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妖《あやかし》しの守人  作者: 月夜乃 遊策
13/24

鬼乃部の里

 いきなり鬼の集団に囲まれてしまった僕達・・・!


 集団の後ろから、「私の従者を縛り上げるなんて、なんて酷い事を、即刻、我が従者を開放しなさい!」


 と女性の黄色い声が飛んで来る。


 その、声と共に集団に隙間ができ後方から、足元まである白いフード付きマントを着た人物が歩み進んで来た。

 大きなマントのせいで、体系から性別は判断できないが、声から女性かなぁ?と見ていると


 「何をしている、先ほどの言葉が分からなかったのですか?さっさとその者達を開放しろと言っているのです!」


と、僕が背負っている男達を指さして怒声を浴びせかけてくる。


 すると、僕が困ると思ったのか、僕達の影から弥生ちゃんが進み出て


 「この者達は、私の沐浴の邪魔をしただけでなく純潔を奪おうとした醜悪な者達、前に居られる御三人は私の危機に駆けつけ命を御救い下さった皆様です。

その様な、高圧的な物言いはお止め下さい。」


と、森での様子と全く違った毅然とした態度を示し、僕は思わず感嘆してしまった。


 弥生ちゃんの言葉にフードの人物はたじろぎ、何かゴニョゴニョと呟いている。

それとは別に集団の中から、小柄な少年鬼が「弥生!」と進み出た。


 「お父様!」と言う弥生ちゃんの言葉に驚く、どう見ても若く「お兄様」ならまだしも「お父様」には見えなかった。

後で聞いたのだが、鬼族は力の高位の者は年をとっても自分が一番力の発揮出来る年齢で肉体の老化を止める事が出来るらしい。(これは僕についても言える事だった様で、僕の容姿も二十歳からいつまで経っても変わらなかった、何歳になっても若いままで貫録がなくて今後色んな苦労をする事になるのだが・・・)


 弥生ちゃんと「お父様」は一言二言交わすと僕らの方を向いて深々と頭を下げ

 

 「娘を危難から救って下さり、誠にありがとうございます。申し遅れました、私しはこの里を纏めております

鬼乃部おにのべ 剛弥たけや』と申します。

只今、取り込んでおりまして大したおもてなしも出来ませんが、今晩は是非とも我が屋敷にてお休み下さい。」


 と丁寧な挨拶を受けた、僕は慌てて


 「ご丁寧にありがとうございます、僕は皇 龍輝、隣は守麗・烈嘉。

僕達はたまたま居合わせただけで結果的に弥生ちゃんを助ける事となりましたが、それはその場に居れば誰でもする事ですからそんなにお気になさらずに。

それに、何か仔細が御有りのご様子、他所者が里に居てはご迷惑になりましょう。お気使いなく。」


と、その場を去ろうとする僕の袖を弥生ちゃんが素早く掴み、


 「そう言う訳には参りません、今日は里にお留まりいただきご出立は明日以降でも良いのでは、それとも何か急ぎの御用でもおありでしょうか?」


と、掴んだ袖を放そうとしない。


 困って、隣の守麗達を見ると「やれやれ」と言った顔で僕を見て


 「ここまで言われて、袖を振るのも失礼になります。今日は此方にご厄介になり明日出立しましょう。」


と話しが決まってしまった。


 その一部始終を見て鬼族の集団からも張りつめていた緊張が解け、隣同士で何事か談笑している様だったが


 「しばしお待ちを!」


と言う言葉に、再び沈黙が訪れた。


 フードの人物からの言葉だった、続けて


 「今の里の現状を理解されているのですか?御客人を里に入れて応対をしている時ではないでしょう。

しかも、氏素性の分からない怪しげな者達を里に入れるなど騒動の種にしかなりません。

丁度、何処かに向われる途中とか、このままその目的の地へ向っていただく方が良いのではありませんか!」


と里長の剛弥殿にくってかかった。


 

 だが、剛弥殿は平然と


 「導師殿はこの里の「律」を知らないのでしかたありませぬが、恩人の方々を里に入れぬとなれば娘・弥生も共に里には入れませぬ、それでは導師殿も都合が悪いのではございませぬか?」


 「されど・・・」と続けようとする導師とやらに


 「しかも、こたびの件は導師殿の従者がそもそもの発端、導師殿の監督不行き届きは疑いようもありませねぞ!

されど、これからの事に対して導師殿は無くてはならぬと思えばこそ、そこまでの責めは問う事は致しませぬ。が、差し出がましい申し出はお辞めいただきたい!」


と言い放ち、僕らを里へと招き入れた。


 フードの人物の横を通った時、僕の耳にはフードの中から「ギリリィィ」と歯軋りのする音が届いた・・・。


  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 私は外から来た三人の招かれざる客が里長の邸宅に入るのを見届けると、自らに割り振られた小屋へ帰り事のあらましを御主人様に伝えなければならなかった。


 捕えられた者達の処遇は、後日、里の者が決めるらしいから明日の計画の決行と共に救い出せばいい、だがあの四人の者と一緒に行ったご主人様の弟様の姿が見えない事が不安な気持ちにさせる。


 案の定、お話しをお聞きになったご主人様は腹を立てられ私を蹴り飛ばし、踏みつけた。これもあの邪魔な三人が鬼族の娘など助けて連れ帰るからだ!忌々しい!


 何故あの鬼娘は助けられ、私はこうやって嬲られ蔑められなければならないんだ!私だって・・・。


  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 鬼乃部の里は、周りに湖までつながる川の水を周囲に迂回させ堀状にしその内側に木の柱を並べた壁で囲い、木造作りの家屋が四・五〇軒ほど立ち並び、小さな城郭を思わせる作りになっていた。

 

 里長の屋敷は、里の一番奥にあり他の家より気持ち大きいかな?という程度の差しかないごく普通の家屋だった。

 中に入ると、寄り合いの出来る様な広間があり、その奥に居住スペースがあるらしい。

居住スペースと言っても、親・子の部屋と台所兼食堂それに空き部屋が一つある程度だ。


 里長と言っても立場を離れれば里の一人特別な居住空間を持つなどと言った特権を持つべきではない、と言うのが剛弥殿の考えらしく、清廉・清貧の暮らしぶりに好感を持てた。


 その夜は、温かい鍋を囲んで酒を酌み交わす事になった、鬼族では酒を飲む事は祝いの席や今生の別れの席など改まった場でしか飲まれないらしい、それだけ僕達を歓待してくれている証しだろう。


 剛弥殿は

 「本来ならが、里の主だった者達も呼ぶ所ではあるが、今夜はそれぞれの家の都合もあり我が家族だけでの宴となって申し訳ない」


と頭を下げられてしまう。


 僕達にとっては思いもかけず、久しぶりの屋内での食事に感謝こそすれ頭を下げられるいわれは無く恐縮してしまい困っていると、弥生ちゃんと御母さんが


 「そんなに堅苦しく話されては龍輝様が困っているではありませんか」


と助け舟を出してくれた。


 剛弥殿の家族は、剛弥殿・奥方の唯与いよさん・娘の弥生ちゃんの三人と今は外に出かけている兄の剛与たけよさんの四人暮らしだそうだ。

お酒を飲みながら鍋をつつく、穏やかな食卓に僕ら三人も和んで来る。


 食事も一通り終わり、唯与さんが酒の肴を持ちに立つと剛弥殿は改めて座りなおし僕を見つめ深々と頭を下げた。

 僕は驚き


 「一体どうしたのですか?頭をお上げください」


と、声をかける。


 剛弥殿は、頭を下げたまま


 「龍輝殿に謝らなければならない事がございます。」


 「娘・弥生を私共の里にお返しください。」


と突然、頭を傾げたくなる事を言い始める。剛弥殿は続けて


 「本来、里の「律」により弥生の命を救っていただいた龍輝殿の為に弥生は龍輝殿に付き従い、龍輝殿と共にこれから生きて行かなくてはなりません。

されど、今、里は危機に瀕しており弥生はその危機を回避するため行動しなくてはならないのです。

勝手なお願いではありますが、弥生を里の為にお返しください。」


 と、言われてしまった。僕としては弥生ちゃんを安全に親御さんの居る里に返す為につれて来たのだから返すのに異論無いのだが、剛弥殿の言い回しに違和感を感じ


 「ただ返せと言われるのでは、訳が分かりません。いったい「危機」とは何ですか?鬼乃部の里で何が起きているのですか?」


と問い返した。


 剛弥殿は頭を上げ、しばし沈黙するも目を伏せ気味にし話し始めた。



お気に入りへ登録が少しずつ増え嬉しい限り、ありがとうございます。

なかなかに物語の進行が遅々として進まず、申し訳ありません。

懲りずにお付き合いいただければ幸いです。

お気づきの点がありましたら、感想などよろしくお願いいたします。


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