第五章 第一幕 ~Bランク聖騎士カナタ誕生!~ その1
第五章 ~異世界ライブRPGにようこそ!~
第一幕 ~Bランク聖騎士カナタ誕生!~
彼方は、突如目の前に現れた〝ギルドハウス〟に困惑します。
「え……? さっきまで、無かったような」
トワは何でもない顔をしています。
「されど、あるのじゃ」
「あるけど……それで良いのかな」
「この世とは、そのようなものじゃな。あるがままに受け入れる他ないのじゃ」
「それもそうだけど……そもそも〝ギルド〟って?」
「それについては、水蓮兄ぃに訊ねるのじゃな」
「はぁい」
もはや慣れたもので、とことこと跳ねるように数歩移動して、水蓮に訊いてみます。
「あの……〝ギルド〟って、何でしょうか?」
「語源は『ゴールド』と同じだよ。つまり、基本はお金を扱うところだな。概念としては同じ技術を持つ者同士が連盟する組合ってところだ」
「組合って、農協とか漁協みたいな?」
「そうだよ。あれも同業者同士の助け合い、資金援助と融資、技術開発と継承など、ギルドそのままだ」
「冒険者って、ひとくくりにできるものなのでしょうか? 魔法使いと戦士なんて、技術も何もばらばらな気が……」
「それはそうだろうな。モデルとなった中世の同業者組合は銀細工ギルドと金細工ギルドみたいに、もっと細分化されていた。ゲームに登場する冒険者ギルドとは、近代の同じ趣味を持つ者同士の親睦団体の性格が反映されているのだろうな。なので、より古い時代の『RPG』だと『盗賊ギルド』などのようにクラスごとに別々に存在していたけど、今はまとめるのが主流だよ。本来のギルドは職人が製造する製品の品質と価格を保証することが目的だから親方衆のみが所属する組織だったので、誰でも加入できる冒険者ギルドとは全くの別物と考えてよい。わかりにくかったら、ゲームのメニューないしチュートリアルを実体化したもの、と解釈すればよいかな」
「あの……でしたらギルドって、つまり何をするものなのでしょう?」
彼方は、頷きながらも核心について直接的に訊ねます。
「キャラクターメイキングだよ。『RPG』はキャラになり切るゲームなので、まずはキャラクターをつくるのさ。ステータス表の一番上からひとつずつ埋めてゆくと、自動的に完成するので簡単だよ。既にクラスとランクとが決まっているので、あとは自分の好みで能力値とスキル、それに装備を選べばよい」
さらなる新しい概念の登場に、そちらも気になります。
「能力値って何でしょうか?」
「そのキャラの基本的な特徴を数値化したものだよ。ちからが強いとか、感覚が研ぎ澄まされている、とかだな。もちろん数値が大きいほどより色々なことができる。ちなみに数値がインフレ気味のゲームに慣れていると本来の『RPG』の能力値がやたらとつつましいことにおどろくかもしれないけど、手作業で計算する前提なのでこうなるな」
「あ、計算しやすいのは助かります。暗算とか自信が無いので」
「まあ、『RPG』の計算は、ほぼ足し算のみなので簡単だよ」
「それも助かります」
彼方はほっとして続けます。
「あと、重ね重ねすみませんが、スキルって何でしょうか?」
「何ができるかを具体化したものだよ。ヒーローごっこだったら『ビームを撃つ』とか『飛ぶ』とかを宣言するだけでキャラに合ってさえいれば何でもできるけど、『RPG』の場合、前もってそれらは『スキル』として所持していることを明示化している必要がある。しかもそれぞれについて、どの程度まで可能かを表す数値、『レベル』が設定されている」
「癒しの魔法を使うには『癒しの魔法スキル』を持っていなくては無理ってことでしょうか?それが〝レベル1〟だと控えめで、〝レベル5〟だと強力で、とか?」
「その通りだよ。パラディンの場合『光属性の魔法スキル』と『戦士スキル』の両方が選択可能となるので、とりあえず気になるものを選んでみて、あとは必要に応じてだな。装備とは武器とか防具のことで、こちらは見た目重視にせよ性能特化にせよ完全に個人の趣味で良い。まあクラスごとにおすすめもあるので、それでも良いし」
「わ、わかりました……きゃあ!?」
水蓮の話を聞きながら頷いていた彼方の後ろから灰神楽が急にぶら下がったので、変な声を上げます。
「彼方お姉さま! 早くゆくのです!」「デス!」
「あ、はい。いっしょにゆきましょう……」
そうして「ごゆっくり」と、ハンスに会釈されつつその横を通ってギルドに入った途端、彼方は自分がひとりになっていることに気付きました。
「あ、あれれ? 灰神楽さんたち……どこ?」
よく見ると先に入っているはずの銀月も黒夜叉も見えません。
誰もいない、通路と小部屋のみの内部構造でした。
「キャラって自分のことだから自分ひとりで決めるとか? ひゃあ……厳しいなあ」
とにかく、ひとつの部屋の扉を開けてみました。
「失礼します。あの……キャラクターメイキングを……」
すると、機械音声めいた声が流れます。
『キャラクターメイキングを開始します』
『フェイズ1。名称を決めてください』
「え? あの……そのまま『カナタ』で……」
『名称登録――カナタ』
『フェイズ2。クラスを決めてください』
「パラディンって、できますか?」
『クラス登録――パラディン』
『フェイズ3。ランクを決めてください』
「これは決めてきました。Bランクでお願いします」
『ランク登録――Bランク』
『フェイズ4。能力値を決めてください』
「能力値……って、わ……『筋力』『知力』『感覚』『抵抗』『体力』『精神』ってたくさんあるけどどうしよう……」
『能力値ポイント30点を各ステータスに割り振ります』
「あ、よかった。事細かに教えてもらえるのは助かります。このお助け機能がチュートリアルってことかな? えっと、どれが重要なのかよくわからないので均等にしてください」
『能力値登録――【筋力】5【知力】5【感覚】5【抵抗】5【体力】5【精神】5』
『フェイズ5。HPとMPを決定します』
「あれ?これは決めないの?けど、えいち・ぴー? え、困る。聞いてなかった。何のことだろ。えっと……『HP』って何ですか?」
『解説――HP:HPとは体力の変動を可視化した数値。攻撃を受けることなどによって一時的に減少しHPがゼロになると活動が停止する。HPは能力値の【体力】に由来する』
「パラディンには必要そうだな。あれ? えむ・ぴーってHPと似ていますけど、こちらは何ですか?」
『解説――MP:MPとは精神力の変動を可視化した数値。スキルの使用によって一時的に減少しMPがゼロになるとスキルの使用が不可能になる。MPは能力値の【精神】に由来する』
「あ、さっきの能力値で決まるのでそのままでよいか許可を求められているのかな? えっと、どうぞ」
『HP登録――HP:50』
『MP登録――MP:50』
「HPが【体力】、MPが【精神】のそれぞれ十倍ってことみたい。それで決定してください。ありがとうございました」
『フェイズ6。SPを決定します』
『SP登録――SP:3』
「あれ? 自動的にもうひとつ決まったみたいだけど、これって何だろ? でも、ひとつずつたしかめているといつまで経っても完成しないので、あとでまとめて水蓮さんにお伺いしましょう……」




