鬼虎の災い、帰還
男達が散りじりになって、逃げて行くのを僕等は眺めていたが若い飛雲虎は僕等に一瞥すると後を追って行った。
残されたのは、鬼乃部の娘たちと飛雲虎の武早だけとなる。
両の手で口元を押さえていた弥生が僕を真っ直ぐに見据えいきなり僕に
「その戦鎧を何処から持って来たのですか?その鎧は鬼族に伝わる古の失われた鬼皇の鎧に似ています。人間がその様な鎧を着けているなど聞いた事がありません?その鎧、一体どうやって手に入れたのですか?」
と詰問されてしまった。
僕が返答に困っていると、武早が
「鬼乃部の里の娘よ、語気を荒げて詰問する前にそなた達は言うべき言葉があるのではないか?」
と言うのだが、弥生には吠え声にしか聞こえなかった様でその声に怯え先程までの威勢は霧散し、里の娘達の元へ駆け戻り体を寄せ合ってしまった。
武早も困った様に僕の方を見て、溜息を吐く。
その様子に、裂嘉をみると仕方ないと言った様に息を一つつき、自らの気を練り上げ弥生達の体を覆う様に結界を張った。
武早が「何をしているのですか?」と問うと、裂嘉は弥生達の方を目配せするのでそちらを見ると弥生が
「白虎が喋ったぁ!!」と目を丸くして腰を抜かさんばかりに驚いていた。
弥生達が落ち着く間に僕達は手分けして気絶している、誘拐犯の男達を縛り上げ周囲の木々に縛り付ける。
全員縛り上げる頃には、弥生達も話しが出来るくらいには落ちついた。
そこで導師に成り済ましていた猫人族の女と頭目然としていた大男を武早の背に載せ鬼乃部の里へと向かいながら、事の顛末を話す事にした。
一昨日、里の外から吠え声が聞こえた折、武早に会い話しを聞いた事。
剛弥殿の話しと武早の話しを比べた時、導師の言う事を怪しく思い、一端里を離れた振りをして弥生達の後を着けることにした事。
導師の連れの不審な動きや彼らの宿営地の事、洞窟近くで見かけた多くの獣の骨やまるで護送車の様な荷馬車から里が導師達一味に騙されているのではと疑念を深め、その後男達の元に連れて行かれたのを見守っていた事。
運よく武早達飛雲虎が駆けつけてくれたので、この一件を里と山の者たちに任せようと思ったものの、炎や雷などで危機に落ちないかと心配になり助けに入った事などを話した。
武早は苦笑しながら、ありがとうございました。と言いつつ
「我ら飛雲虎は風を操り雲に乗る、言わば霊獣の一族。
本来ならば体の周りに風を纏いあの様な人間如きの魔術程度で傷つく事は無いのですが、今回鬼乃部の娘が近くに居た為に風を纏う事が出来ず、風を用いた霊力が使えなかったのです。
それが無ければこの様な無様な醜態を晒す事はなかったのですが・・・」
と、一言付け加えていた。
弥生も感謝をしつつ、先ほどの問を答えてと迫ってくるのでどうしたものかと守麗の方を見ると
「まずは里に帰って、今回の顛末を剛弥殿に話してからにいたしましょう」
と答えを保留にした。
麓まで下ると、山麓から若い飛雲虎が空を駆けて来て
「親父殿、逃げた男共は全て山より叩きだした。親父殿は如何するのだ?」
「旋嵐、わしはこの方々と共に鬼乃部の里に赴き、今後の事について話して来る、戻って来るまで木々に縛り上げてある男達を見張っていておれ!」
と言い置き、共に里へ向った。
ちょっと短いですが、更新します。




