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Act.nine  作者: 夜空


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19/20

#17 「九世界の戦い」

※2026/04/29 後書きの誤字を修正


 ついに始まった月末恒例勝ち抜き戦。初日である個人の部では様々な激闘が繰り広げられ、その結果は驚きと興奮の渦を巻き起こした


 特に陽咲焔と狼屋直桜による決勝戦は他の試合と比較にならない程の盛り上がりを見せ、未だ進化し続ける焔に誰もが驚かされた。


 それは紅坂茜も同じだった。越えるべき壁として意識していたはずの相手は、自分の想像よりも遥かに高い壁だったと思い知らされた茜。


 あのままでは届かなかったかもしれない。このままでは届かないかもしれない。越えるためには、少なくともあのレベルに並ばないといけない。


 この一日で、改めて学年一位である陽咲焔の強さを認識させられた。そんな希望や絶望を見せられた一日も授賞式などを経て、遂に終わりを迎えた。


 翌日、未だ熱がまだ冷めやらぬ少女たちは再び各会場へ足を運ぶ。次はどんなことが起こるのか。その期待が集まる中、次の戦いである団体の部が始まろうとしていた。






「……で、どうしてまだ整備が終わっていないのかという話でしたよね。……あのですね、一週間前に急に言われてむしろ進んでいるほうだと思いますよ!?」


「そうだ菜七、よく言った。ってことで、私はちょっと働き疲れたから休憩を……」


「いや、芹先輩はもう少し頑張ってください……今すぐやらなくてもいいプログラムの調整は、後でいいじゃないですか……」


「そーだそーだ! 私たちに雑用を頼んでばっかりで不公平だー!」


 本日の第一試合開始が始まるその二時間前、最終確認のために第一格納庫を訪れた茜たち。そんな茜たちを迎えたのは、五機の戦機と疲れ果てたエンジニアたちだった。


 格納庫に並んでいるのは、第四世代型を含む五機の装動戦機。その全てが今回のためだけに新しく調整された、チームノインヴェルトの新たな機体である。


「……なんというか、皆さん本当にお疲れ様です」


「茜ちゃん……ありがとうね。優花里さん、ここまで頑張ったんですから絶対に勝ってくださいね」


「ええ、この度は無理を聞いていただきありがとうございます。必ずやこの第四世代たちで勝利を手にしてみせましょう」


 エンジニアの中でも特に疲れている菜七に、自分も無理を言ってしまった一人として申し訳なく思いながら労いの言葉を送った茜。


 茜の優しさを受け取った菜七は、ここまで無理をさせたのだからと優花里に必ず勝つよう想いをぶつけ、優花里は隊長として勝利を約束した。


 遂に整備も終わり、残すは時間を待つのみ。


 対戦表も既に公開されており、ノインヴェルトの少女たちは控室で対戦相手の情報を確認していた。


「ふむふむ、最初の相手は九五式制隊ってチームみたいだね。おっ、公式戦の記録とか色々と載ってるじゃん!」


「……聞いたことないけど、強いの?」


「公式記録は去年の物がありますが……うーん、去年の公式戦神威杯で準優勝経験があること以外は特に無さそうですね」


「でも確か戦術に長けたチームだったような……新機体に慣れながらの相手かぁ……」


「細かいところはコマンダーに任せて、まずは皆で新機体に慣れることに集中したほうが私はいいと思うけど。どうかな」


「まー、なんとかなるでしょ。サクッと勝って優勝まで行っちゃおー!」


「そうやって考えて、足元をすくわれないといいんだがな。油断慢心はせず、気を引き締めて臨むのが一番だ」


「気を引き締めて、集中……」


「そこまで気張らずともよいですよ。勝たなければこの戦いに意味はありませんが、そう深く考えていてはこの時間を楽しめませんから」


 チームノインヴェルト控室。対戦相手である九五式制隊の情報を確認する少女たちは、それぞれ戦いに向けての思いを言葉にする。


 そうこうしているうちにようやく試合開始の時間が近づき、少女たちは控室を出て自分たちの装動戦機が待つ格納庫へと向かう。


 コマンダー専用機が一機、二人乗りの汎用機が四機の計五機全ての準備が完了し、コックピットの中で少女たちは試合が始まるその時を待つ。


『さあさあ、本日も会場にお越しいただきありがとうございます! 月末恒例勝ち抜き戦団体の部! 個人の部から引き続き実況を務めます口実響です!』


『同じく引き続き解説を務める海貝雪李です。本日もよろしくお願いします』


『さてさて、先日の個人の部では予想を上回る展開が数多く繰り広げられましたが! 団体の部ではどうなるのか目が離せません!!』


『それではまず初めに本日一番手を飾るチームの紹介です。三年生の紫乃崎優花里率いるチーム、ノインヴェルト!』


『当時一年生の紫乃崎優花里チームリーダーによって作られて以降、数々の伝説を作り上げたトップオブトップチーム! 多くの一年生を連れて、今年は一体何を見せてくれるのか!』


『対するは二年生の周防(すおう)睦海(むつみ)率いるチーム、九五式制隊!』


『ミリタリーのことならお任せを! 神威女学園随一のミリタリーオタクである周防睦海が作り上げたミリオタのためのチーム! 複数の戦術を切り替える戦法を得意としているが、果たしてノインヴェルトに通用するのか!』


「初陣らしく、まずは確実な勝利を」


「ノインヴェルト……誰が相手であろうと、全力を出すのみです!」


 遂に試合開始直前となり、恒例となっている実況席のトークと両チームの簡単な説明が始まった。


 チーム九五式制隊。ミリタリー好きなオタクである周防睦海が立ち上げた、同じくミリタリーを愛するアクトレスのためのチーム。


 最高戦績は準優勝止まりだが、戦術理解度や実戦への落とし込みだけであれば紛れもなくトップレベルのチームである。


『ノインヴェルトが優勝への第一歩を積むのか、それとも九五式制隊が伝説を打ち倒すのか!』


『この戦い、どうなってもおかしくはありませんね』


『それではお時間となりましたのでスリーカウント参ります! 皆様ご一緒に! 3、2、1! レッツ……』


『『ブレイク!!!』』


 実況席の二人による両チームの紹介が終わり、画面が実況席へと戻る。試合の開始時刻が迫る中、響のスリーカウントが各会場に響き渡る。


 各会場でも同様にスリーカウントの声が上がり、カウントの終了と同時にカタパルトが動き出す。静まり返った競技場に、十機の戦機が入場する。


「ノインヴェルト相手に時間を掛ける戦いはこちらが不利になります。勝利のためには前進あるのみ!」


「考えられる戦術は二つ。コマンダーを狙うか、各個撃破を狙うか。……どちらにせよ、こちらは予定通り動きましょう」


 着地と同時に動き出した十機の装動戦機。両チームお互いにコマンダーが指示を出し、各機コマンダーの指示に従って動き出す。


 九五式制隊は全機で前進する突撃陣形を選び、ノインヴェルトが戦場を支配する前に敵チームのコマンダーを叩くことを選ぶ。


 一方でノインヴェルトは遊撃二機後衛三機という奇策を打ち、茜と百井が搭乗する神威丙式赤桜と清奈と美宙が搭乗する神威乙式流星が左右から前進を開始。


『さてまずは初動の確認です! 開始早々に九五式制隊は全機での前進を開始、一方ノインヴェルトは二機だけ遊撃に出るようだ!』


『前進する九五式制隊が速攻戦術でコマンダーを落とすか、それとも奇策を打ったノインヴェルトが戦場を支配するのか。この先の展開に目が離せません』


「反応確認! 遊撃が二機、後衛が三機……ここは少し陣形を変更しましょう。二番機と四番機はこのまま前進、シールドを展開して進んでください!」


「「了解!」」


「三番機と五番機は私をフォロー、遊撃機体を迎撃します!」


「「了解!」」


「……レーダー反応、五機確認。百井先輩、お願いします!」


「オッケー、速攻で決めるよ!」


「こっちも行こうか。頼りにしてるよ、清奈ちゃん」


「任せてください、確実に落とします」


 お互いにレーダーで敵機を補足し合い、遂に戦局が開戦に向けて動き始める。九五式制隊は迎撃と進行の同時展開を選び、ノインヴェルト遊撃班は接近しながら武装を構える。


 複雑な地形を臆せず進み、少しずつお互いの距離が縮まる。大きな通りを進む者たちと、障害物の間を通る者たち。ことなるルートでお互いに中央の広場へ同時に飛び出る。


『さあさあ遂に両者広場へ飛び出した! ノインヴェルトの遊撃二機がなんと、九五式制隊五機と真正面からぶつかったぞ!』


「そっちから突っ込んでくるなら好都合です! 二番機と四番機は前進! 三番機と五番機は武装構え、射撃開始!」


 お互いに敵機の姿を捉え、遂に戦いが始まった。左右から突撃してくる遊撃機を前に、睦海は射撃による迎撃の指揮を執った。


 睦海の声を合図に、九五式制隊の三機が同時に射撃を始める。凄まじい弾幕が形成されるが、神威赤桜と神威流星はシールドを駆使しながら遮蔽物の間を走り抜ける。


「神威赤桜は回避と誘導に専念、神威流星は敵を挟むように位置取り牽制射撃を。進行する二機は神威天華と神威刹那にお任せします。私は狙撃地点で待機しますので、皆さんよろしくお願いしますね」


「了解! 練習の成果、見せてあげる!」


「了解、上手く釣り上げてみせるよ」


「了解しました。では、前衛刹那機の後衛天華機でお願いします」


「おっけー、速攻で倒してさっさと片付けよ!」


 動いている間に優花里から新たな指示を受け取った四機。それぞれ与えられた作戦を遂行するべく、部隊は二つのチームに別れることに。


 誘導チームの神威赤桜は引き続き正面で立ち回り、神威流星は敵を後方から赤桜と挟み込むように立ち回り、狙撃地点への敵コマンダー誘導を始める。


 護衛チームの神威天華と神威刹那は接近する二機の相手を命じられ、前衛と後衛をそれぞれ担当して優花里を狙う敵機の対処に当たる。


 そしてコマンダーである優花里は第四世代である戦機神威丁式穹界に搭乗し、専用の改造が施された狙撃銃を構えて待機する。


「茜ちゃん、可能な範囲で反撃をお願い!」


「了解、武装確認……撃ちます!」


「清奈ちゃん、私たちも頑張ろうか」


「はい。……絶対、成し遂げてみせる!」


「では黄乃さん、刹那機のお二方、手筈通りにお願いしますね」


「オッケー、やれるだけやってみる!」


「ああ、了解だ。……だそうだ、美環。後輩からの期待を裏切るわけにはいかないな」


「ふっ、負けると思ってるの? なんならどっちも取っちゃうから!」


「それでは皆さん、参りましょうか。作戦名ロードトゥビクトリー、作戦開始です」


 前衛機が前線を荒らして戦局を掻き乱し、無理のある進行があれば叩き潰し、戦いの中で守りを削がれたコマンダーを直接狙い撃つ作戦。


 勝利を掴むための一筋の道が出来ることから、題して作戦名ロードトゥビクトリー。戦況の打破が得意な九五式制隊を封殺するため、優花里が考え抜いた速攻戦術。


 新たなチームノインヴェルトの初チーム戦、輝かしい初勝利のため。少女たちは戦場を舞い、それぞれ与えられた司令に従って戦いを繰り広げる。

――チームノインヴェルトのちょっとした話#6


「今回はエンジニアの皆でカスタムした五機のノインヴェルト専用装動戦機たちについてのお話だよ!」


「その説は本当にお疲れ様です。おかげさまで、これからは自分に合った機体を操縦できます」


「今回カスタムした機体の内第四世代の丁式はコマンダー用として、他四機はそれぞれ搭乗者二人の能力を最大限に活かせるようカスタムしたんだ」


「神威赤桜は近距離戦と格闘兵装を主体とした私と百井さんの専用汎用機で、神威流星は近距離戦と射撃兵装を主体とした清奈さんと美宙さん専用の強襲機、でしたよね」


「そうそう! で、神威天華は中距離戦と射撃兵装がメインの黄乃ちゃんと翠ちゃん専用の汎用機で、神威刹那は近距離戦と格闘兵装がメインの羅兎先輩と美環先輩専用の強襲機なんだ」


「四機それぞれを搭乗者の個性や癖に合わせてカスタムする、流石ですね」


「やっぱり機体の性能はその二人に合わせたものになってるのが一番だからね! ただ、丁式穹界だけはちょっとコンセプトが違うんだよね」


「どのコマンダーが搭乗しても完璧な性能を発揮し、ありとあらゆる作戦を遂行することが出来る機体。それが戦機神威丁式穹界、でしたよね」


「その通り、適宜判断が求められるコマンダーだからこその超汎用性特化なんだ。それじゃあ今回はここまで! 次回も涼凪ちゃんの後書きコーナーをよろしくね!」

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