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妖《あやかし》しの守人  作者: 月夜乃 遊策
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プロローグ、その五

 じいちゃんの掛け声にも反応していない裂嘉ねいちゃんの様子に、守麗ねいさんが駆け寄り肩を抱く様にして道場の隅に下がって行った。

僕に負けたのが茫然自失になるほどそんなにショックだったのか!?とチョッと寂しい気もする、今までの十七年間の稽古は伊達じゃないと思うのだが・・・


 しかし、守麗ねいさんの回復力の高さには脅かされる、先ほどまでは、辛そうに胴丸の上からお腹に手を当てていた様だったけど、もう大丈夫の様だ。

 しかも、良くは確認出来なかったけど、先の組み手で開けた胴丸の穴が塞がっている様に見えて???

その事を確認しようかと思って声を掛けようとする直前、じいちゃんから


 「次に移る、槍か杖の用意を」


と促された。


 じいちゃんを見ると、既に槍を選んでいた。

僕は杖にする。


 槍と杖、先に穂先が付くか付かないだけのもの様に見られるかもしれないけれど本質的に全くの別物だ。

 

 槍は通常2から3メートル前後の長さでその先端に刃を付けた武器で、主に突き・払いが動きの基本になる。

また、その長さからうまれる遠心力やテコの原理を使い叩きつぶす事も可能の凶悪な戦専用の殺傷を目的にした武器だ。

 それに対し杖は1から1,5メートル程の棒状の武器で、武器そのものは大した殺傷要素は無い、振り回した所で刀より多少長い程度では大した威力は出ないが、杖術ならではの体捌きによって非常に優秀な武器に変化する。

 昔、高名な剣豪も杖術使いと立ち合う際には負けを覚悟して立ち合ったと言う逸話があるそうだ。

防御に非常に優れ、相手を傷つける事無く組みふせる事が出来きる、使い勝手良い武具として僕は気に入っている。


 じいちゃんが手にしたのは、俗に半槍と呼ばれる1,8メートル程の短めの馬上で良く使われる槍だった、屋内で使用する事を考慮しての選択だろう。

 じいちゃんの使用する半槍は芯に鉄柱を入れた物で、穂先には布が巻きつけてあったがまともに突かれてば死を覚悟しなければならない代物だ。


 対して僕は少し短め1,2メートル程の杖を手に道場中央へ歩み寄った。

 

 中央でじいちゃんは腰溜めに半槍を構え、僕は杖の端と中央部分を持ち下段に構えた。


 お互いゆっくり息を吐き、目を合わせた瞬間、半槍による突きから組み手が始まった。


 じいちゃんの突きは単発では終わらず、顔面そして胴へと二連、三連と続くのを体捌きで顔面・胴とかわし次に向かって来る突きを杖を上へ撥ね上げる様に叩き上げていなし、そのまま杖を喉元へ突き入れる。

が、じいちゃんは瞬間早く一歩引き、そのまま半槍の間合いまで下げられてしまった。

 やはり、じいちゃんは一筋縄ではいかないと改めて思い知る。


 杖は始動が防御から始まる事が多い、それは剣術では「後の先」と呼ばれる動き所謂カウンターになるが、この場合、相手は攻撃をする動きの最中に反撃が迫って来る事になるから非常に避け難くなる。

ある意味では剣術の極意とも言われてしまう物だが、杖ではその動きが当たり前になっている。

 しかし、槍の場合は攻撃される前に攻撃を行う、言わば「先の先」を動きの基本とする、それだけに「後の先」を取られると不利になるのが通常なのだ。

 

 でも、じいちゃんはそれを苦にしなかった、それだけでじいちゃんの技量の高さが分かると言うもの…僕の師匠なんだから当たり前なんだけど…チョッと悔しい。


 さて、ここは至難のしどころだ、このまま「後の先」を狙ってもじいちゃんにとっては読みの内になるだろう、それではいずれ半槍の先制攻撃を避し切れず負けてしまう恐れが強い、審査なんだから勝ち負けでは無いんだろうけど、それじゃぁ面白くない!


 ここは敢えて此方が先手を取りその先の動きに賭ける方が面白い、とニンマリし杖を槍の様に腰溜めに構え、一足飛びに突き入れる。


 じいちゃんも動きを呼んでいたのか、杖の先端に半槍の穂先を合わせ動きを停めに来た。

この動きに合わせ僕は杖と半槍の合力のベクトルを上にずらし、そのまま上に撥ね上げる。

すると、じいちゃんはその動きのまま半槍の手元(石づき)を僕の顎へ向けてかち挙げる。

そのかち挙げを、右足を軸に回転しながら避けると同時に杖を脇腹へと打ちこんだ。


 その姿勢で両者は制止し、お互いゆっくりと息を吐く。


 じいちゃんは嬉しそうにでもチョッと悔しそうに、


 「まいった!」


と一言だけ言った。


 それを見た守麗ねいさん、裂嘉ねいちゃんも満足したように軽く頷き合い、満面の笑みで僕に駆け寄り背中と胸をスッパーンとはたいた、その音は気持ち良く道場内に木霊しその音と共に免状審査は終わりを迎えた。


 

 試技が終わり、破れた道着を変えるついでに組み手での緊張と興奮で噴き出した汗を風呂で洗い流し着替え用と道着を見ると、そこには真新しい墨色の旅袴と絵柄の入ったベージュ色の小袖が用意してあり、仕方なく着て道場に戻ると、上座が空けられ上座の方を向いて三人が座っていた。


 三人の横に座ろうとするといきなり


 「龍鬼様、上座にお座り下さい」


と畏まった言い方で促されてしまった。

 僕は訳も分からず、戸惑っていると


 「訳はこれからゆっくりとお話し致します、まずは御座り下さい」


と反論を許さぬ口調で告げられてしまい、仕方なく上座に座る事になってしまった。

 僕が上座に座ると、三人はそれが当たり前かの様に深々と頭を下げ、伏したままじいちゃんが

 

 「龍鬼様、突然の事に驚いておられるやもしれませぬが、まずは私しの話しをお聞きください。


と語りだした。

 


 



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