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想い出屋 アンティーク  作者: 麒麟草
蓄音機 ~おばあちゃんの声~
6/7

第六話

もう毎日の日課になってしまった「想い出屋」通い。

ドア・ベルを鳴らしてお店に足を踏み入れる。


カラリン―――


「あら、いらっしゃい」

良子さんが迎えてくれる。

今日もお店を手伝っているようだ。

田崎さんもお店の奥で、何やら骨董品の手入れをしているのが見えた。


それは、小さな木製の茶色い箱だった。

まるでテレビゲームに出てくる宝箱のような形をしている。

箱の側面には何やら文字が書かれており、近づいてよく見てみると、” EDISON STANDARD PHONOGRAPH”と書かれている。


「お父さん。確か、これ蓄音機よね」

「そう、エジソン・スタンダード」


田崎さんから蓄音機について、色々と教えてもらった。


“エジソン”という名前が示す通り、この蓄音機は、あの「発明王」、トーマス・エジソンが作り出したものなんだそうだ。

『エジソン・スタンダード・フォノグラフ』という蓄音機だ。


エジソンは「発明王」の名にふさわしく、素晴らしい発明を世にいくつも残した。

その中でも、特に有名なものの1つが、この『蓄音機』だ。


この蓄音機が作られたのは1900年頃。

当時は当然スマホなんて無かったし、DVDやCDなんてものも、もちろんまだ無かった。

その当時は、楽曲や人の声を録音するためには、『蝋管』と呼ばれる、筒に蝋を塗ったものを使っていたそうだ。


蝋に溝を掘ることで、音を記録したり再生したりできるのだという。

この蝋管が、やがてレコード盤へと置き換わっていったそうだ。


―――あれ? 確かこれ、私の家で昔見たことがあったはず。

「これ、確か、おばあちゃんが持ってました」


確かスマホで撮った写真の中にあったはず―――

「あった! ―――おばあちゃん、大切にしていたんです。この蓄音機」

「ああ、これは同じ型式のものだね。由紀さんの家に置いてあるのかい?」

「いえ、もう今は・・・」


私の表情をちらりと見て、きっと何か気づいたのだろうけれど、田崎さんは何も言わなかった。


「こういうものを家に置いておいたって、しょうがないでしょう?捨てちゃうからね」

母がそう言って、おばあちゃんの遺品をほとんど処分してしまっていたのだ。


「あ、でも―――」

思い出した。まだおばあちゃんが亡くなる前。

「おばあちゃんからもらった蝋管が、たしか家にあったと思うんです。

 取ってきていいですか?すぐ戻ります!」

「はーい。慌てないで、気を付けてね」


良子さんの言いつけを破ってしまった。

私は急いで家に戻ると、部屋の物置を開けて探し始める。


「――あった!これだ・・・」

エジソンの顔が描かれた円筒状のケースに「由紀へ」と書かれている。


蝋管は落とすと割れてしまい、録音した声はもう聞けなくなってしまうらしい。


私は蝋管を丁寧に包んで鞄に入れると、お店へと急いだ。


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