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瞳に映る輝く世界 ――英雄の残したもの――  作者: カンタロウ
エピローグ
17/63

王女を追う存在

 これはまだ海斗が夢の中でヤミと会話しているか、していないかの瀬戸際で起きた出来事である。

 辺りは暗く、商店街は静まり返っている中、白い光と共に2人の男女が現れた。全体的に傷だらけで、着ている衣服が黒く汚れ穴だらけ。


「ここら辺に逃げたはずなんだけど」


 中途半端に伸びた髪を申し訳なさそうに毛先だけ結び、ひまわりのような黄色い目を辺りへと注ぐ女性。肌の露出度は高く、魔法使いを彷彿とさせるその恰好は、彼女を妖艶な雰囲気へと包み込む。

 ただ何と言っても、一番目に引くのは肩から斜め掛けしているボストンバッグだ。彼女が持っているボストンバッグは大きく、その華奢な体で持つにはあまりにも大きさが合っていない。


「本当にここなのか。もし間違っていたら、どうするんだ」


 女性を批難するような強い言い方をする青年。しかし、実際の表情は困惑と心配した面持ちで、額には汗をびっしりとかいていた。

 銀色の髪は星空の下と言うにもかかわらず、月よりも勝ったような輝きを持ち、目鼻立ちがくっきりとしていた。

 衣服からも知的をほうふつとさせるが、どこか獰猛性を思わせる狂気が彼の中に眠っていた。


「大丈夫よ、ロビン。ここにカルミア様が転移するよう私が設定したんだから。焦らせないでよ」


「す、すまないマリー。彼女の事がちょっと心配でつい……」


「私も一緒だから気持ちはわかるけど、もう少し冷静にね。焦ったらそれこそ敵の思うつぼだわ」


 紫のマントをヒラヒラさせながらマリーは、ある証拠を見つけた。


「これって……。ロビンちょっと来て」


 すぐに彼を呼び、指をさした。


「魔法陣が黒くなっている」


「ってことは、敵に使われたってことか……」


 本来、転移魔法に使う魔法陣は白く光っている。しかし、それは極まれに黒く光るときがあり、それは誰かが侵入し使ったときだけだ。

 つまり、敵よりも一足後にこの世界へと来てしまった証拠でもある。


「暗号化もして、ハッキングされないよう複雑化したのに」


 その魔法陣を書いたのは、ロビンだ。

 彼だけが高等魔法を扱うことができ、技術に関して言えばドラグネス王国随一を持っている。ロビンにかかればどの魔法でも最上位へと変換され、破く人物はなかなか居ないとされていた。

 特に今回の魔法陣に関して言えば、ロビンの全てを賭けて作ったものだ。魔法陣から、転移先の指定、それに渡るまでの道筋まで、全て彼が入念に入念を重ねて完成させた、言わば彼の人生の集大成でもあった。しかし、その魔法は簡単に打ち破られ、利用された挙句、使えなくなるよう道まで閉ざされたのだ。

見た限り、その工程は全て短時間で行われたようで、人間を超えた存在であるのは確かであった。


「クソ!!」


 悔しい表情を滲ませながら、地面を殴る。

 ゴン! とぶつけられた拳は無傷だったが、地面は小さなクレーターが出来上がっていた。


「そう落ち込まないで、ロビン。キミはよくやったよ。本当に」


「奴らに僕の魔法が利用されたんだ。これほどまでに屈辱的で、侮辱的な行為はないよ」


 頭に血をのぼらせたロビンを落ち着かせるのは、めんどうだし時間がかかる。

 早いとこ移動したほうが一番だった。

 地面からサンプルを採取したマリーは、移動するために肩からかけているボストンバッグを漁る。

何となく手を伸ばし、適当にグルグルとかけ回していると、棒の感触が手に当たった。それを掴んで引っ張ると、現れたのは箒だ。それもバッグよりも長い箒。


「とりあえず、移動しよう。ここはまだ危険かもしれないから」


「あぁそうだな」


 マリーは箒に跨り、ロビンは自身に飛行魔法を無詠唱でかけた。

 二人の男女は空へと浮いて、自身たちが安全に身を隠せる場所を探して飛行する。

 その方向にあるのは、木が生い茂り、歪な三角形をした山だった。


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