スクラップ&ビルド
「半導がああなるのは——お前の前だけだよ」
答えは単純だった。しかし大変だ。
アプリでマッチした相手に、次々と「カノジョという役職」を要求して、夏までに私の彼氏くんで鮨詰めになったプールとか幸福度も乗車率も満点の通勤電車を目指しているとかなら俺はたまたま流されただけで、特別なんかじゃないのでまだ良かった。
しかしそうではない。こんな展開は予想の遥か外だった。
……そのとき、ふと4月の記憶が蘇った。
――新入生歓迎の焼肉パーティー。
そう、入学28日でみことが開いたやつだ。当時はみことの左右におれと野口という席順だった。ただし野口の奴は「まだ中二病の奴にはつきあえない」とか言って男子トイレに消え、逃げ遅れたおれだけがイベントの企画に駆り出されたわけだ。
バグった距離感で強行したイベントは成立した。しかし、継続的な関係には至らなかった。それどころか正気に戻ったクラスメイト達からみことは「距離感にバグがある」と判断され、日常面でもフェードアウトされて今に至っている。
それが、みこととの馴れ初めだったのだろう。
アプリでマッチしたのはその少しあと。
みことはあのときから、おれのことを「長期ホールドしたい相手」として見ていたのだろうか?
それとも、ただのクラスメイトとして接していただけなのに、おれがスマホをいじっている姿を見て「この人なら大丈夫かも」と勝手に距離を詰め始めたのだろうか?




