表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/63

決戦――13.魔王カルラート

 でも、助けるってどうすれば——考えを巡らせながら、エカルラ―トの猛攻を避ける海斗。


「ジーク。生まれ変わってもなおこうして戦えるとはな。ワレ思わなかったぞ」


 エカルラ―トが微笑む。

 楽しんでいると言うのか、少しばかりムカつく。


「あぁそうだな」


 バックステップで避け、『ドラゴンスレイヤー』を振る。しかし、それは刃がついていないほうで、平べったい面を押し付ける形となった。


「甘いな」


 『レイヴの剣』で防がれてしまい、カウンターとばかりに海斗の腹部へと強い蹴りを入れられた。


「……ッ!」


 口から涎を吐きだし、2歩後ろに下がる。

 彼女に甘えが存在せず、本気で殺す気だ。だからと言って、自分も殺す気で――はできないいくら魔王エカルラ―トと言っても、海斗からすればカルミア・スカーレットだ。一緒に暮らし同居人の異世界人でしかない。

 本気で戦えない。

 葛藤に苦しめられる。その間、エカルラ―トは猛攻を続けた。臆することなく、ビビることなく、手加減もせず、本気で刃のついた剣を振る。


「…………」


 どうにか、どうにかできないか――『ドラゴンスレイヤー』の能力で彼女を呼び起こすことができれば、と考えていたさ中、固い塊が飛んでくる。それはエカルラートと海斗にめがけられており、もし何もしなければ両方当たることになる。


「…………」


 咄嗟に彼女の剣を弾いて、前蹴りをした。エカルラートの体は、軌道から外れ石の欠片に当たることはなかった。

 しかし、海斗はと言うと


「……ッ!」


 少し前に動いたことで、全身を打たれてしまった。


「海斗、申し訳ない……」


 隣でロザリオと戦っているロビンがそう言葉を漏らす。


「……大丈夫。なんとかな」


 ジリジリとした痛みが迸る。

 それでもなお『ドラゴンスレイヤー』を構える海斗。


「…………」


 だが、エカルラ―トの猛攻がいつの間にか止んでいた。それどころか、彼女は拳を握りしめ、怒りに震えている。


「なぜ、なぜ庇った……」


「まぁ、だってねぇ……カルミアの体傷つけるわけにはいかないじゃん」


 きさま、瞬間エカルラ―トが目の前で消える。


「………」


 彼女の姿を探す。そして、視界に入れたころにはもう下に居た。

 ただそれは、前にやられたことがある。だから、わかっていた。どうすればいいのかわかっていた。

 海斗は振り上げられる『レイヴの剣』を交わし、地面に押さえつけた。

 傷つけるわけにはいかないけど、このときは許してほしい、と自分に言い訳しながら行動する。


「お前は、生まれ変わってもなおそうするのか!」


「はぁ? 俺は諸星海斗で、ジークとは関係ねぇよ」


「でも、お前は生まれ変わりなんだろ。その証拠に『ドラゴンスレイヤー』がある。お前はジークだ」


 ジークでしかない――彼女の意思の強さが、言葉に詰まっている。話し合いで解決できるとは到底考えられない。

 海斗は、『ドラゴンスレイヤー』を手放した。


「えっ」


 エカルラ―トは驚き、言葉が詰まる。

 それをいいことに、海斗はつづけた。


「俺は、俺だ。日本生まれの日本育ち。界英高校に通う15歳の諸星海斗。900年前の英雄ジークとは関係ない。全て自分の意志で行動している」


 空気を吸い込み、まくし立てた。


「前世でどんなことがあったのか知らんが、俺はカルミアを助けたい。そのためには、どうすればいい? 教えてくれ」


 彼女の意思が弱まる。

 やはりと言うべきか、エカルラ―トもカルミアもどこか精神的にもろい。少し強がれば、すぐに子犬のように丸くなる。


「……それなら、ワレが引っ込むしかない。でも、それだと……」


 エカルラ―トが突然絶叫に近い悲鳴をあげる。


「それだとダメじゃないか。お前は、お前のようにやるんだ」


 上空に浮かぶ人影。見ると、それはラモンだ。

 彼は不気味な笑顔を貼り付け、見下ろしていた。


「何をした?」


「別に。ただちょっといじっただけだ」


 下に居たエカルラ―トが暴れ、海斗はつい手を離してしまう。そのとき、彼女は馬乗りとなって、『レイヴの剣』を突き立てる。


「前世との決着付けさせてやってるんだ。真面目にやれよ魔王」


 ラモンはそう言い残し、消えた。


「……………」


 振り下ろされる『レイヴの剣』。『ドラゴンスレイヤー』を呼び寄せ、ぶつけたことで剣の軌道は外れ、横に着地する。


「…………」


 無言のままエカルラ―トが殺すように行動してくる。

 狂気であり、暴虐だ。

 最初であったころと同じ気持ちになる。しかし、違う所があるのはあのときよりも強い事だ。

 海斗は、エカルラ―トを蹴飛ばした。後方へと飛ばされるが、地面に着地し、そのままステップで距離を詰めてくる。

 『ドラゴンスレイヤー』を掴んで、全ての攻撃を捌く。だが、今の魔王は迷いが無い。勢いがのり、防げない攻撃が増える。


 本当にどうするか――強く念じたそのとき、エカルラ―トの胸元に黒い光が見えた。いや、それは炎と呼ぶべきか。メラメラと燃え上がる黒い炎はまさに魔王を連想させる。

 そうか、海斗は理解した。これは魔王の魂で、『ドラゴンスレイヤー』で触れれば破壊できるのだろう。ただそうしたとき、魔王はどうなるのか。彼女も死ぬのだろうか、それとも生きるのか。

 わからない。


「…………」



 エカルラ―トは悪い人ではないのだと薄々わかっていた。だから、死んでほしくはない。それでも、カルミアを救うためにはそうするしかないのか――悩んでいた海斗の頭に流れる記憶。


「…………」


 顔はうり二つで、髪色が黒色の女性――魔王エカルラートなのだろう。彼女は涙を流しながら戦っている。

 何かを訴えているようで、悲痛な表情だ。


 ――なんで、悲しんでいるんだ。


唇を噛みしめたくなる悔しい気持ちが芽生える。

もしかして、ジークはエカルラートも救おうとしていたのではないだろうか。でなければ、エカルラートの涙を流す理由が見つからないからだ。

 けれど、失敗して、救うことができなかった。

 記憶から感じる悔しい気持ちが今でも響いているし、戦うことになっている。

 なら、次に持ち越さない方法は、これで終わらせる方法は、エカルラ―トを殺して、カルミアの魂を全面的に出すしかない。


「…………」


 決心がついた。

 『レイヴの剣』が1筋の黒い光となって放たれる。それを交わし、黒く光る炎――エカルラートの魂を『ドラゴンスレイヤー』で突く。

『レイヴの鎧』にヒビが入り、少しばかり血が垂れる。と、同時に黒い炎が割れ、白く光る。


「………」


 エカルラートの証でもある顔の模様は消え、いつもの彼女――カルミア・スカーレットへと変わる。


「………海斗?」


 カルミアは腰が抜けたのか、力なく前傾姿勢で倒れる。地面に付く前に抱えた。


「戻ったのか」


 エカルラ―トの炎が見えない。つまり、魔王は消えたのだろう。


「大丈夫か?」


 海斗の声掛けにカルミアが縦に頷く。


「ワレは、一体何を……」


「大丈夫。大丈夫だからな」


 本当のことを言うべきか迷ったが、答えないことにした。カルミアのために、そして、エカルラートのために。


「………」


 ロザリオとロビンが戦い、ライラと真澄がユイを抑え込んでいる。

 どちらに行くべきか、距離的にロビンが近いから彼にしよう。

 カルミアを背負い、近くの居酒屋の扉を蹴って壊した。


「カルミア。ここで休んでろ」


本来であれば近い所に置いていたいが、それだと戦いに巻き込まれてしまう、と考え、少し離れた位置にカルミアを隠した。


「傷……どうしよっか」


 胸元から流れる血を考えていると、


「これは自分で治すから、海斗はロビンたちを助けてくれ」


 でも、と言いかけたが、自分ができることは何一つない。戦う事しかできないのだから、ここで出しゃばれば余計に時間がかかり、取り返しのつかない事態を招きかねない。

 海斗は、たちあがる。


「……わかった」


 気を付けて——カルミアの言葉を背に、海斗は走る。

 ロビンを助けるために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ