第六話
もう毎日の日課になってしまった「想い出屋」通い。
ドア・ベルを鳴らしてお店に足を踏み入れる。
カラリン―――
「あら、いらっしゃい」
良子さんが迎えてくれる。
今日もお店を手伝っているようだ。
田崎さんもお店の奥で、何やら骨董品の手入れをしているのが見えた。
それは、小さな木製の茶色い箱だった。
まるでテレビゲームに出てくる宝箱のような形をしている。
箱の側面には何やら文字が書かれており、近づいてよく見てみると、” EDISON STANDARD PHONOGRAPH”と書かれている。
「お父さん。確か、これ蓄音機よね」
「そう、エジソン・スタンダード」
田崎さんから蓄音機について、色々と教えてもらった。
“エジソン”という名前が示す通り、この蓄音機は、あの「発明王」、トーマス・エジソンが作り出したものなんだそうだ。
『エジソン・スタンダード・フォノグラフ』という蓄音機だ。
エジソンは「発明王」の名にふさわしく、素晴らしい発明を世にいくつも残した。
その中でも、特に有名なものの1つが、この『蓄音機』だ。
この蓄音機が作られたのは1900年頃。
当時は当然スマホなんて無かったし、DVDやCDなんてものも、もちろんまだ無かった。
その当時は、楽曲や人の声を録音するためには、『蝋管』と呼ばれる、筒に蝋を塗ったものを使っていたそうだ。
蝋に溝を掘ることで、音を記録したり再生したりできるのだという。
この蝋管が、やがてレコード盤へと置き換わっていったそうだ。
―――あれ? 確かこれ、私の家で昔見たことがあったはず。
「これ、確か、おばあちゃんが持ってました」
確かスマホで撮った写真の中にあったはず―――
「あった! ―――おばあちゃん、大切にしていたんです。この蓄音機」
「ああ、これは同じ型式のものだね。由紀さんの家に置いてあるのかい?」
「いえ、もう今は・・・」
私の表情をちらりと見て、きっと何か気づいたのだろうけれど、田崎さんは何も言わなかった。
「こういうものを家に置いておいたって、しょうがないでしょう?捨てちゃうからね」
母がそう言って、おばあちゃんの遺品をほとんど処分してしまっていたのだ。
「あ、でも―――」
思い出した。まだおばあちゃんが亡くなる前。
「おばあちゃんからもらった蝋管が、たしか家にあったと思うんです。
取ってきていいですか?すぐ戻ります!」
「はーい。慌てないで、気を付けてね」
良子さんの言いつけを破ってしまった。
私は急いで家に戻ると、部屋の物置を開けて探し始める。
「――あった!これだ・・・」
エジソンの顔が描かれた円筒状のケースに「由紀へ」と書かれている。
蝋管は落とすと割れてしまい、録音した声はもう聞けなくなってしまうらしい。
私は蝋管を丁寧に包んで鞄に入れると、お店へと急いだ。




