波紋 いや 破門
みことへ
話したいことがある。俺の家に来てほしい
【記谷秀石】
初めてアプリのメッセージ機能を使った
了解です、秀石くんの家の前で待っています。
【半導みこと】
戦いの火蓋は切って落とされた。
部屋に入ったみことは、きょろきょろするでもなく、ただ静かに立っていた。
わりと駅から離れた一軒家である
こうして見るとみことの家と徒歩圏内だと気づいた。ただし、小中学校の学区が異なるために高校まで巡り合うことはなく、しかもその巡り合いは出会い系アプリの力であった。
おれの部屋は意外とみことの部屋と変わらない。高校生の部屋には意外と男女格差は少ない。ベッドの皺が視認できることは普段から住んでいる
違いといえば小さな電子レンジ+電気ケトル+ミニ冷蔵庫。使い方を間違えたら持ち主デブまっしぐらの三種の神器が揃っていることくらいか。
「適当に座って」
そう言うと、彼女は「失礼します」と小さく言って、ベッドの端に腰を下ろす。床に座ると思っていたのに。少し距離を感じた。
「……なんもないけど」
「いえ。落ち着きます」
間が空く。
要件はある。ただ、いきなり言い出すのはアレだし、それまで何を話すべきかが分からない。
クラスで話すのとも、メッセージのやり取りとも違う。
「……こういうの、慣れてる?」
なんとなく聞く。
みことは少しだけ首を傾げた。
「こういうの、とは?」
「その……人の家に来るの」
「いいえ」
間を置かず、そう答える。
「ほとんどありません」
そう言ってから、少しだけこちらを見る。
「でも、秀石くんの家なら、大丈夫だと思いました」
そういえば、いつのまにかおれの家の場所を知っていたな!?
「……なんで?」
聞くつもりはなかったのに、口から出ていた。
みことは少しだけ考えてから、
「信用できるので」
それ以上は、何も付け足さない。
——信用できる。
どうしてか、少しだけ引っかかった
おれは深呼吸してから、切り出した。
「友達からやり直したい」
俺、この前カノジョって言われて、ただ流されるままOKしちゃった。
本当は自分の気持ちに向き合えてなくて……ただ役職をもらっただけみたいになっていた。
だから、一度友達からやり直したい。
みことは少し驚いた顔をした。
眼鏡の奥の瞳が、一瞬だけ大きく見開かれた。
みことは膝の上で小さく手を握っていた。
「友達から……もう一度、ですね」
「うん」
おれは頷きながら、胸の奥でいろんな思いが渦巻いているのを感じていた。
ディオニュソスのテイクアウトスイーツ
「さっきまでイチゴだったものがあたり一面に散らばるアイスパフェ」
二つ、冷蔵庫から取り出した
みことはベッドの上で横倒しのままうごかなくなっている
いい子だと思う。ちゃんとした人で、信用できる人だと思う。
こうやって、自分の家にあげてもいいと思うくらいには、信頼している。
でも、今はまだ「彼女」という役職じゃなくて、ただのクラスメイトとして、ちゃんと向き合いたい。
それが、おれらのさえない青春の、小さなリスタートだった。




