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龍に育てられた兄妹は龍に教えられた術で世界を謳歌するそうです  作者: 欲しい灯油
1章 レイギス王国編
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20話 兄と妹、公爵に面会する

  レイン達一行は軽快に森を進み、日を跨ぐと、遂にレイギス王国公爵領に到着した。


  「レイン!着いたぞ。此処がレイギス王国公爵領"城郭都市レオニス"だ!」


  巨大な石門を潜るとそこには繁華街が広がっていた。


  綺麗に整備された石畳の街道に煉瓦造りの家々。白亜の礼拝堂に様々な露店。


  そして、そこを行き交う沢山の人々。

  値切りをする町娘と露店の店主。街道を駆け回る子供を連れた母親や武装を身に纏った冒険者など様々。


  彼らは皆、穏やかな顔つきで街の雰囲気を健やかなもの。 正に活気ある街だった。


  人間の街を初めて見たレインとルーナにとっては全てが初めて見るもの。 その目はとても輝いており町中をキョロキョロと眺めていた。


  「どうだレイン。いい街だろう」


  そんなレインに微笑みながら馬車から顔を出し得意気にそんな事を聞くリカード。

 

  「おおぉ。凄いな!これがリッカの住む街か。見たことも無いものばかりだよ!」


  得意気に放ったリカードにレインは食い入るように返答する。

  この数時間、共に過してきたレインからは想像出来ない程興奮した様子により笑みを深めるとリカードは楽しそうにこの街について説明を始めた。


  レイギス王国公爵領"城郭都市レオニス"。


  ここはレリクス・ヴァン・ヴェルダイン公爵が収める都市で、都市全体を城壁で囲む城郭都市だ。その領土は貴族領ではレイギス王国一で王都リューグリアに最も近い事から安定した物流と舗装された街道。そして、王国から派遣された王国兵により治安維持活動が盛んに行われている為、王都の次にレイギス王国で栄えている都市だ。


  その中心部に存在するのがヴェルダイン公爵邸。この都市は城郭都市などと言われているが実際には城など存在しない。その代わりに存在するのがこの広大な土地を有する屋敷なのだ。

  約200年程前、当代のヴェルダイン公爵はレイギス王国国王に褒美として城を下賜されたのだが「王国に二つも城があっては示しがつかん」との事で城の代わりにこの屋敷を立てたのだという。その名残からこの都市は"城郭都市"などと呼ばれている。


  そして、その城壁は200年たった今も尚健在で、王都を守るように配置されたこの都市は200年間落とされること無かった事から"難攻不落の砦"としても周辺国家に名を轟かせている。


  現領主であるレリクス・ヴァン・ヴェルダインは盟主としても知られており何よりも民と王国の為に働く様は民の信頼を一心に集め、民にとても慕われている。そんな男が統治する都市。レインはこれからは会うその男を想像し、わくわくしていた。





 ◇◇◇


  「しかし、流石だったな」

  「ええ、レイン様のあの剣術。あれは騎士団長様に匹敵するものでしたね」

  「その騎士団長様とはどれ程の方なのですか?」


  馬車の中、そんな会話が行われていた。馬車の中にはイミーナ、リカード、ルーナ、そしてホーキンスの4人が座している。


  レインは護衛当初からイミーナ達の馬車の護衛の為に馬車の横を追従する形で歩いていたので現在も馬車の外にいる。よって馬車内には護衛対象のイミーナ、リカード、執事兼護衛のホーキンス、そして、ルーナのみだった。

  ラクサス達は彼女等の馬車の後ろを馬で追従している為、勿論居ない。


  そんな或る意味密室空間の中で話題に上がったのはレインと竜狩り騎士団長ガイル・リンダインの二名だった。


  馬車が此処レオニスに辿り着くまでに沢山の魔物、魔獣に襲われた。普段滅多に現れない人間達に森の魔物達は嬉嬉として襲いかかったのだ。

  何故か分からないのだが魔物や魔獣は人間を襲う傾向にある。奴らは基本雑食だが不思議と人間を見つけると見境なく襲いかかるのだ。


  それは食欲からなのか本能としてなのか知らぬがレイン達も例外なく多種多様な魔物に襲われた。


  アルクールの森は特級危険指定区域。殆どの魔物がBランクでAランクの魔物も多数いる。挽いてはSランクにも届かんとする強者までいるのだ。

  しかし、彼らが危険な目に遭うことは一度たりともなかった。それはレインがその魔物を尽く抹殺したからだ。しかも見るからにボロボロな木刀一本で脅威を全て打ち払っていったのだ。


  年端も行かぬ少年が自身の体格の数倍ある魔物を圧倒する様は物語の英雄の様でイミーナとリカードはレインの戦いに見惚れていた。

  そんなレインを見て欲情する少女がいた事をレインの戦いに見惚れていた彼女らは知る由もない…。


  イミーナはレインの姿を見てある一人の男を幻視した。

  その男こそ、竜狩り騎士団長ガイル・リンダイン。公爵家令嬢だった彼女は何度かその男を見る機会があった。熊のような巨体に張り詰めた筋肉。腰に携えた直剣は見るだけで分かる業物。王国最強の男。彼を始めて見た時彼女は体が動かなかった。全身から溢れる闘気は彼を一段と大きく見せ、その鋭い眼光は自身をまるで射殺すかのように鋭かった。自身の背を伝う汗は生物としての危険信号。圧倒的強者。種としての枠を超えた超人。それが彼女のその男への評価だった。

 

  彼女の――否、ここに存在するルーナ以外の誰しもの中で最強とは"あの男"だった。しかし、突如現れ自分達の脅威を一振で消し去った少年。その少年の太刀筋は彼女達では視る事すら叶わなかったがその剣を振るう姿は嘗て一度だけ見たあの男が剣を振るう姿に似ていた。

  少女の様にも見えるその可愛らしい顔つきからは想像出来ない程の気迫。そして、繰り出されるのは神速の一刀。それは剣の高みに届いた強者だけが至る領域。その時彼女等は理解した。この少年もまた、『 (ヒト)という種の枠組みを超えた者』なのだと。


  そして、思ったのだ。この少年とあの男。果たしてどちらが強いのか。その疑問に答えたのは彼の妹だった。


  「間違いなくお兄様でしょう」


  彼女はそう断言した。普通ならばあの男よりも強いと言われたら皆鼻で笑うだろう。しかし、彼女の言葉はイミーナ達三人の胸にストンと落ちた。


  (((確かに彼ならあの男に勝利出来るやもしれない)))


  そして、その憶測が真実に変わるのはもう少し先の話である。





 ◇◇◇


  デカイ。それがレインの感想だった。


  レイン達一行は城郭都市レオニスに到着するとそのまま公爵邸へと向かっていた。イミーナがレインとルーナと彼女の父親であるレリクス・ヴァン・ヴェルダイン公爵との面会を希望し、それを二人が受け入れたからだ。


  城郭都市レオニスの中心に存在するその館は荘厳と言う言葉が相応しいとても巨大なものだった。

  レイン達が住んでいたあのログハウスの凡そ10倍。 レイン達のログハウスはシアの空間魔法により内装はかなりの広さをしているが外装はごく一般的な家屋だ。故にレインとルーナにとっては"家"とはその程度の物を指すと思っていたのだが目の前に広がる光景は余りにも規格外。煌びやかな装飾の施された屋敷はその派手な見た目と反して嫌らしくなく、寧ろその優雅さに目を奪われる。


  そして、美しい庭園に屋敷の前に並ぶ騎士達。彼らは馬車がこれまた巨大な門から入ってくるやいなや美しい所作で敬礼。イミーナやリカードの公爵家面々。

  そして、レイン達が屋敷に向かうまでの道に並ぶと腰に刺した直剣を抜き胸の前に構える。

  その中で一際目立つ白金の鎧を見に纏った騎士が


  「イミーナお嬢様!リカードお坊ちゃま!お帰りなさいませ!」

 

  と天にも届かんとする勢いで大声を上げた。


  「「「「「お帰りなさいませ!」」」」」


  途端、その他の騎士も追従する様に声を上げた。


  急に繰り広げられる摩訶不思議な光景にレインとルーナが目を白黒させる中何事も無く歩を進めるイミーナ達にレイン達は引き攣った笑いを浮かべながらすごすごと後をついて行くほか無かった。


  巨大な扉を左右に佇む騎士が開くとそこには先程の様にずらりと並んだ人影。

  黒色で統一されたスーツにネクタイ。手には白い手袋を嵌めた男性達。

  黒色で統一されたワンピースに白いエプロン。頭にはホワイトブリムと呼ばれる白いレースの着いたカチューシャを嵌めた女性達。

  執事とメイド。総勢約100人。それが先程の騎士のように門から引かれたレッドカーペットの両脇を挟むようにして出迎えていた。


  そして、これまた同じように


  「お帰りなさいませ!お嬢様!お坊ちゃま!」


  「「「「「お帰りなさいませ!!」」」」」


  綺麗な腰折のお辞儀からの「お帰りなさいませ」の挨拶。

  最早レイン達は只只呆然とするしかなかった。


  そんな中一人の執事がイミーナ達の方へ向かって来た。


  「お帰りなさいませ。お嬢様。お坊ちゃま。旦那様がお待ちです」


  そう告げるとくるりと身を翻し、歩を進め始めた。それについて行くように歩き出すイミーナ達。

  レイン達はどうすればいいのか理解出来ず、取り敢えずイミーナ達について行くことにした。


  広大な屋敷内を歩き、ふと先導していた執事が一つの部屋の前で足を止めた。そして、そのままイミーナ達に一礼をするとその場から立ち去っていった。


  レインとルーナか不思議そうにしているとイミーナから声をかけられた。


  「レイン様。ルーちゃん。この先にお父様がいらっしゃいます。私がお二人を紹介しますのでそうしたらお二人も自己紹介の方を宜しく御願いします」

  「分かった」

  「分かりました」


  そして、イミーナが扉を開く。


  様々な装飾が施されたその部屋はまるで宝石箱の様だった。絵画や壺。骨董品が所々置かれ、その部屋を色とりどりに飾っている。

  そんな部屋の中に男性と女性。


  二人はイミーナ達が部屋に入ってくると立ち上がりにこりと微笑む。


  「お帰り。イミーナ、リカード。無事で何よりだよ」

  「お帰りなさい。二人とも。元気だったかしら?」

  「「只今帰りました。お父様。お母様。」」


  彼等こそイミーナとリカードの父親と母親。この都市レオニスを収めるレリクス・ヴァン・ヴェルダイン公爵。そして、エレノア・ヴァン・ヴェルダイン婦人。


  レインとルーナか面会する人物だった。


  イミーナとリカードより少し濃い金色(ブロンド)の髪に蒼い瞳。スっと伸びた鼻筋に小さな紅い唇。そして、何よりも筋の通った佇まいは正に貴族そのもの。どんな女性をも魅了する色気を持ったその男は20歳前後だろうか。物語に出てくる王子様。そんな絵に書いたような美丈夫。レリクス・ヴァン・ヴェルダイン公爵。


  そして、その男の隣を侍るのは白金(プラチナブロンド)の長髪の女性。くりんとした大きな碧い瞳に小ぶりで形の整った鼻。そして、ぷっくりと膨らんだ唇は艶やかでとても艶かしい。

  そして、たわわに実った胸にきゅっと細い腰。正に出るところは出ている絶世の美女。彼女も20歳前後のように見える。彼女こそレリクス・ヴァン・ヴェルダインのただ一人の妻でイミーナとリカードの母親。エレノア・ヴァン・ヴェルダイン婦人。


  彼らはゆっくりとレイン達に視線を向けるとじっとレイン達を見つめイミーナを見ると口を開いた。


  「所でイミーナ。彼らは?」


  その質問、待ってました!と言わんばかりにイミーナはレイン達の事を話した。


  「此方の方々はレイン様とルーナ様。私達が危ない所を助けて頂いたのです」


  そして、手筈通りに二人は名乗りを上げる。


  「お初にお目にかかります。公爵様、そして、奥様。私はレインと申します。そして、隣にいるのが―」

  「妹のルーナと申します。この度はお会い出来て光栄です。公爵様、奥様」


  恭しく挨拶をしたレイン達を再び見詰めるとレリクス公爵は右手を差し出した。


  「初めまして、レインくん、ルーナくん。私の名はレリクス・ヴァン・ヴェルダイン。この度は娘達を救ってくれて有難う」


  レインはその差し出された手を取ろうとして――


  バッッッッッ!


  ――レインとルーナは後退するとレインはルーナを守る様に前に出ると腰の木刀に手をかける。


  そんな二人に驚くイミーナとリカードに、主に剣を向けようとするレインに咄嗟に自身たちも剣に手をかけるラクサス達近衛騎士団の面々。しかし、彼らも共に仕事をしたレインが突然暴挙に出るとは思えなかったので形だけの警戒である。

  そんな彼らなど気にすることもなくレインは目の前のレリクスと言う男に視線を固定し、油断なく行動を疑う。


  そんな緊迫した空気の中、急に


  「ふ、ふふ、あはははははっ!!!」


  レリクスの笑い声が響いた。


  急に笑いだしたレリクスにさらに警戒を強めるレイン達とぽかんとするイミーナ達。そんな彼らの様子に心底面白そうに笑うレリクスに「はぁ」という溜息と共に傍らのエレノアから声がかかった。


  「全く、また、貴方って人は」


  その声は心底呆れるようで何とも不機嫌な声だった。 そんな声を聞いたレリクスはさらに笑いを深めるとニヤニヤとした悪い笑みを浮かべながらレイン達に向き直った。


  「ふふふ。レインくん。ルーナちゃん。この部屋に入ってきた時から只者じゃ無いと思っていたけどまさか私の能力(スキル)【盗神の懐刀】を見破るとは!凄いな!これはガイルも見破れなかったのに!」


  彼は酷く興奮しているのか捲し立てるようにそう言い放った。


  そんな彼に酷く冷たい目を向けているエレノアはレイン達の方に向くと苦笑しながら声をかけた。


  「ごめんなさいね。この人ったら自分と同等かそれ以上の実力を持った人に会うと直ぐに手を出しちゃうのよ。別に悪気があった訳じゃないから許して上げて」


  盟主レリクス・ヴァン・ヴェルダイン公爵。その実態はかなりの戦闘狂(バトルジャンキー)の様だった。


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