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龍に育てられた兄妹は龍に教えられた術で世界を謳歌するそうです  作者: 欲しい灯油
序章 『龍』に育てられた兄妹
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16話 旅立ちと別れ

夏休み終わってしまいますね…。


 ――――時は経ち早二年


  今日、『(母親)』に育てられた少年レインとその妹ルーナは今まで育った巣を旅立とうとしていた。


  「さてと、そろそろ行こうかな」

 

  何処か哀愁の漂う声色でそう発したのは黒髪、黒瞳の少年。白いシャツの上に紺のジャケットを見に纏い、黒のショートパンツを履いたその腰には使い古され無数の傷のある木刀が携えられている。

 背には麻袋で作られたナップサックが抱えられ、中には少し大きな中に何もいない鳥籠が入れられている。


  そんな少年、レインはベットから腰を上げると壁にかけてあったジャケットと同じ色のマントを掴むとそのまま自らの部屋を後にした。



  部屋をでるとそこには透き通るような白髪を胸まで伸ばした翡翠色の瞳をした少女が立っていた。少女は緩りとした白に黒のワンポイントの入ったミニワンピースに黒のホットパンツ。

 更に手には目の前の少年と同じ色マントが握られている。そしてその純白の脚には黒のニーハイソックスが履かれており、ホットパンツとニーハイソックスの間には見事な絶対領域が作りだされている。

 そのスラリとした脚から生み出される絶対領域は自然と見る者の視線を集め、丈の短いホットパンツへと目線を移動させられる。そんな服装は少女を妖艶に見せ、齢10には思えない色気を漂わせていた。


  誰彼構わず目を見張るだろう見目麗しいその少女は部屋から現れた親愛なる少女の兄へ、挨拶をした。


  「おはようございます、お兄様。いよいよ今日が来ましたね」


  そう放った少女、ルーナは今まで待ち望んでいた今日が訪れた事をレインに嬉しげに話した。


  「あぁ、漸くこの日が来たな」

  「ふふ」


  突如笑みを零したルーナにレインは訝しげに首を傾げる。


  「どうした?」

  「いえ、お兄様が余りにも目をキラキラさせているので、つい」

 

  そんなルーナの言葉に少し顔を赤らめるとレインは少し拗ねたように鼻を鳴らした。


  そんな兄の可愛らしい様子に再びクスリと笑みを零すとルーナはレインの手をとり先導を始める。





  「おや、起きたのかい?二人とも」

  「あら、おはよう。レイン。ルーナ」


  二人が階段を降りるとリビングから二つの女性の声がかけられる。


  「おはよう、母さん。クリス姉」

  「おはようございます、お母様。クリスお姉様」


  レインとルーナはその声の主へと声をかけた。


  レイン達の視線の先には同じでありながら白と黒の比率の真逆な着物を着た女性二人がソファへと座っていた。


  黒と白の髪を胸まで伸ばし、白よりも黒の比率の高い着物を着た女性は二人の母親であるシア。

  黒と白の髪を肩口で切りそろえ、黒よりも白の比率の高い着物を着た女性はシアの妹であり、二人の叔母であるクリスタ。


  良く似た二人が朝日の差し込むリビングに佇む姿は正に一枚の絵画の様に幻想的で、見る者に感動と畏怖を与える程美しかった。


  「ついに約束の日になってしまったね」

  「ええ、分かっていたことだけれどやはり悲しいものね…」


  そう零したシアの目には薄らと涙が浮かんでいた。そんなシアを優しく抱き抱えたクリスタの表情は酷く寂しげであった。


  「二人共…。でも、俺達は決めたんだ。四年前の今日。いつか二人で旅に出ようって…」


  そう、いつの日か言っていたレインとルーナとの『約束』とはレインとルーナでこの家を出て旅をすることだった――


  幼い頃、レインには憧れたものがあった。それは本に描かれた冒険譚だ。ある男が故郷を離れ旅をし、仲間を作り敵と戦い成長してゆく様子は幼いレインにはとても眩しく見えた。

「いつか自分もこんな冒険がしてみたい」。

 そんな思いは歳を重ねるほど増していき、四年前のある日、レインはその事をルーナに話したのだ。当時レインは8つ。ルーナは6つだった。


  年幼い少年が誰しも一度は見る夢。「いつか旅に出たい」。それを言葉足らずながらも、レインは目を輝かせてルーナに語った。

 そんな今まで見たことない表情で話すレインにルーナは自身とレイン。二人で旅をする姿を幻視した。その様子はとても眩しくて…。


  そして、ルーナにも新たな夢が生まれた。

「お兄さまと旅に出てみたい」。そんな可愛らしい夢が…。そう、その時、二人の運命を揺るがす大きな『約束』が生まれたのだ。


  『いつか二人で旅に出よう。そして二人だけの冒険譚を作るんだ!』


  幼い少年と少女の交わした初めてのかけがえのない約束。


  二人の生きる理由…


  二人で目指す夢…


  二人だけの…


  約束…


  それから二人はそれだけを目標に日々努力した。


  旅には二人だけで行くのだ。ならば力が必要だ。二人だけで生きて行く力が。金を手に入れる力が。魔物や魔獣から身を守る力が。力が…。力が…。


  そして二人は自分の弱さを学んだ。少年は母にうち負け、少女は魔獣に遅れをとった…。


  二人は失敗を学んだのだ。

  自身の弱点。相手の弱点。それを補うチームワークの大切さ。


  失敗から多くを学び、クリスタという新たな師との出会いにより、二人は成長した。それも驚異の速さで。


  そしてレインは決めたのだ。


  「四年前、約束をした日に旅に出よう」と。


  そして、その日がやってきた。


  それは旅立ちと別れの日だ。


  その事は誰しも知っていた。


  しかし、いざ、その日になると―――



  「あれ?」



  レインの瞳からは大粒の涙が流れていた。幾ら拭っても、拭っても、それは止まらない。


  まるで止まることを忘れた歯車の様に、またはせき止めていたダムが崩落し、溢れ出したかのように。


  レインの瞳からは大粒の雨が降り注いだ。



  それは伝染し、ルーナの瞳にも。

  シアの瞳にも。クリスタの瞳にも。


  止めどない雨がアルクールの森に存在する世界一温かい木のログハウスに重く、重く降り注ぐのだった――




 ◇◇◇


  家族全員で泣いた。


  分かっていた。


  けれど我慢出来なかった。


  十二年間、精一杯の愛情を注いでくれた母さん。その顔を見ただけで涙がどうしようもなく流れてきそうだった。でも、頑張って我慢した。なのに――


  二年前突如現れたクリス姉。たった二年間しか一緒にいなかったのに、初めからいたかのように感じる程、俺達に馴染んでいた。今ではクリス姉がいない生活なんて考えられない。本当の俺達の家族の一員になれた。そんなクリス姉の前では涙は似合わない。なのに――


  母さんの涙。クリス姉の悲しそうな顔。


  そんなの反則じゃないか――


  そして、俺は泣いた。


  とにかく泣いた。


  涙が枯れても泣いた。


  別れが辛い訳じゃない。


  だってそれは分かっていたから。


  別れが辛いのは当たり前だから。


  俺は二人が大好きだった。


  ずっと一緒にいたいと思っていた。


  今も思っている。


  けれど、決めたのは俺だから。


  旅に出たいと言ったのは俺達だから。


  だから、笑って。

 

  別に会えなくなる訳じゃない。


  会いたくなったら帰ってくればいい。


  だから。だから、笑って。


  「行ってきます」を―――






 ◇◇◇


  悲しい。


  寂しい。


  まだ離れたくない。


  でも、そんな事は我儘だ。


  お兄様と約束したのだ。


  お兄様が大好きだ。


  だから、お兄様の夢を自分も叶えたい。


  お兄様のお側にいる。


  それが一番の幸せ。


  なのに、このままじゃ。


  決意が揺らぐ。


  このまま出発してもお兄様の足を引っ張ってしまう。


  そんな事は分かってる。


  でも。


  それでも。


  大好きなお母様。

 

  大好きなクリスお姉様。


  二人の元を離れるのがこんなに悲しいなんて。


  それでも決めたのだ。


  四年前の今日、お兄様との約束を私の生きる意味にすると。


  だから。


  なら、止まっていられない。


  きっとまた会える。


  ならばそれまでの我慢だ。


  別れの時はなんて言うのだっけ?


  あぁ、そうだ。


  別れの時は笑顔で。


  「行ってきます」と―――






 ◇◇◇


  本当に行ってしまうのね。


  分かっていた事よ。


  この子達ならいつか私の元を離れていくなど。


  分かっていたはずよ。


  なのに。


  本当は行って欲しくない。


  あの日、言われた事が今日まで夢に現れてきた。


  「俺達、旅に出るよ」


  あの時のレインの顔はとても清々しかった。


  だから、その時は全く悲しくなかった。


  だってそんな予感はしていたのだから。


  でも。


  でも。


  とても楽しかった。


  毎日が幸せだった。


  私には不相応なぐらい。


  きっとこれが私への罪なのだろう。


  私を恨み、妬み、死んでいった奴らの。


  でも、それは間違いなのかもしれない。


  私の生きる意味はあの子達になった。


  それは今でも変わらない。


  ならばせめて。


  いつかあの子達が帰ってきた時に。


  「ただいま!」という一言を聞くために。


  私はこれからを生きるとしよう。


  なに、人間にとっての一年など、私にとっては一分のようなもの。


  あの子達の帰りを待ちながら日々を過ごすのも悪くないだろう。


  ならばこの場は。


  笑顔で送り出すべきだ。


  それこそ、母親の務めだろう―――







 ◇◇◇


  楽しかった。


  あんな日々が私に訪れるとは思ってもいなかった。


  毎日が幸せだった。


  あの子達の笑顔を見るのが好きだった。


  あの子達の悔しそうな顔が好きだった。


  あの子達の声が好きだった。


  あの子達の成長を見るのがとても楽しかった。


  お姉ちゃんはこれを十年も多く経験したのだろう。


  それがとても羨ましい。


  私の生きる意味はあの子達と共に生きることなのだろう。


  そう思える程幸せだった。


  それが今終わろうとしている。


  悲しい。


  寂しい。


  こんな感情、酷く久しぶりだ。


  でも。


  あの子達がさらなる成長をして帰ってきたらと思うと。


  不思議と楽しみで仕方がない。


  別れは辛い。


  そんな事嫌という程味わってきた。


  しかし。


  別れが少し楽しみというのは生まれて初めてだ。


  やはりあの子達と会えてよかった。


  ならこの場で待とう。


  あの子達の帰りを。


  そして帰ってきたら教えてもらうのだ。


  どんな旅だったのかを。


  あぁ。


  楽しみが増えてしまったなぁ―――




 ◇◇◇


  辺りは静まり返っていた。


  先程までの泣き声は今はもう無い。


  あるのは家族の笑い声。


  アルクールの森にある世界一温かい木のログハウス。


  そこに元気な子供の声が二つ響いた。



  「「行ってきます!!!!」」






  龍に育てられた兄妹の世界を謳歌する旅が今、始まりそうです。



今回で序章終了です。

次回から新章スタート!

漸く旅が始まりそうですよ。

これからの兄妹の活躍にご期待ください!

1章からはルーナの出番もちゃんと増えますよ!最近ルーナの出番少なかったから増やしてあげないと…。

取り敢えずここまで書くことが目標だったので無事ここまで書くことが出来て良かったです。


話は変わりますが、いつの間にか総pv数が10000を超えていました!

誠にありがとうございます!皆様のアクセスが励みなっております。そして、更に応援してやってもいいよという方は下の評価ボタンを押して頂けると幸いです。

これからもこの作品をよろしくお願いします。

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