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神の愛した桃源郷  作者: 魚精神
第三章 異界見聞旅編 第一節 リブラ王国編
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第52話 第一結界の戦い 2

 「この姿になったからにはこんなものいらねぇ」


 豪は持っていた金棒を地面に捨てた。

 呂布はその光景を戦慄した表情で見るしかできなかった。

 自身も人外にいると思っていたが、”本物”の人外とはこうも規格外なのかというのをまじまじと見せつけられていたからだ。


 「………赤兎馬(せきとば)!」


 呂布の呼びかけに応じ、巨体の馬が駆け寄ってくる。


 「いい馬だな、それと合わせてさらに強くなるってことか?」


 真に呂布が最強になるのはこの赤兎馬に乗ったときである。

 この呂布を止めるのは人間では絶対に不可能である。


 「赤兎馬の足があればお前とも張り合える」


 「ははは……おもしれぇ!」


 「筋縮爆発・天断きんしゅくばくはつ・あまねだち


 足の筋肉を一瞬で膨らませてから、収縮させ飛び上がる。

 そして呂布の脳天をかち割らんと、強烈なかかと落しを放つ。


 何とかそれを受け止めるとすぐに弾き飛ばす。


 「そう簡単にはいかねぇよな」


 「次はこちらの番だ」


 呂布は赤兎馬に乗り、豪の周りを駆けだす。

 並みの馬では出せないスピード、そこから繰り出される攻撃は人間では避けることは不可能。

 しかし、豪はギリギリでよけ続けている。

 彼の場合はギリギリでよける必要はないのだが、あえてそうしている。


 「悪くないけどな、俺にはすべて見えている。次はそこだ」


 「衝拳波(インパクト)!!」


 呂布の動きを完ぺきにとらえていた豪は次に来る場所に向かって拳を振りぬいた。

 その突然の攻撃を避けられるわけもなく、呂布に直撃する。


 「………………………………はぁ…………はぁ…………」


 「お前はほんとにタフだな。お前の当たった建物と後ろ2、3軒を破壊する威力だったのによ」


 息も絶え絶えだが、呂布は何とか生きていた。

 赤兎馬も同様に。


 「まだ…………終わらんぞ…………」


 何とか立ち上がると再び赤兎馬に乗り、駆けだす。


 「意味ねぇんだよ。その動きは全部見えてるんだからな!!」


 「これで終わり――」


 「てやあああ!!!」


 「!?」


 それは全くの予想外だった。

 とっくに倒したはずの王賁がいきなり後ろから豪を斬りつけたのだ。


 「ぐはあっ……てめぇ!!!」


 「今………で……す!呂布殿!!!」


 一瞬の出来事に目を離したすきに呂布は豪の近くに迫っていた。

 ただの一撃。普段ならおとなしく受けるかもしれないが今は状況が違う。

 

 豪の身体は無理やり増幅と圧縮を繰り返し強化したため身体が悲鳴を上げていた。

 技を打つ、大きな動きをするたびにどこかの骨が折れたりしていた。

 ゆえに速度の乗った高威力の一撃をもらえば致命傷になる。

 かといって避けられるかも五分五分だった。


 「一か八かやるしかねぇ!!」


 「筋縮爆発・天逆鉾きんしゅくばくはつ・あまのさかほこ!!」


 賭けに出た豪は最初のように一気に空中へと飛び上がる。

 賭けは成功したのだ。


 「なっ…………!」


 呂布からしてみれば捉えた獲物が急に視界から消えたのだ。

 驚くのも無理はない。

 そして、一度振り上げたものを簡単におろすことはできない。

 豪に向かうはずだった一撃はこの隙を作ってくれた王賁に無情にも向くことになった。


 「ごはっ…………!!」


 王賁は呂布の一撃でふき飛ばされ、建物に激突した。


 「ぐっ…………しまった…………」


 「おいおい、上にはまだ俺がいるんだぜ!」


 「しまっ―――」


 気づいた時にはもう豪の足が頭に当たっていた。

 重い一撃が呂布を襲う。


 「がはっっ…………!!!」


 呂布はそのまま地面に叩きつけられてしまう。

 赤兎馬ごといったので、赤兎馬はその下敷きになってつぶれてしまった。


 「ははは!!!!危なかったが、なんとか勝ったぞ!!」


 「呂布、王賁。お前らは強かったさ、名前は覚えておこう」


 豪は勝ちを確信していた。

 当たり前だ。

 あれだけの攻撃を受けて、もう立てるはずもないのだから。


 ただし、その”当たり前”を超えてくるのが英雄とうたわれる人外なのである。


 「な…………に…………をいって…………いる」


 「……おいおいおいおい、まじかよ。まだ立つのか」


 呂布はあの一撃をもらいながらも立ち上がってきたのだ。


 「一体何がそこまでお前を駆り立てる?」


 「貴様のような強者を前に……地に伏せったままなどもったいないだろう」


 「はは……そうかよ」


 だが、状況は絶望的だ。

 動けるのは満身創痍の呂布だけ、王賁は動く気配なし。

 対して、豪は身体への負担があるとは言え、呂布よりかははるかにましな状態だ。


 「さぁ、どうする赤兎馬は死んだぞ。ボロボロのお前ひとりでどうする?」


 「…………」


 「かといって俺も余裕はねぇんだ。できるなら一撃で決めてしまいたい」


 「技を使えてもあと3回ほど……それを捌けたらあるかもな」


 「そろそろ始めるか、最後の攻撃を!」


 「………こい」


 「いいだろう!まずは一撃目!!」


 「筋縮爆―――」


 絶望的な状況、そう見える。

 しかし、それは豪から見た視点でる。

 呂布から見た視点は―――希望しかなかった。



 「ぐあああああ!!!!」


 「まだ……私も死んでないんですよ!!」


 「お前!!!王賁!!!!」


 またしても、王賁による死角からの攻撃を食らってしまった。

 しかも、筋肉を膨らまして圧縮しているときに食らったので、ダメージは先ほどの比にならない。

 もう、足は使い物にならないだろう。


 「お前……お前もか!!こっち側にいるのは!!」


 「お前を始末して…………はっ!」


 呂布を近づけるにはあまりに大きい隙だった。

 もっとも、呂布からは豪と会話している間も王賁が動いてきているのが見えていたため、すぐに動き出せたのだが。


 「ちくしょうがああああ!!!」


 「ふん!!」


 お返しといわんばかりに呂布が豪の脳天目掛け放った一撃を豪は腕で防ごうとしたが、間に合わず完全に決まった。


 「がはああっ…………!!!」


 そのまま豪は地面へと叩きつけられた。

 無理な増幅と圧縮の反動も同時に来たため、当分立ち上がることはできないだろう。

 豪が地面に倒れたと同時に結界も崩壊した。


 第一結界攻略完了



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