第53話 第三結界の戦い 1
「ラビエヌスに促されて入いったものの、さてさてどうしたものか」
勢いで中に入って行ったものの、カエサルは悩んでいた。
敵に関する情報が一切ないこと。
島津の部隊を置いて一人できたため、ここで戦闘になると非常に分が悪いこと。
などなど問題があった。
しかし、そのうちの一つは解消される。
遅れて、島津義久達が入ってきたのである。
「カエサル殿!!急に行かれては困りまする!」
「ああ……ああ、すまないすまない義久殿」
「いや、なにラビエヌスの言うことに一理あると思ったから行動したまでで、貴殿らを困らせる意図などないですからね、義久殿」
「それは理解しておりまする。しかし、そうならそうと一声かけてくだされ」
「次からはそうさせてもらいますよ」
「しかし、敵はどこにも見当たらんぞ兄上」
さらに遅れて一人辺りの偵察に行っていたであろう歳久がやってきてそう伝える。
「いや、おるではないか。ほら、正面に」
そう言いながら義弘の指さす方には白衣を着た男がいる。
その男はしゃがんで何かをしているようだ。
「怪しいな、儂が斬ってこようか兄者」
「待て家久、まだ敵と決まったわけではない」
刀に手をかける家久を義久が制止する。
「ふむ、私が話しかけてこよう。義久殿たちには迷惑をかけたからな」
そうして、カエサルはその男の方へとコツコツ歩みを進めていく。
「貴殿なにものかな?」
「……………………危ないですぉ、そこ」
「なにが危ないのだ」
「ほら、地雷とか………いや、貴方たちは知らないか」
「見てもらった方が早いですね」
「…………ばぁん!」
男がそう叫ぶと、カエサルの真下の地面が爆発し、炸裂音と煙が起る。
「カエサル殿!!!」
義久が駆け寄ろうとした束の間、煙の中からなんと無傷のカエサルがでてきた。
「不思議だ。実に不思議。音と、煙だけで何もありませんでしたよ?」
「…………はっはっはっはっは!!!!」
「いや、失礼失礼。単なるこけおどし、おもちゃですよぉ」
「とりあえず、このいたずらのことは水に流してやる。正体を明かせ」
義久もどんどん男に近づいていく。
「ところで、地雷とはなんなのだ?そんなものローマにはないぞ」
「ああ!それなら今、貴方のお仲間が踏んだ奴ですよ」
義久が目線を落とすと、確かに自分の足で丸い何かを踏んでいた。
瞬間、けたたましい炸裂音と共に爆発する。
「よ、義久殿!!」
「気おつけなきゃダメですぉ?誰も”全部おもちゃ”とは言ってないんですから」
「貴様!!」
「ちなみに貴方も踏んでますからね」
知らぬ間にカエサルも地雷を踏んでいたのだ。
気づいた時にはもう遅い。
再びけたたましい炸裂音と共に爆発が起きる。
「さーて、二人撃破ですか。まだまだ実験したいんですけどね、もうあと被験者も3人ですか」
男の目線はすでに残された3人を捉えている。
いつでも殺せる準備は整っているということだ。
「あ、ご挨拶が遅れましたね。私、六将鬼の爆と申します。以後お見知り置き――」
「チェストオオオォォォ!!!!」
それでも臆することなく、3人は刀を構え男に向かって行く。
「なんと野蛮な……!けどね、それは自殺行為ですよ?正面から私に向かってくるなんて!」
爆が3人の攻撃に対して構えをとる。
その時―――
「………うっ………な、なんと…………」
倒したと思っていたはずの義久が爆の足を刀で刺したのだ。
「うーむ、まずいですね。まずいですよ、いや非常に」
足を刺されて簡単には動くことができない。
そして、もう目前に迫った3人。
どうあがいても攻撃を食らうのは避けられない状況のはずだが、どこか余裕を感じる。
「まずいといっても、焦る必要はないですけどね」
「芸術的な絶対防御爆発」
爆の手のひらで爆発が起こり、正面に迫った三人を吹き飛ばす。
「そしてあなたはいい加減離れてくれますか?」
爆は義久の刀に触れ、爆発を起こすとその力で刀を折った。
「ククク…………ハハハハハ!!!」
爆は急に笑い始め、パチパチと手を叩いて喜んでいる。
「いいデータが取れました。義久?と呼ばれているあなたのおかげで」
「威力を調整したとはいえ、軽症で済んでいるとは!四肢も飛んでいない………!すばらしい、すばらしいですよ!」
「まぁ……破滅への終末闘争の影響もあるのでしょうが……それでも破滅への終末闘争の強化率などを知るいいデータになりますからねぇ!これは貴重ですよ!!」
「ああ…………!もっと試したい、もっと実験したい、もっと芸術を爆発させたい!!!!」
恍惚とした表情を浮かべ、天を仰いで笑っている。
「私にとって爆発とは芸術!!美しく爆発し!美しく散る!!そこにこそ真の美学というものがあるんです!!私はその道の求道者だ。もっと磨きたい、もっともっともおおっと!!」
「そして天寿を全て賭けて、磨き上げた先で究極の芸術を完成させる!!それが私の道の果てです」
「まだ貴方で実験をしたい。まだ死なないでくださいよ!」
「歳久、家久、距離を置くぞ」
義弘の号令で、その場から離れようとする。
しかし、爆は簡単には逃がしてくれそうもない。
「どこへ行こうとしているのです?逃がしませんから!」
「芸術的な追尾炸裂弾!!」
爆の手のひらから義弘たちに向けて放たれた爆弾は、地面を這って義弘たちを追いながら細かく炸裂している。
クラスター爆弾に自動追尾の性能を足したようなものだ。
「くっ…………!兄者、先に行け!」
少し遅れていた歳久がついに爆弾につかまりそうになっている。
それを悟ったのか、先を行く2人にかまうなと言わんばかりに叫ぶ。
「歳久ーー!!」
2人が振り向いた時には激しい炸裂音と共に歳久が爆煙の中に消えていった。
「いいですね!!いいですねぇ!!!素晴らしい威力です!時間がたってきて破滅への終末闘争の出力が上がってきていますよ!!」
高らかと笑う爆をよそに義久、義弘、家久たちは戦慄を覚えていた。
早々に生死不明者が2人。
義久は怪我を負い、敵は刻一刻と強くなっていく。
打開策なし。最悪のピンチである。




