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神の愛した桃源郷  作者: 魚精神
第三章 異界見聞旅編 第一節 リブラ王国編

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第54話 第三結界の戦い2

 ユリウス・カエサル、島津歳久ともに生死不明。

 島津義久、重症。

 状況はまさに最悪を極めている。

 しかし、そんな中でも残った2人は打開策を何とか見出そうとしている。


 「兄者、とにかく走るのだ」


 「しかし…………」


 「兄者!しっかりせい!敵はまだ煙の向こうにいるのだ!とにかく逃げなければ歳久の行動に意味がなくなってしまうではないか!!」


 「!」


 「とにかく、少しでも有利に戦えそうなとこまで逃げるのだ。そうすれば…………きっと!」


 そうして、2人は再び走り始める。

 2人の向かっている方は市街地。

 今いる場所より狭く、2人にとって戦いやすい場所である。

 

 「おや………2人の姿が見えませんねぇ。逃げられましたか…………まぁいいです。行き場は大体わかるので」


 爆の目の前から煙が晴れた時、もうそこに2人の姿はなかった。

 それに少し戸惑った表情を見せたがすぐに不敵な笑みを浮かべる。


 「十中八九、市街地でしょうねぇ……!そこなら私とも渡り合えるとお考えなのでしょうが……ククク、残念でした。そこはすでに私の領域(テリトリー)です」


 そうである。

 2人は知らないが、既にそこは爆が罠をそこら中に張り巡らせている場所なのである。

 その罠は徐々に2人の喉元に迫るのである。




――――――


  爆が2人を追いかけているころ、もうすでに2人は市街地へと入っていた。


 「兄者、ここからいかがする?」


 「二手に分かれ、路地にて敵を待つのだ」


 「御意。武運を祈る、兄者」


 「ああ。家久、死ぬでないぞ」


 2人は別れて、それぞれ違う路地の方へと入って行く。

 しかし、この判断は大きな間違いである。

 なぜなら、一番多く罠が張り巡らされているのは路地だからである。

 最初にその罠を踏む羽目になったのは家久である。



 「この辺か…?いや、もう少し奥の方に……」


 家久は狭い路地からの奇襲が最も通りやすい場所を探っていた。

 そして、事が起きたのはその時である。


 「な!」


 家久は足元に張られたピアノ線に気づかづ、足を引っかけてしまったのである。

 家久はそのまま体勢を崩し、転んでしまった。


 「しまった……こんなところに罠があるとは」


 ただ転んだだけで済むならよかった。

 だが、それだけで終わらないのが爆の仕掛けた罠の恐ろしいところである。


 「……ん?何か音が」


 家久は異変にすぐに気付くことができた。

 このピアノ線に引っかかると爆弾が起動するようになっている。

 つまり、爆弾の起動した音に気付いたのである。


 「まさか……!!しまった!!」


 家久はすぐさま自分の状況を理解した。

 この罠が単純に転ばすだけのものではないことを。

 しかし、幸いだったのは家久がすぐに異変に気付けていたことだ。


 「ふん!!」


 家久は刀を抜くと、地面に突き刺した。

 それを支えに反動をつけ、起き上がると同時に刀を引っこ抜いた。

 そのすぐ後、先ほどまで頭があった位置の両側の壁から炎が勢いよく噴き出ている。


 「はぁ…はぁ……久々に肝を冷やしたぞ」


 薩摩の武士とは言え、さすがに焦ったようである。

 そして一息つこうと思った束の間、別の所からも爆発音が聞こえたのである。


 「!!兄者の向かった方からだ!」


 家久はその音が義弘の向かった方から聞こえていると瞬時に理解した。

 そして理解すると同時に、その足は義弘の方へと向かっていたのである。



 ――――――


 家久と別れた義弘もまた路地にて奇襲のための場所を探し続けていた。

 そんな時に家久の向かった方向から爆発音が聞こえたのである。


 「!今の音は家久の方からだ……………くっ!家久!」


 義弘はすぐに家久の方へと向かい走る。

 もし、家久が敵と当たっていた場合、一人では到底太刀打ちができない相手である。

 すぐに向かわねば家久まで……………………

 そんなことにはさせまいと必死の思いで義弘は走っていた。


 だが、敵は家久ではなく、義弘の方に居たのである。

 義弘が走っていると突然、右側の壁が光り、爆発したのである。


 「ぐ…………うう…………」


 突然の爆発に何が起きたか義弘は理解が追い付いてなかった。

 そんな中、煙の中から爆が出てきたのである。


 「いやぁ、実に運がいいですな。やれたのが貴方で」


 「貴…………様……!!」


 「おっと!その怪我で立ち上がろうなんて考えない方がいいですよ?死にたいんですか?」


 「黙……れ!薩摩武士は死……など恐れぬわ!!!」


 義弘は立ち上がると、刀を爆目掛けて思いっきり振りかぶった。

 それを爆はいとも簡単に受け止めてしまう。


 「悪くはないですが、ダメージを負いすぎましたね。動きにキレがありません。それでは私には届きませんよ。そして………貴方の攻撃も読めています」


 右手で受け止めたまま、半身振り返ると音を立てず奇襲しようとしていた家久の太刀をまたしても受け止めた。


 「貴方の方はまだまだ元気そうですね。しかし、そちらの兄に比べて力が劣るようだ。攻撃が軽いですね」


 冷静に今の攻撃を分析してくる。

 爆はそれほどまでに余裕があった。

 が、そんな状況でも2人はあきらめていなかった。

 2人は爆の手から刀を引き抜き、同時に斬りかかった。


 「「てやあああああ!!!!」」


 「おっと!」


 爆はその攻撃を避けるため後ろに飛ぶ。

 避けたのも束の間、息をつく暇もなく追撃をする。


 「危ない!」


 「よっ!」


 「ほっ!」


 しかし、その猛追撃をヒラリヒラリと華麗に避けていく。

 そして、いつの間にか3人は路地から大通りへと出ていた。

 

 「おや、いつの間にか路地を抜けていたようですね……おっと、人が分析している所を邪魔するのはいかがなものかな」


 大通りに出ていようが関係なく、まだまだ刀を振るってくる。

 それも避けていく内に大きな塔の方へ爆は追い詰められ、ついに塔の壁と背中合わせになってしまったのだ。


 「追い詰めたぞ……今投降すれば命は助けてやろう」


 「………寛大な心をお持ちなのですね。ですが………」


 口角を上げ、フッと不敵な笑みをこぼす。


 「貴方たちは私を”追い詰めた”のではなく私に”追い詰められた”のですよ」


 そう言うと、爆は塔の壁に触れた。

 すると、触れた部分から上が爆発し瓦礫が空中に飛び散る。


 「これがこの市街地に仕掛けた私の最大の罠です!塔の石一つ一つを爆弾に変えておきました!つまり、今から降ってくる瓦礫はすべて爆弾です!!」


 「なんだと…………!!」


 2人がその場を離れようとしたときにはもう遅かった。

 無数の瓦礫が地面に落ちていたのである。

 そして、それらは大爆発を起こしたのだった。

 今までで一番大きな爆発音と煙が上がる。


――――――


 その煙が少し晴れたころ、平然と立っている者がいた。

 爆である。


 「さ、フィナーレはお楽しみいただけましたか?………って聞こえてるわけありませんね。ま、これにて私の実験も無事終了というわけです。このデータを早速―――」


 爆は完全に勝ったと思っていた。

 しかし、その時背後の煙が晴れ、一筋の剣が振るわれたのである。

 横薙ぎに振るわれたその剣は爆の首に刺さったのである。


 「だ、誰がこんな………!はっ!貴方は………!」


 爆が驚くのも無理はない。

 この剣を振るった主はカエサルだったのだから。


 「あ、貴方!死んだはずでは…………!」


 「私が死ぬ?ははは!!馬鹿を言わないでくれ。妻を残して死ぬわけにはいかんよ」


 「くっ……!!そんなに自分の女性に会いたければとっととこの場から去ればいいものを!!あまつさえ私の邪魔をするとは!!!!」


 「いやいや、そういうわけにはいかんのよ。私はこの国に恩がある。私だけではなくわがまま言って妻まで生き返らせてもらった恩が。その恩を返すためこの国を守ろうと誓った。この国の平穏を犯す者は何者でも許すつもりはない。だからお前にはここで死んでもらわねばならん」


 「そうですか………!!でも、所詮は死にぞこないの剣。私を殺すには至りませんから!!」


 爆も負けじと首に剣が刺さったまま、カエサルに攻撃しようとする。


 「「チェストおおおおおお!!!!!」」


 その攻撃をしようとしたとき、煙の中から歳久と家久が出てきて、太刀を振るい、両腕を斬り飛ばした。


 「ああああああ!!!!クソ!クソクソクソ!!逃げなくては……!一旦腕が治るまで逃げなくては!」

 

 爆は地面を爆発させ、空中に飛び上がろうとした。

 だが、そこで何かが足に刺さった感覚があった。

 視線を落とすと、義久が脇差を左足に突き刺しているのが見えた。


 「お、お前まで!!!なんだ、なんなのだ!ここにはゾンビのような連中ばかりいるのか!!!お前らはいつになったら死ぬんだよおお!!!……………………はっ!!」


 爆が視線を戻し、正面を見た時そこには鬼の形相で刀を構えた義弘が立っていた。


 「行け!」


 「行け!!」


 「行け!!!」


 「行け!!!!」



 「「「「義弘!!!!!」」」」



 4人はそれぞれ無意識のうちに託すように叫んでいた。

 そしてその思いにこたえるかのように義弘から最大の一撃が放たれる。


 「うおおおおおお!!!!!!」



 鬼の咆哮にも似た声と共に放たれた一撃は爆の胸を斬った。

 綺麗な袈裟斬り、しっかりと深く入っている。


 「あ…………ああ…………あ」


 か細い声を上げて爆はそのまま地面へと倒れた。

 そしてそれに合わせて結界も崩壊する。


 「やったな、義弘」


 「兄者!大丈夫なのか?」


 「ああ……なんとか」


 「歳久も大事ないか?」


 「ええ、義弘兄者の心配には及びませぬ。それよりも、カエサル殿もよく生きておられた」


 「なんとか、気合でな」


 互いの無事を確認しあっていた時だった、異変が起こったのは。


 「なんだ!?」


 最初にそれに気づいたのは義久だった。

 全員の注目がそこに集まる。

 

 「兄者どういうことだ?結界が同時に崩壊していっているぞ!」


 「義弘、儂にもわからん。だが確実に何かが起こっている」


 第三結界が崩壊した数分後、他の第二、第四、第五、そして第六結界が同時に崩壊したのだ。

 既に第三結界が崩壊する少し前に崩壊した第一結界を含めてすべての結界が崩壊したことになる。


 「すべての結界が崩壊したということは………」


 「ああ、破滅への終末闘争とやらが終わったのだ」

 

 「他の将達が頑張ってくれたということか」


 「いや、それはまだわからぬ。わからぬがそうと信じたい」



 しかし、義久達の期待とは裏腹に同時に崩壊した4地点の現場も混乱していたのだった。



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