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23話 計画通り

今回もお楽しみください。

「……よし、やるか」


 俺は木材に手をかける。

 ぐっと力を入れて、ズレた柱を元の位置に戻す。

 こういうのは力任せにやるしかない。細かい調整はあとだ。


「ライルくん、重いのは無理しないでね?」

「お前に言われたくない」

「しないよー!」


 リスみたいに顔を膨らませ否定する。


「セラはそのまま落ち葉集め続けてくれ。足場整えないと話にならん」

「はーい!」


 元気よく返事をして、またしゃかしゃかと動き始める。

 さて――


「ノエル」

「なに?」

「この接合部見てくれないか。釘の位置がズレて甘いとまた同じことになるからここをこう……」

「そうなの?」


 ノエルはすっとしゃがみ込んで、木材の継ぎ目を確認し始める。


「……ほんとね、浅いわこれ。これじゃ風来たらすぐ抜ける」

「だろ」

「釘もうちょい奥に入れるか、角度変えた方がいいわね」

「その辺は任せていいか?」

「わかったわ」


 手際よく、釘の位置を調整していく。

 こういう細かい作業は、あいつに任せた方が早い。


「マリー」

「はいですわ!」

「その辺の枝と蔦、全部どけてくれないか。壁に絡んでるとあんまり良くはない」

「なるほど……確かに引っ張られてしまいますわね」


 納得したように頷くと、すぐに動き出す。


「では、丁寧に取り除きますわ!」

「ありがとう」


 蔦を外したり、余計な枝を払い落としたりと、見た目以上に大事な作業だ。

 余計なものがあるだけで、風の受け方は変わる。

 そして、俺も作業に取り掛かり時間が経っていく。


「……こうして見ると」


 ノエルがぽつりと呟く。


「ちゃんと作業してる感が出てきたわね」

「前は違ったみたいに言うな」

「だって前はとりあえず組んだって感じだったじゃない?」

「否定はできないな」


 苦笑しながら、木材を押し込む。

 ぐらつきが減ってきた。


「でも今回は違うのね」

「……まぁ、そうだな」


 やることが見えている分、無駄がない。


「ライル、そこ少し押さえてくださいまし!」

「おう」


 マリーの声に応じて、木材を押さえる。


「今、蔦外しますわ……はい、これで大丈夫です!」

「いい感じだな」

「ふふ、任せてくださいませ」


 どこか誇らしげだ。


「ライルくーん、葉っぱこんな感じでいい?」


 セラが両手いっぱいに集めた落ち葉を見せてくる。


「その辺にまとめとけ。あとで燃やす」

「はーい♪」


 相変わらず楽しそうだ。

 さっきまで落ち込んでたのが嘘みたいに、もういつもの調子に戻っている。

 ……単純というか、素直というか。


「……ねえ」


 ふと、横から声が落ちる。


「なんだよノエル」

「さっきから思ってたけど」


 じっとこちらを見る。


「やっぱり手際いいわね、あんた」

「またそれか」

「だってそうでしょ。やること決めてるし、無駄がないから」

「まあ、なんとなくでやってるんだけどな」

「なんとなくでできる感じなのかしら」


 視線が、少しだけ鋭くなる。


「どこで覚えたの?」

「何の話だ?」


 とぼける。

 けど、ノエルは一瞬俺の顔を見てからふっと目を細めた。


「あぁ、今日持ってた本」

「……っ」


 言葉が詰まる。


「図星ね」

「……別に、大したことじゃないって」

「簡易建築とか、そのへんでしょ?」

「よく分かるな」

「ちらっと見えたから」


 あっさり言われて、ため息が出る。

 そうだ、前回土台を作ったまでは良かったが、その後どうすればいいのか分からなかったからだ。

 なので村の蔵書庫で見つけた本で軽く勉強したってところだ。


「勉強熱心ね、どれくらい勉強したの?」

「いや、そんな大して読み込んではないからな」


 まぁでも、ほとんどが雨風で脆くなってくれているおかげで、改善すべきだと思っていたところをイチからやることが出来た。怪我の功名ってやつだ。


「はぁ、素直じゃないのね。でも納得はしたわ」


 ノエルは小さく頷く。

 それから、少しだけ声を落とした。


「セラには言ってないのよね?」

「言ってどうするんだよ」

「ふーん」


 少しだけ、意地の悪い笑み。


「黙っててあげる」

「なんでだよ」

「その方が面白いから」

「はぁ、お前な……」

「それに」


 ちらっとセラの方を見る。


「どうせ恩を着せる為にやったわけじゃないでしょう?」

「……そりゃあな」

「でしょ? だって楽しみにしてそうだったものね、あの子」


 ノエルがくすっと笑う。

 同時に、バレていたんだなと俺も肩をすくめる。


「だから、しばらくは私だけの秘密」

「勝手に決めるな」

「いいじゃない、減るもんじゃないし」


 そう言って、何事もなかったかのように作業に戻る。

 ……なんなんだこいつ。

 まぁ、そんな野暮なことは口にしないはずだ。信用しておいてやろう。


「ライルくーん、これどこですかー?」


 セラの声が飛んでくる。


「その柱の横だ、今行くから待っててくれ」

「はーい♪」


 元気な返事。

 夕方の風が少しだけ強く吹く。

 けど今度は、さっきまでよりも揺れが少ない。


「……よし」


 手応えがある。

 壊れて、直して。

 今度は少しだけ、ちゃんとした形に近づいている。


「もう少し頑張ってみるか」


 誰に言うでもなく呟いて、俺は次の木材に手をかけた。




面白い、続きが見たい!思った方は評価、ブクマ、リアクションもよろしくお願いします。

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