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決着――18.伊佐義信

「余計なことを喋られると、ワシが困る」


 地上に降りたって早々、義信はそう言葉を発する。

 海斗の惨状と真澄を見て、彼はため息を吐いた。それはまさに呆れだ。この状況に対する落胆を示す表情のまま、義信は地面を強く踏んだ。

 ドン! まるで砲撃のようなその音は辺りに響き渡って、波となっていた地面が元の状態へと戻る。


「…………」


 つよくもがいていたライラは、突如としてなくなった圧力に首を傾げ、立ち上がる。

 そこにいる1人の男を目にしては、彼女は強く手を振った。


「あっお前、赤髪の女と居た奴だ!」


「えっ」


 自分を殺そうとした人間が助けた人間と一緒に居た? 

 わからず思考が停止する。


「あぁそうだ」


「赤髪は元気にしてるのか?」


「そんなことワシが知るか。直接、本人に聞けばいいだろう」


「んなこと言われても、オレ神と友達じゃないし」


「ワシだってそうだ」


「あんな楽しく話してたのに?」


「……過去の連れだからな」


 2人は盛り上がるが、真澄の言葉ですぐに会話が止まった。


「あの、な、なんで貴方が居るんですか? 海斗くんを殺そうとしたあなたが」


 ツンとした表情のまま海斗に近寄る。真澄は臨戦態勢に入るが、生まれ変わりの頭を撫でたことでその警戒が解かれた。


「あぁそうだ。ワシはジークが憎い。元々ワシのために作られた剣であって、それを盗まれたからな」


「……ということはつまり」


「元々ワシが戦争を起こすつもりであった」


 衝撃発言に場の空気が凍る。だが、義信はつづけた。


「ワシは、元の世界――つまり、今いるこの世界に帰ることを目的として動いていた。そこでジークと共闘して、少しの間旅をした。彼らの旅は楽しかった。覚えている……。それからアーミラと呼ばれる神と出会い、彼女から剣を授かる……その『ドラゴンスレイヤー』を」


「確か『黄金の授かりし剣』って呼ばれていたよな。それはもしかして——」


「あぁ想像の通りだ」


 なるほどな、ライラは納得したようだ。

 海斗は、そもそもそんな別名があったことを知らない。


「で、そこからワシは魔へと堕ちた。自らの手と意志によって魔人となり、『ドラゴンスレイヤー』を失った。……その剣はワシが唯一いた証明であったから、ジークに盗られたのが苦痛で仕方なかった。ただあのとき、海斗と戦って気付いた。この剣は元々ワシのためのものではない。ジークのためにあったと……」


 真澄が手を上げ、話し始める。


「もしそうだとしたら、どうして貴方に渡したんですか」


 義信は笑った。


「答えは簡単、作った相手が神だからだ。それも、ただの神じゃない。世界を繋ぎ時空を超える神だからだ」


 時空を超える……。

 思い当たる節がある。ジークが死んですぐの時間軸に海斗の魂のみが飛んで、赤髪の神であるアーミラと話した。これは『ドラゴンスレイヤー』を通じてやってきたのかと思ったが、違うのだろうか。

 仮説をとりあえず呑み込んだ。


「海斗、お前と戦ってわかったことがある。お前は、どれだけボロボロになっても立ち上がろうとするし、戦おうとするその意思が認められたんだと考える」


 さて、義信は日本刀を鞘に納める。


「もう目覚めたころか。海斗、お前はよくやった。強いな」


 義信は瞬間姿を消す。


「…………」


 魔人が居なくなり、しばし沈黙が流れる。

 そこに3人の人物がやってきた。

 1人は金髪で、白い鎧を見に纏った王女。2人目は、銀色の髪に紳士的な姿をした狙撃手。3人目は黒い髪に魔法使いを連想させる科学者。

 どうやら復活したようだ。


「突然、現れた魔人に助けられたんだが、彼は一体……」


 真澄とライラがそのことをロビンとカルミアに話し、海斗はその間治療を受けた。

 今まで疑問だったことや物事の背景が明るみになっていくが、それでも1つだけ空かされていない真実がある。それはヤミの存在だ。彼女はどういう人物で、一体何者なのかわからない。

 それに、義信と戦っているときは助けてくれたのに、ユリのとき助けてくれなかったのも謎である。

 寝れば会える——それは確実だ。それなら。


「マリーさん。今から眠るんですけどいいですか」


「いいわよ。眠くなったのかしら」


 ヤミと話すから——なんてことを言うのは辞めておこう。

 ここは嘘をついて、


「はい、ちょっと疲れまして」


 と言った。


「まぁそうよね。本当によく頑張ってくれたわ。ありがとう海斗くん。きみのおかげで、ワタシ強く生きていけそうだわ」


「それなら良かったです」


目を瞑り、眠気に誘われるがまま意識を集中する。

ただプッツンと切れる前、「強く生きていける」という発言が気になった。

そのことを聞こうと思ったときにはもうそこにマリーはいない。いるのは、シクシクとなく白髪の女性だ。


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