第48話 破滅へ
よし、最初の段階は成功だ。
八雲の部下である六将鬼を俺の部下として一時的に扱えるかが不安だった。
だが、成功した!これで何も問題はない。
世界の破滅まで突き進むのみ!
(待て、ここら一帯を更地にして終わりではないのか!俺は世界を終わらせるなんて一言も言ってないぞ!)
(なにいってんだ?それはお前の解釈での一帯だろ?俺の一帯の範囲はこの世界すべてだ!)
(ふざけんな!!そんな無茶苦茶がまかり通るわけ―――)
(まかり通ってんだよ。事実、俺は何のペナルティも課しちゃいないからな)
(それに破滅への終末闘争の権限は俺にある。これが終わるまでは俺はどっちにしろ引っ込むことができない)
(ぐうううう!!紫怨!!!)
(ククク、そこで指くわえてるがいいさ。それとも祈ってみるか?この世界の人間が俺を止められることに)
無理だろうがな。
だが、可能性があるとするならば十二星将とかいう連中ぐらいか。
あとは…………噂をすれば……!
観客席の方から、俺の方へ向かってくる人影が三つあった。
そうだよな。お前らは放って置けないもんな。
「あとは、お前らだけだ。俺を止められそうなのは」
「……………………なんであんたがここに?」
ベルゼブブ。
普段のひょうひょうとした態度は今はないみたいだな。
相当の焦りようだ。
仕方ないか、”ご主人様”の前だもんな。
「そんなに焦るな。もっとフランクに行こうぜ。いつもの調子はどうした?ベルゼブブ」
「私の質問に答えろ!!なぜお前はここにいる!!!」
ベルゼブブに近づき、肩に手を置いて答える。
「なぜここにいるかって?それを聞いて俺が答えるとでも思ったのか?俺がそういう奴じゃないってのは知ってるよなぁ?」
軽くベルゼブブの方に目をやると、大量の冷汗をかいている。
「おいおい、ホントにどうしちまったんだよ。昔はこのぐらいで焦るような奴じゃなかったろ?」
「……………………」
「俺の予想以上に腑抜けたみたいだな。大魔王が聞いてあきれる」
「…………なんとでもおっしゃってください。もうあんたには関係ないのだから」
「…………ふっ、ハハハ。そうかい。で、ここに降りてきたってことは俺を止めに来たんだろ?」
「ええ、そうですよ。八雲の身体を返してもらいます」
「従者としての忠義って奴かぁ。立派になったもんだ。俺は見せてもらったことがなかったなぁ」
「六将鬼、お前らは街をぶっ壊してこい」
そう指示を出すと、すぐに街へと消えていった。
「けど、せっかく来てもらったとこ悪いんだが俺もこのまま簡単にやられるわけにはいかないんだよ。一撃で消えてもらう」
俺が左手を掲げると、危険を察知したのか二人を抱えて全速力で消えていった。
おそらく、俺の技範囲の半径100メートルからは出たな。
相変わらずの判断力だ。
「破滅の暴喰」
掲げた左手の平に力を集中させる。
そして、それを一気に握りつぶすと俺を中心とした半径100メートルがすべて更地になった。
「ククク、久しぶりに使ったがえげつねぇなやっぱり」
使用後、左手に強烈な痛みを覚えた。
「ああ、これだよ。この痛み。久々だからかな、いつもより数段痛えや」
さて、試し打ちも済んだとこだし、王宮へと向かおう。
――――――
リブラ王国でのこの”天災”についての情報はしっかりと戦地にいるアスの元へと届いていた。
―――この出来事を引き起こした人物についてもすべて。
「………なんてことを……!」
「しっかし大将、これからどうするんで?」
「まさかこの場を離れて全軍撤退なんていうんじゃないでしょうね」
「よくわかってるではないですか。すぐに撤退の準備です」
「大将、俺らがここ離れたらその隙に後ろから敵軍に攻められて終わりますよ」
「もはやこの出来事はリブラ王国だけではとどまらないのです。あれを見てください」
アスの示す方には世界樹がある。
アス達のいる場所からでも十分にみられる。
「なんじゃありゃ………!見たこともない枯れ方をしている……」
驚くのも無理はない。
元々なにも生えてなかった世界樹の枝は細く枯れ果て、垂れてしまっている。
木自体も細くなってしまっている。
「なんでこんなことに…………」
「世界各地で地殻変動の兆候ありとのこと。あの木は平和の証。それと同時にあの木が枯れ果て完全になくなってしまうことは世界の終わりを意味します。終わりが近づいているのです」
「…………どうやら国に帰り、元凶を止めなきゃならないようだが、しかし敵の動きも止めねば…………」
「それについてはもう心配ありません。敵の方を見てください、すでに撤退の準備を進めています」
敵方もせわしなく動いて、撤退の準備を大急ぎで進めている様子だ。
「政宗、撤退の指示を」
「はいよ。全軍、撤退の準備だ!!」
アス達も急いで帰る準備を進める。
大急ぎで進めたため、1時間以内にすべて終わった。
そして、馬を走らせる。
「先に騎馬隊だけでも帰るぞ!事態は一刻を争う!さらに飛ばす!俺についてこい!!」
アスから政宗と呼ばれていた男が後ろの兵たちに指示を飛ばす。
そう、この男が十二星将第六将の伊達政宗である。
副隊長は片倉小十郎景綱。政宗を常に支える右腕である。
「殿、後ろが大分見えなくなってきましたぞ」
「構わん。今は帰ることが先決だ。俺とお前そしてアス王子さえいれば最悪何とかなる」
気づけば後続はかなりおくれており、先頭を走っているのは政宗、小十郎、アスの三人だけになってしまった。
後続が見えなくなって15分馬を走らせると、目前にリブラ王国の国境が見えてきた。
「国境です。あともう少しでたどり着きますよ!」
「よし、ラストスパートさらに上げるぞ!」
政宗はさらに馬の速度を上げ、国境へとどんどん迫っていき、通り抜ける。
それに続き二人も通り抜ける。
王都まではこの速度で行けばあと5分といったところ。
――――――
アス達が国境を通り抜け、王都に向かっていたころ。
すでに、八雲もとい紫怨は王宮付近へと戻ってきていた。
「破滅への終末闘争の効果は絶大だ!六将鬼たちも存分に暴れている」
王宮を取り囲むようにして、ドーム状の六つの結界ができていた。
中には取り残された人間も当然いるがお構いなしに六将鬼たちはその中で暴れている。
「六将鬼たちが暴れて、闘争心をどんどん上げていくとそれに比例し結界も大きくなっていく。六つの結界が世界全土を飲み込めばこの世界は終わる」
「そして俺は王宮を乗っ取り、そこを中心としてさらに破滅への終末闘争を活性化させる。破滅への終末闘争を活性化させれば終末のカウントダウンは数時間から数分へと大きく減らすことができる」
「幸い、王宮にはあの愚かな王しかいない。乗っ取るのは実にたやすいことよ」
王宮へと続く道をどんどんと進んでいく。
「ん?誰か立っているぞ?」
王宮が目前と迫る中、道の真ん中に誰かが立っていた。
「ここから先へは通すわけにはいかん」
「てめぇ、誰だ?」
「儂は十二星将第一将王翦である。貴殿の蛮行この儂が止める」
「王翦……老いぼれに俺が止められるか」
「儂とて武将の端くれ、なめてもらっては困る」
その時、王宮の方からもう一人こちらへと近寄ってくるものがいた。
「父上!この賁も一緒に戦いますぞ!!」
「賁、お前は軍を率いてあの結界を破壊しに向かうのじゃ。今各地から十二星将が着々と帰ってきておる。王宮北西の第一結界の方に向かうのじゃ。すでに一部隊帰り着いておる。その部隊と協力するのじゃ」
「しかし…………」
「行け!!早く!!!」
「っ…………!」
出てきた王賁は王宮の方へと走って戻り、しばらくして1000人規模の騎馬隊を引き連れ、下へと下って行った。
「儂らもそろそろ始めるかの」
「いいぜ、ひねりつぶしてやるよ」
世界の滅亡を賭け、各地で戦いが起ころうとしていた。




