19話 兄と妹、護衛を頼まれる
一部変更致しました。
レインが襲われていた人間、イミーナ達を救出してからは互いの情報交換が行われた。
「成程。では、レイン達は旅をしているのか」
「うん。でも旅に出たのは今日だけどな」
レイン達は歳が近いだけあってすぐに仲良くなり、様々な事について話した。そして、同じ性別のレインとリカード。ルーナとイミーナは互いの事を愛称で呼ぶほどの仲に成ったのだ。
レインはこの森について。リカードは自身の住まうヴェルダイン公爵領について。互いに違う意味で世間知らずな彼らは互いの話を食い入るように聞いていた。
「なぁ、レイン」
「ん?どうした?」
「一つ頼みがあるのだが…」
リカードから頼まれた頼み。それはリカード達の護衛だった。リカード達は近況報告とヴェルダイン家の別宅の視察を兼ねて祖父母の屋敷に赴いていた。
その帰りに本来なら舗装された街道を移動するのだが、そこに最近盗賊が出没すると言う噂を聞き、それを回避する為にこの森を通ったらしい。通常なら特級危険指定区域であるこの森を通るのは愚行である。しかし、盗賊が出没する街道はアルクールの森に近く、盗賊達もそこを恐れて其方には向かわない為その一帯を抜ければ、直ぐに街道戻る事が可能。故に確実に安全とは言えないが未然に危険を防ぐ事が可能ならばその手を取らない手は無いという考えでこの森を通過したらしい。
そして、現在はヴェルダイン公爵領へと向かっている。そして、ヴェルダイン公爵領とは王都に最も近い貴族領だ。その為同じ方向へ進むのならば護衛を依頼したい。そう考えた様だ。
「勿論、対価なしでとは言わない。しっかりと護衛費もだそう。何より私はお前ともっと話をしていたい。姉様もルーナ譲とまだ一緒に居たいと言っていた。どうか頼みを聞いてくれないか?」
レインにとっての初めての友人からのお願い。それを聞いたレインは善意と利益を考えその申し出を受け入れた。
「いいよ、俺ももっとリッカ達と居たいし。それに護衛費を貰えるなら旅の費用の宛も出来るし御の字だよ」
「そうか!助かる!早速姉様に報告してくるよ」
そう言い残すとリッカ(リカード)はイミーナの元へと駆けて行った。
一人残ったレインの元に助けた老人が歩み寄った。
「護衛の依頼を受けて頂き有難うございます」
「えっと、俺は俺達に利益があったから受けただけです。御礼なんて言われる筋合いありませんよ」
「いえいえ、私を助けて頂いただけでなく、お嬢様とお坊ちゃまの護衛まで。本当に感謝しかありません」
そう言うと老人は深々とお辞儀をした。彼はホーキンスと言いイミーナとリカードの執事をしていると言う。元々はヴェルダイン公爵の近衛騎士長だったのだがイミーナ達が生まれてからは彼女等の執事として仕えているらしい。若かりし頃には王国騎士団にも所属していたらしく、確かに腕に自信はあるようだった。
ホーキンスとも会話を終えるとレインの影に潜んでいたクロガネが影からぬっと現れた。クロガネは【影に潜む者】という能力を有しており、影に潜む事が可能なのだ。影の中にいる際は魔力が回復したり、契約者へ魔力を讓渡したり可能で有事の際にはレインの魔力タンクとして役に立つつもりらしい。
『主様。彼らの事、どう思いますか? 』
「うーん、話した限りでは悪い奴では無さそうだな。リッカは素直で良い奴だし、イミーナは腹の奥で何か考えていそうだが悪い奴では無いだろう。そもそも本当に悪い奴ならルーナが懐くわけないしな。あいつ人の本性が見れるから」
『 確かに。姫様はそのような能力を持っていましたね。では、一先ずはあの人間達と共に行動するのですね』
「あぁ。そのつもりだ」
『了解致しました。我が主』
そう一言残すとクロガネは再びレインの影に潜って行った。
『 能力』。魔法の様に魔力を用いず、自らのエネルギーを消費して発動する異能の力。誰しも一つは所持していると言われておりその種類は千差万別。途轍もない力を有するものもあれば何に使うか不明のヘンテコな物まである。
また、人間は異種族より多くの能力を有している事から魔法とは異なる何かだと世の中では考えられているが実際の所その実態は掴めていない。
「能力って本当に便利だよなー。獲得条件も分からないし、生まれつきって訳でも無いらしいから本当に謎だな。…けどそれだから面白いよな」
何時か、"能力"について解明してみせる。
そうレインは小さな目標を立てるのであった。
◇◇◇
「本当に受けて頂けるのですか?」
「あぁ。俺達にも十分利益があるからな」
リカードが自身に話した事をレインに確認をとるイミーナ。
その質問に肯定で返すレインとその横に侍るルーナ。
レインの返答を聞くとイミーナは腰を深く折り頭を下げた。
「此の度は誠に有難うございます。着きましては公爵領に到着した後屋敷に招待させて頂く許可を頂けますか?」
「うーん。どうする?」
レインとしては今後の事を考えて公爵に面会しておくのは有だろうと考えていた。自分の娘と息子を救った者だ。無下には扱われないだろうし、あわよくば追加報酬をなどと考えていたのだが独断専行は憚れたのでルーナにも聞いた。
「招待を受けるべきでしょう。公爵様とお目通りをする機会など早々ありませんから」
レインの考えを理解しているのかレインと同じ理由で面会を肯定したルーナ。その目には強かな思惑が浮かんでいたのをレインは見逃さなかった。
そんな妹に苦笑しながらレインはイミーナの返答にYESと答える。
「有難うございます。お父様もきっと喜んでくれるでしょう」
「そうだと良いんだけどね」
レインはすくりと笑いながらそう言った。
そんなやり取りの中に一人の男が参入してくる。
「では、護衛の打ち合わせを行っても宜しいでしょうか」
「ん?あんたは?」
「失礼。私はヴェルダイン公爵家近衛騎士団長ラクサスと申します」
茶髪の高身長の男はラクサスと名乗った。彼は翼竜の鱗で作られたスケイルアーマーに青銀の直剣を腰に携えている。
その鎧の胸には公爵領の紋章である獅子の装飾が施されている。一目で質の良さの分かる武具を装備する彼からは確かに力を感じた。しかし、それは常人にしてはという域でだ。
彼ではレインやルーナは愚かホーキンスにすら及ばないだろう。しかし、この場では確かに強者の部類であった。
「あんたが公爵領の最大戦力?確かにその装備と言い、弱くはないだろうけどあの爺さんにも勝てないだろ?」
初対面の人間にかけるには余りに無礼な言い様に顔を顰めるかと思われたがその男は盛大に笑うと人の良い笑顔を向けた。
「ははは。中々手厳しいですね。確かに私は公爵家近衛騎士団長という地位に居ますけど最大戦力ではありません。其方のホーキンス様に勝てないのも事実ですしね。貴方はやはり只者では無いですね」
自らの実力、更には公爵家の戦力について確かな憶測を立てた目の前の少年の異常さにラクサスは驚愕ながらも納得した。
(確かに彼なら。彼等なら護衛を任せそうだ)
レインは自分が認めた者には敬意を表する。命にかけて自らの主達を守ろうとしたホーキンス然り。しかし、近衛騎士団長の地位にいながら主達の警護を最後までと考えるレインは目の前の男に余りに良い感情は抱いてなかった。その為、強く当たったのだ。
しかし、自分の実力を認め、それに見合った働きを確実に全うする姿勢は評価に値し、しっかりとその主達の命を託す者達を見極める事はレインに好感を持たせた。
故に
「いきなりこのような事を申してしまって済まなかった。貴方の主を守護しようとする姿勢はしかと受け取りました。先程の無礼、謝罪します」
目の前のレインが急に態度を改めた事に目を見開くとラクサスは頭を振りながら言葉を返した。
「いやいや、お辞め下さい。私はお嬢様やお坊ちゃま、ホーキンス様だけでなく私達兵士まで命を救っていた御仁にその様な態度をされる程の者ではありません。それに私は自らの命を救って頂いた方を見定めるような事をしたのです。謝罪すべきは私の方です」
自らを驕らず、主の為に行動し、命の恩人に敬意を払う。その姿勢はレインの中のラクサスの好感度をぐんと上げた。
「分かった。そう言うのなら楽にさせてもらうよ。これから一時、共に仕事をするんだからね。気楽の方がこっちも楽だし」
「ええ、それで結構です。それでは打ち合わせの方始めても宜しいですか?」
「あぁ、いいよ。ルーナ、こっち来い」
「はい、お兄様」
打ち合わせの結果、レインが隊の先頭を歩き索敵魔法により魔獣や魔物の索敵を行う。そして、可能ならばレイン個により単体での戦闘、撃退。それが不可能な場合レイン、ホーキンスを殿とし撤退する。
ルーナは最重要任務としてイミーナ、リカードの護衛。その他ラクサス率いるヴェルダイン公爵家近衛騎士団は常時はレインと共に魔物達の警戒をし、戦闘になればルーナを司令塔としイミーナ達を護衛する。
一見、レインとルーナに丸投げな気がするが事実この森に生息する魔物、魔獣に対抗出来るのはレイン達だけだ。ホーキンスなら何とか太刀打ちできるだろうがそれは先程使用していた【限界突破】を使用してならだ。それは決定的な弱点がある為、並べく使用は控えたい。よってレインが考えたのがレイン一人でなるべく対処すると言うものだった。
勿論、ラクサスは異論を唱えたが事実自分達では足で纏いになるだけだと理解していたので仕方無くこの作戦を承認した。
「申し訳ない、レイン殿。貴方に全てお任せする形になってしまい」
「ん?気にしなくていいよ。実力の足りていないラクサスさん達じゃ危ないし、流石に俺もラクサスさん達も守るのは厳しいからね」
レインは彼らの事をよく理解していた。短い期間だが彼らの人と成りは彼らの自分達への態度で理解していたのだ。清廉潔白。公明正大。正に絵に書いた様な騎士そのものだ。その彼らには申し訳ないのだが足で纏いなのは事実だ。故にこの作戦はレインとしては彼らを危険な目に合わせないためにも譲れないものだった。
「だからこそ申し訳ないと思ってしまうのです。貴方々の御力を借りてる身でありながら傲慢かもしれませんが自分の主を守ってくださる方に力添えを出来ない事程騎士として不名誉な事はありませんので…」
そのレインの心理を察してなのかラクサスは申し訳無さそうにそう話した。
そんな彼にレインは苦笑すると照れ隠しをする様にニヤリと笑いながら口を開いた。
「だったらラクサスさん達はラクサスさん達が出来る最善の行動をとってよ。例えそれが俺らを見捨てる事だったとしても、ね」
それがレインにとっての精一杯の励ましだった。
それを聞いたラクサスはとてもいい笑顔を浮かべると
「ははは!!分かりました!では我々はお嬢様方の身の安全だけに集中させて頂こうと思います!」
そう力強く答えた。
そして、レイン達一行はヴェルダイン公爵領へ向けて歩を進めるのであった。
前書きにも書きましたが今回の話は一部変更しております。今回の変更は読者の方からのご指摘により変更致しました。確かに見返してみると自分でも思うところがあったので変更させていた頂きました。的確なご指摘有難う御座います。
これからも「ちょっと、これはどうなの?」という場面が出てくるかもしれません。その時は気軽にご指摘ください。寧ろご指摘いただけると有難いです。
しっかりと自分の中で検討して話の流れを壊さない程度に変更していこうと思います。
これからもこの作品の事を宜しく御願い致します。




