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龍に育てられた兄妹は龍に教えられた術で世界を謳歌するそうです  作者: 欲しい灯油
1章 レイギス王国編
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28話 兄と妹、初依頼をこなす

 レイギス王国 王都リューグリア郊外に位置する小さな農村"エッタ"。


 レインとルーナはそこに訪れていた。


 理由はただ一つ。二人の記念すべき初依頼をこなすためである。


 レインとルーナの初依頼。


 突如現れた『赤竜(レッドドラゴン)』の討伐。Aランク指定魔物の討伐はAランク難度となるが例外が存在する。

 本来Aランク指定の魔物の討伐はAランク冒険者三人以上で行うのが基本である。しかし、レインとルーナは二人のみ。よって今回の依頼はA+難度指定の依頼となった。


 今日冒険者登録をしたばかりの年端も行かぬ少年と少女にA+難度依頼を受けさせるなど正気の沙汰でない。


 しかし、此処冒険者ギルドにはギルドマスターであるリリエッタに逆らえる者は誰もおらず、レインとルーナはリリエッタとサブマスを引き連れ、"エッタ村"に訪れていたのだ。


「じゃあ、二人共、ぱぱっとお願いね」

「りょーかい」

「はい」


赤竜(レッドドラゴン)』、その巨体は村の麓の丘からも十分見える程のものだった。近くに行けば相当なものだろう。

 しかし、その巨体を目にしても二人の目には恐怖はない。あるのは期待外れの物を目にしたという遺憾だけ。それが彼らの実力を雄弁に示していた。


「ほ、本当に大丈夫なんですよね?」


 しかし、それを理解出来るのは本人達とその実力を垣間見たリリエッタだけ。事の詳細の説明とその見届け役として追従してきたサブマスは知るよしがない。


 年端も行かぬ少年と少女がAランク指定魔物に立ち向かうというのだ。冗談にしては余りにも質が悪いだろう。


「大丈夫だって、彼らなら。なんて言ったって私に久しぶりにやる気を出させた子達なんだから」




 ◇◇◇


「さて、それじゃあ行くか」

「はい、お兄様」


 俺達は空中に浮く巨大な怪物を見ながら、会話をする。


 今日は記念すべき初依頼を受け、エッタという名の村に来ていた。自然と手に力が入るのを感じる。

 初めてというのはどうしても心が踊る。初めて剣を握った時も、初めて魔法を使った時も、初めて錬金術を習った時も。

 俺は胸の高鳴りをとても感じていた。


 そして今も。


 今回の依頼は『赤竜(レッドドラゴン)』の討伐だ。

赤竜(レッドドラゴン)』なんて言われてるけど所詮は『亜龍(ルーザー)』、成り損ないだ。


 俺達が後れを取る事はないと思う。しかし、何時以下なる時も油断は禁物だ。油断は『傲慢』に繋がり『傲慢』は『怠惰』に繋がる。そして『怠惰』は身を滅ぼすのだ。

 それを俺とルーナはよく知っている。なんて言ったって母さんとクリス姉に口酸っぱく言われていたから。


 だから、今回も一切の油断はしない。


 迅速に最適を選ぶ。それが俺の仕事。後はルーナが何とかしてくれる。


 俺達は空を飛んでいる赤竜の元へと魔法で空を飛ぶ。


 空を飛ぶのは口で言うのは簡単だが意外と難しい。風の魔力で体を浮かせながら、体を薄い空気の膜で覆うことで急激に高所に上がった負荷を抑えるのだ。


 昔、それをしないで空を飛んだら、滅茶苦茶頭が痛くなったのは痛い記憶だ。母さん曰く、人間には空を飛ぶ時にかかる負荷を押させる為の器官がない為魔法で空を飛ぼうとするとその負荷が頭痛や吐き気、目眩などの症状として現れるらしい。

 山に登ってもなるという。龍はそれを押させる器官が備わっているらしいから何とも羨ましいものだ。


 中々難度が高いこともあって空を飛べる魔法士は余りいないのだという。


 俺たちの下にいるサブマスって人もなんか凄い驚いてるし。


 俺達は空を飛んで赤竜に近づく。


 赤く光る瞳が俺達を捉えた。


「クロガネ、一応此処に来た理由を聞けない?」


 そう言って俺は俺の影の中にいるクロガネを呼び出す。

 黒く輝く龍鱗をした小さな『黒竜』が俺の事を見つめる。


『承知致しました。主』


 クロガネが俺達には聞き取れない(言葉)で目の前の『赤竜』に話し掛ける。


 相手も返答をしたのか同じ様な音が赤竜から発せられる。


『どうやら、彼奴(きゃつ)は暇潰しに此処に訪れたそうです。これからこの村の人間共を襲って回ると言っております』

「そっか」


 どうやら倒す他無いようだ。


「じゃあ、殺されても文句言えないね」


 俺は赤竜が反応出来ない速度で近づき、かかと落としを頭部に落とす。


 大きな音を立てて赤竜が地面に落ちた。


 それに伴い、俺達も地面に降りると赤竜は大きな体をゆっくりと上げ、憤怒の籠った瞳を俺に向け、大きな咆哮を上げる。


 ただの雄叫びなのにその余りの大きさに大気が震える。耳がキーンとするからやめて欲しい。


「ルーナ、よろしく」


 俺はいつもの手筈通り、ルーナに指示を送った。


「はい、お兄様」


 ルーナが魔力を集中し、魔法を唱える。それ程難しい魔法じゃないので今回は【白龍時杖(クロノス)】を抜いていない様だ。


「【永氷(エターナル)】」


 淡く青白い光を放っていたルーナが魔法を完成させる。魔法の完成とともにルーナの残留魔力が冷気となって辺りに迸った。


 ルーナの放った魔法、超級水魔法【絶氷(エターナル)】。全てを凍らせる絶対の氷海に赤竜が飲まれる。

 逃れる事の出来ない氷海に赤竜の巨体がみるみる凍りつく。足、胴、翼、そして頭部とその巨体全てが凍りつくまで約三秒。


 それだけあれば十分。俺もある()()を発動する。


「【龍波】」


 凍り付いた赤竜の氷彫刻に手を当て黒い波動を送る。その瞬間、それは音を立てて崩壊した。



 ◇◇◇


 レインとルーナ、そしてリリエッタとサブマスは冒険者ギルドへと帰還していた。


 突如現れた『赤竜(レッドドラゴン)』を討伐し終えたレインとルーナは村民全員にお礼を言われた後、リリエッタの用意した馬車に乗って冒険者ギルドへ帰還し、そのままリリエッタの部屋へと訪れていた。


「さて、取り敢えず初依頼お疲れ様。見事だったよ」


 部屋に入り、ギルド職員にお茶を入れてもらい、四人でお茶を飲んで一息着いた後、リリエッタがレインとルーナに向かい合い、声をかけた。


「レイン君とルーナちゃんの実力、しっかりと見てもらえたかな?」


 リリエッタはサブマスへしたり顔をしながらねっとりと問いかける。

 サブマスはその視線をしっかりと受け止め、レインとルーナへ向き合うと姿勢を正した。


「はい、この目でしかと。この王国で数少ない【飛翔魔法】の使い手であり、ルーナ嬢の一瞬で超級魔法を構築するその類まれなる魔法の才能。レイン君の未知の魔法。更にその後の村民への対応。

そして何よりあれ程迅速且つ一切の被害なく『赤竜』を討伐する姿を私は見たことが無い。

 実力、素行、所作、全て基準値と言えるでしょう」


 サブマスは一度言葉を切ると、顔を引締め、レインとルーナに頭を下げた。


「お二人共、申し訳ございませんでした。私は失礼ながら貴方々をAランク冒険者には相応しくない子供だと思っておりました。しかし、先の依頼ではっきりしました。

 貴方々は紛うことなきAランク冒険者です。冒険者ギルドリューグリア支部()()()()()()()()() サブマス・マダトカズ、貴方々のAランク取得を認めます」


 サブマスはレインへと手を差し伸べると、硬い握手を交わしたのであった。





「所でギルマス、正当な手続きをしなくても宜しかったのですか?私も認めた事ですがレイン君とルーナ嬢のAランク登録は私と貴方の独断でしょう?

 ギルド内で反対が起きるのでは?」


 レインとルーナが依頼達成報酬を受け取り、宿に帰った後、リリエッタの部屋ではサブマスとリリエッタのやり取りが行われていた。


「まぁ、大丈夫でしょ。国王陛下にはさっき書簡を出したし、他のギルドマスターにも便りを送った。

 Aランクの連中も帰って次第、二人を紹介するつもりだし、Aランク以下は例え二人に突っかかっても返り討ちに会うだけだよ」


 Aランク冒険者とは冒険者ギルドの頂点に立つ実力者に与えられる称号だ。故にそれ相応の能力が求められる。実力があり、素行がしっかりとしており、素姓がはっきりとしていて、礼儀所作が正しい者。

 そこまでして漸くAランク冒険者なのだ。それを判断するのはギルドマスター総員、十名。その過半数が承諾した場合のみ、晴れてAランク冒険者として認可されるのだ。


 しかし、今回のレインとルーナに関してはリリエッタの独断だ。それは明らかに冒険者ギルドの規約違反である。


「それに、実物を目にしたら認めざるを得ないよ。

 彼らは人の皮を被った怪物だ。そんなのをこのギルドで管理するにはAランク以上の扱いじゃないと管理しきれない。最高責任者(ギルドマスター)なら全員そう思うさ」


 ニヤリと嫌らしい笑みを浮かべながらリリエッタはそう呟くのだった。




 ◇◇◇

「いやー、思いの他報酬よかったな」

「そうですね、魔物を倒すだけで金貨5枚ですからねー」


 レインとルーナは今日取った宿への帰路を、そんな話をしながら歩いていた。


 この世界の通貨はどこの国も共通である。通貨が共通なのはこの世界に他の通貨が存在しないのが理由である。

 この世界で新たな通貨が開発されなかった理由は定かでないが嘗て新たな通貨を開発した王に神罰が下ったという噂がこの世界全土に広まっている為、誰も作ろうとしないからなのだろう。


 話は戻り、この世界の通貨は紅金貨、白金貨 、金貨、銀貨、銅貨、銭貨の六種類である。

 そしてレインとルーナが報酬で受け取った金額は金貨5枚。これは王都に暮らす平民の約1ヶ月間不自由なく暮らせる程の大金だ。


 今まで金銭など持った事もなかった二人だがイミーナとリカードの護衛で報酬を受け取った時に初めて金銭に触れた為、その価値もそこで聞いたのだ。

 ちなみに二人の護衛の報酬は紅金貨10枚だった。これは王都の平民の約20年分の生活費と同等なのだがこれを受け取った時、二人は金貨5枚で1ヶ月の生活費とは聞いていなかったので、何も考えずに受け取っていて、それを知った時思いも知らぬ大金を渡されていた事に驚愕を越して苦笑いするほか無かった。


閑話休題。


二人はのんびりと話をしながら今日取った宿に戻ると、宿の前には武装した兵士が何人も立っているのが見えた。


きちんとした装備をした兵士達が王都の高級宿の前にたっている様子に興味を示したのか中々の数の人が集まっている。


「何かあったのかな?」


レインとルーナはその光景に疑問を持ちながらも、自分達の宿に向かって歩いていく。


兵士達の前を通り過ぎて、宿に入ろうとした時、一番いい装備をつけた一人の兵士が二人に声をかけた。


「失礼、お二人は"レイン様"と"ルーナ様"でしょうか?」

「ん?そうですけど…。俺達に何か?」


急に声をかけられ、更に自分達の名前を当てられた事に対しキョトンとするレイン。

その様子を見て「やはりそうでしたか」と一人納得する兵士は恭しくレインとルーナに礼をとると二人に思いがけない事を言った。


「私はこの王都の治安維持を任されております『リューグリア騎士団』の団長 アルバス・キルシュタインと申します。国王陛下より貴方々を王宮に招待せよと仰せつかりました。ご同行して頂けますでしょうか」

「「はい?」」


~この世界の通貨~


紅金貨:白金貨10枚と相当


白金貨:金貨10枚と相当


金貨:銀貨10枚と相当


銀貨:銅貨10枚と相当


銅貨:銭貨10枚と相当


銭貨:最小の通貨

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