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救出の前

 木で覆われた場所で、海斗は目を覚ました。

 ここがどこかすぐにわかった。ロビンに鍛えられた場所だ。


「…………」


 白い包帯に体を覆われており、これはマリーの発明品だとわかる。ズボンは黒く焦げ、上半身の服は無くなっていた。包帯を外そうかと思ったが、半裸は恥ずかしいのでこのまま巻いた状態にする。

 辺りを見渡して、ロビンの姿を探すと、すぐに見つかった。木の陰でロビンとマリーがを見ながらヒソヒソと話している。

 距離は遠く、何を喋っているのかわからない。海斗は立ちあがって、彼らのすぐそばまで寄った。


「目が覚めたのね」


 先に気付いたのはマリーだ。海斗の全身を見るなり一安心をした様子。


「おかげさまで」


 言葉に覇気がなく、海斗は2人が見ているものに興味が湧き、そっちのほうに意識が持ってかれていた。

 マリーはすぐに気付いて、これが『GI11』――『ミエルくん』だと説明してくれる。


「見てわかる通り、敵の数が多いわ」


 水晶玉に写る『アンデッド』の数を見て、マリーは考え込んだ。

 

「どんぐらい多いんですかね……」


 口を半開きにして、その数に圧倒された。

 10や20ではない。何百とある『アンデッド』があの商店街で佇んでいる。歩くスペースもなく、ギュウギュウに箱詰めとなっていた。

 肩の力が抜け、えぇ、と力なき声が漏れる。


「弱気になるなよ。胸を張れ」


「はい」


 飄々と弓の最終確認をしているロビンは、余裕そうだ。

 やはり慣れているのだろうか、そう思っていたが、弓を持つその手がブルブルと震えている。

 彼も怖いのだ。戦いに慣れているロビンでさえもビビっている。おかしな話だが、海斗は安心を感じるのだった。


「『アンデッド』は噛まれたらおしまいだから、ロビンとわたしが適してるわね」


「あぁそうだな。ボスはお前がやれ海斗」


「お、俺……」


 マリーの話から考えれば、海斗が選ばれるのは必然である。しかし、自力で黒星をつけたことが魔物でしかないため勝てるかどうか怪しい。それもましてや大量の『アンデッド』を扱う人間だ。知能もあって、力もある人間を相手にまだ半端者の自分が勝てるのは限りなくゼロに近い。

 ただマリーとロビンの引き締まった戦士としての面構えを前にして弱気になっているのは、あまりにも不格好だ。人間として格好悪い。


「そんな思いつめた顔するなよ。こっちまで緊張する」


 ロビンに背中を叩かれ、ハッとする。

 現実世界に帰ってきたのだ。


「す、すまん」


「まぁ大丈夫だ。時間さえ稼いでくれればあとは僕たちが片付ける。少しだけ時間を伸ばすだけでいい、ただそれだけで勝てる確率は上がる」


 無理はするな——ロビンの言葉を気に留める。


「わかった。できるだけ、引きながら戦う」


「あんま引きすぎると壁になって逃げれなくなるから、そこは気を付けろよ」


 海斗は頷いだ。


「無理はしない事ね少年くん」


「もちろんです」


 腕輪を『ドラゴンスレイヤー』へと変身させる。


「はいこれ」


 マリーから唐突に渡される黒い物体。見るとそれは、海斗がよく着るジャージだ。


「ありがとうございます。これ、どうしたんですか?」


「ただ見様見真似で複製させただけだよ」


「はあ」


 魔法の凄さを改めて感じる。

 服に腕を通し、チャックを閉める。やはりこの服だと感じた。着慣れているから安堵感が増す。


「真澄も捕らわれてるなぁ」


 『GI11』を見ていたロビンがそう言葉を口に漏らす。


「真澄もですか」


 信じられない。思わず言葉に疑問がこもる。


「あぁそうだ。たぶんカルミア様と共に行動していたからだろう」


 自分が仲良くなってしまったばかりに彼女を巻き込んだ、そう考えたとき頭を叩かれる。

 顔を上げるとロビンがいいた。


「まだ死んでないんだから大丈夫だ」


「本当ですか!」


 まだ生きている。希望もあって、心強い友がいる。

 海斗は拳を強く握りしめた。


「それじゃあ絶対に助けないとね、少年君」


 「そうですね」


 絶対に助け出す。カルミアも、真澄も、腕輪に変わった『ドラゴンスレイヤー』が光る。


「カルミア様と真澄の奪還作戦、開始としようか」


 ロビンの言葉を合図に転移装置が光った。その瞬間、海斗一行はジャンプした。

 目指すは敵の基地へと一瞬にして移動する。

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