」



 キルスティに尋ねられ、イルナが考え込む。ここ一週間、魔法の訓練とポーション作りを交互に練習し続けていたおかげで、魔力操作はかなり上達した。なので、イルナにすれば一歩進んだ訓練をしてみたい。それをキルスティに伝えると、彼女も笑顔で頷いた。



「それじゃあ『探索』の魔法を覚えようか」

「探索…?」

「うん。自分の魔力を操って、目的の物や場所を見つける魔法だよ」

「どうやるの?」



 全く見当もつかないイルナは、素直にキルスティに問いかける。



「じゃあ実践で教えてあげるね~。まずは魔力を自分の体に纏わせてみて」

「はい」



 集中して魔力を練りだし、自分の体に纏わせる。何となく体がほわっと暖かくなったような感覚に包まれた。



「うん、いい感じだね。じゃあその魔力を徐々に地面へと流して行く~」

「じ、地面へ?」

「そうそう。例えば頭から水を被って、その水がゆっくり地面へと流れていくような感じかなぁ」

「や、やってみる」



 目を閉じてさっきよりも集中する。体に纏わせた魔力を少しずつ地面へと流す。徐々に体から足元へ移動し、自分の足元に全て落とした。丁度水溜まりの真ん中に立つような感じで、魔力の真ん中に立っている。それを見ていたキルスティも満足そうに頷いていた。



「そうそう、上手だね!じゃあその魔力、地面を這うように周囲に広げていってくださ~い。イルナを中心として、少しずつ魔力量を増やしながら、周辺の地面を全部覆い尽くすようにね」

「ええ!?む、難しいな…」

「大丈夫大丈夫♪広がるイメージをしっかり持てばできるから」



 簡単に言ってくれるが、魔力の放出量が増えるのだ。これが結構難しい。



「今は全方向に魔力の波を伸ばしてるけど、探したい方向のみに向けてもいいんだよ」



 とりあえず練習だから全方向へと魔力を広げさせられてるようだ。イルナの周囲50メートル程を魔力で覆いきると、キルスティがそこで止める。



「はい、じゃあそこで流れを止めて。で、目を閉じて魔力がぶつかった物の形を読んでみて」

「えっと…まず右の方に…何だろ、何か動いているような…」

「形、わかる?」

「待って」



 魔力を練り、そこにいる何かを探る。徐々に形が浮かび上がり、動いているモノの正体が見えてきた。



「ウサギ…?」

「せいかーい!」

「やった!」



 正解と聞いて思わず嬉しくなる。そしてゆっくりだが周囲の地形や植物、動物等を当てていく。一通り読んだらキルスティが目を開けていいと言ったので、ようやく一息ついた。それと同時に張り巡らせていた魔力も霧散する。



「はぁー、疲れた…!」

「でもイルナ、さすがだね!私は探索魔法使えないから、一度でコツをつかむなんてスゴイよ」

「え、キルスティ使えないの?」

「うん」



 使い方を知ってるのに使えないのはどうしてだろうか。そんな疑問が頭を過ると、キルスティがお見通しとばかりに微笑んだ。



「私は攻撃魔法は得意だけど、サポート魔法は苦手なんだ。ヴェレス様にはもっと勉強しなさいって言われてるけど、こればかりは難しいんだよねぇ」

「そうなんだ…」



 意外だ。てっきりキルスティは何でもできるのだと思っていたからだ。だが、考えてみれば『増幅』や『成長』のような魔法はアウキシリアしか使えないと言っていたし、そうなると無属性魔法は基本あまり目立つような魔法の使い方はない。イルナも王立図書館であの本を見つけなければ、アウキシリアだなんて言われていなかっただろう。それをキルスティに言うと、何だか意味深に微笑まれる。



「そっかぁ、イルナは知らないんだね」

「え、何が?」



 知らないとかどういう事だろうか。イルナが首を傾げると、キルスティはついにクスクスと笑い出した。



「イルナが見つけたその本はねぇ、()()()()()()()()()()()()()()()なってたんだよ」


「え…」



 キルスティの言ってる内容が一瞬理解できず、目を瞬かせる。するとキルスティは驚くべき事をサラッと言った。



「あの本はねぇ、アウキシリアじゃないと見つけられないように魔法がかけられてるんだよ~。だから、見つけて読んだイルナは最初からアウキシリアの素質があったってことだねぇ」


「え…、えぇ!?」



 ここにきて衝撃の事実だった。





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