表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖《あやかし》しの守人  作者: 月夜乃 遊策
12/24

鬼族の娘、その弐

 朝、目を覚ますと僕の懐で寝ていたはずの鬼族の少女の姿はなく、周りを確認すると守麗・裂嘉の姿も消えていた。

昨夜の男達の仲間が夜陰に紛れて三人を攫ったのか?と不安になったが、男達は昨夜と同じ姿で近くの木に縛り付けており特に変わった様子は無かった。


 少し安堵をするものの、三人の行方を探そうと立ちあがると守麗が昨日まで居た野営地から荷物を運んで来たらしく僕ら三人分の荷物を背負って僕の前に飛び降りて来て


 「おはよう、いつまでも寝てると弥生やよいちゃんに笑われるぞぉ」


と、笑いながら挨拶をして来た。


 「弥生ちゃんって」と聞こうとすると、今度は湖の方から大きな魚と野草を摘んで裂嘉と鬼族の少女がなんだか楽しそうに談笑しながら歩いて戻って来るのが目に入った。


 鬼族の少女は、僕が起きているのを見つけると小走りに駆け寄り


 「今、美味しそうな鱒を捕ってきましたから朝食にしますね、もうちょっと待って下さい♪」


と、僕が何も言わない内に(なんとなく言わせない様にしてる気もする)挨拶もそこそこに裂嘉と朝食の準備を始めてしまった・・・


 僕はなんだか居心地が悪くなり、助けを求める様に守麗を見ると


 「まぁ良いからやらせてあげときなさい、貴方はご飯の前に昨夜倒した大男がそのままになっているからそれをきちんと始末してらっしゃい。」


と昨夜の後始末を仰せつかっってしまった。


 自分のした事だから誰かに後始末をさせる訳にも行かず、渋々昨夜の戦いの場に赴く


 昨夜は暗くて余り良く見えなかったが、その場所は湖の湖岸と言うより人為的に切り開いて湖に辿りつけられる様に広場作られ、そのほぼ真ん中に大男が大の時に倒れていた。


 男の周りには、貫かれた喉から流れ出た血が染み込んで地面がわずかに変色し、天を眺める様に目は見開かれたままだった。


 広場の端に大きな穴を掘り(素手なのだが、まるで砂場をスコップを使って掘る様に楽に掘れてしまう)男を運び埋葬し墓石代わりに男が使っていた手斧を地面に差した。


 手を合わせて冥福を祈ろうかとも思ったが、殺した相手が冥福を祈るのは何か違う気がして黙礼をしてその場を去る事にした。


 三人の元に戻ると、朝食の準備が整っている様で裂嘉に


 「湖で体を洗って来て、そしたら朝食にしよう♪」


と湖の方へと追いやられてしまった、仕方なく湖に飛び込み朝の眠気と先程までの後始末のモヤモヤを洗い流し、サッパリとした気分で朝食にありついた。


 今朝は、鱒の香草焼きと山芋の焼き芋で、山芋のホックリ感がなかなか美味しい。

もちろん鱒も脂がのっていて香草の風味が秀逸だった。


 食事が終わり、のんびり食後のお茶を飲んでいると鬼族の少女がスッと立ちあがり深々と頭を下げながら


 「昨夜は危ない所を助けていただきありがとうございました。このご恩は私の身を奉げ命を差し上げる事でお返しいたします」


 と、とんでもない事を言い出す、余りの事にオロオロとするしかなく守麗・裂嘉の方を見ると二人も驚きつつ裂嘉は少女を睨みつけ、守麗は平静を保とうとしているものの額に青筋が浮かんでいた。


 僕ら三人が驚(怒り)いているのを見て、少女は


 「いきなりの申し出に当惑されていると思います、しかし、私達一族の「律」なのです」


 「物を恵んでもらったら、同じ様に物を与え、命を救われたらその命は救いの手を差し伸べた者の為に使う」


 「逆に、我慾で命を奪った者はその命で罪を償わなければならない、と言うのが私達一族「鬼乃部おにのべ」の「律」なのです」


 と、息を吸う事も忘れたかのように立て続けに喋り、喋り終えると全てをやり終えた様な顔で僕らをジッと見ていた。


 僕としては、まだ名前も本人から聞いていないのに、怒涛の宣言で一瞬呆けるも気を入れなおし改めて


 「あのぉ、まだ名前、聞いてなかったんだけどぉ」


と言うと少女は目を大きく見開き顔を真っ赤にして、


 「失礼しましたぁ、私は鬼乃部おにのべ 弥生やよいと申します。昨夜はありがとうございました」


と、やっと名前を聞く事が出来た、朝、守麗が言っていた弥生ちゃんと言うのはやはりこの少女の名前だったのだと確認し

 

 「弥生さん…ちゃんで良いかな、どうして昨夜はあんな所に一人で居たんだい?しかも、水浴びをしていた様だけど、この森には獣もいるだろ、あの男達が現れなくても危ないだろう?」


 と、聞くと急に俯きながらポツポツと話しを始めた。


 弥生ちゃんが住む「鬼乃部の里」は湖の森から少し離れた山の麓にあるそうだ、里にとってこの湖は食料を与ええくれるだけでなく、神聖な場所であり、里に問題が発生した時や個人的な問題が起きた時などこの湖に来て沐浴をし早く問題が解決する様に祈りを奉げる場所にになっているらしい。


 今回、弥生ちゃんは里で起きた問題が早く解決される様に、沐浴をしに来たらしいのだが数日前から里にやって来て里の女の子にちょっかいを出していた男達に跡をつけられ、今回の仕儀になってしまったと言う事だった。


 その里で起きた問題とやらを聞こうとしても、弥生ちゃんは「これ以上皆さんにご迷惑をかける訳にはいかない」と話してくれなかった。

が、相当な事が起きているらしく、その事を思い出したのか顔色が青くなり、声も小さくなって遂には黙ってしまった。


 兎に角、弥生ちゃんの里に行き、不届き者の男達を引き渡し、弥生ちゃんの家族を安心させる事が先決!と「鬼乃部の里」に向う事にした。



 鬼乃部の里は湖から弥生ちゃんの足で丸一日かかる所にあると言う事で、朝食の片付けを終わらせると直ぐに、守麗に荷物を持ってもらい、男達は周りの森から蔦を取ってきて数本を縒り合せて綱を作り、一纏めに縛り上げて僕が背負った、裂嘉に弥生ちゃんの補佐をしてもらいながら、小走りに森の中を駆け抜ける事にした。


 途中、アケビや柑橘系の木の実・雉に似た鳥を捕ってお昼を済ませ、日が傾く頃には里に近づく事が出来た。


 里に近づくと、入口らしき門の周辺に何やら多くの人が出ていた。


 良く見ると、手には六角棒や槍・剣といった武器を持ち、体には皮鎧を着けた屈強な男の鬼達がこれから戦いにでも出るかの様な物々しい雰囲気だった。


 その雰囲気に、ビクつきながら里に近づくと僕らを見つけた一人の鬼が僕らの方を指さしながら大声で叫んだ。


 その声に、門の前で集まっていた武装姿の鬼達が一斉に僕らの方を見て、次の瞬間一斉にこちらへ向って来る。

鬼達が地響きを立てて駆けてくる勢いに圧倒されて、僕らあっと言う間に武装姿の鬼達に取り囲まれてしまった。

 

  


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ