表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の愛した桃源郷  作者: 魚精神
第三章 異界見聞旅編 第一節 リブラ王国編
47/55

第44話 リブラ王国

 「す、すごい………!桃源郷とは何もかもが違う……!人の流れも街並みも」


 「見とれてないで、早く行きますよ」


 ぼーっと街に見とれている俺に、早く移動するようアリエルが促す。

 俺は促されるまま、アリエルの後を追う。


 「なぁ、これからどこに向かうんだ?」


 「一先ず、王宮の方へ向かう手はずになっています」


 「この国の王宮か。わかった」


 おそらく、見聞旅の挨拶といったところで俺の紹介も兼ねているのだろう。

 この国の規模を考えると王宮もさぞかし大きいのだろう。


 「ごめん、その前にちょっと―――」


 アリエルに声をかけようとしたとき、路地の方から悲鳴が聞こえた。

 足を止めて、路地の方に耳を傾ける。


 「…………だれか、たす……け……て」


 その声が聞こえた時、俺はその声の方へと飛び出していた。


 「!待って八雲!」


 アリエルの静止をよそに走る。

 すると、少女の腕を引っ張る男の姿が見えてきた。

 どう見ても、人さらいにしか見えない。


 「おい、その手を放せ」


 「ああ?なんだお前」


 「その子を攫って何する気だ」


 「何するって、売るんだよ」


 「売るだと?」


 「そうだ。こいつは金になる。子供の亜人ってのはな」


 「それに俺の行為は合法だ。お前に止められる筋合いはない」


 「だからといって、このままみすみす下がるわけにはいかない!」


 「じゃあ、お前が代わりにこいつの売値の倍払うってんなら放してやってもいいぜ」


 「っく…………」


 俺が払えないことを悟ると、そのまま連れ去ろうとする。

 少女は依然として助けを求めているのに、俺は何もできないのか!?

 クソ……かくなる上はやるしかないのか?


 「そこまでだ!」


 俺が刀に手をかけたところで、誰かがそう叫ぶ。


 「王子……こんなところで何の用です?」


 「またお前か、人攫いのキース。何時まで経っても懲りないようだな」


 「懲りるも何も、合法だって何度も言ってるでしょう!」


 「合法であるのは人目についてない場合だ。私含め、ここには4人の目撃者がいる。これは人目についてないとは言えるのか?」


 「ぐっ……!ああ、わかったよ!離せばいいんだろ!離せば!」


 男は手を放し、ブツブツと何か言いながら足早に去っていった。

 王子と呼ばれていた人物が少女へと駆け寄る。


 「大丈夫?ケガはない?」


 少女はその問いに対し、小さく頷く。


 「そっか、それはよかった。お父さんかお母さんの場所はわかるかな?」


 「…………お父さんもお母さんも私をかばって、連れ去られちゃった」


 そう答える少女は今にも泣きそうな顔をしている。


 「……………………大丈夫。私が何とかするから」


 彼は少女の頭に手を置き、優しく撫でる。

 安心したのか少女も落ち着きを取り戻したようだ。


 「君、お腹はすいてないかい?何か御馳走しよう。そこのお三方もどうかな?」


 少女は頷く。

 俺もちょうど腹が減っていたし、この誘いにありがたく乗ることにした。


――――――


 彼の案内で、町の小さなレストランに入った。

 メニューに目を通すと、知らない料理ばかりだ。


 「あの、これってどんな料理なんだ?サルモンの酸味焼きって」


 「ああ、それはね。サルモンっていう白身魚を焼いて、酸味のある山菜や果物の汁をかけたものなんだ」


 「へーじゃあ俺はこれにしようかな」


 各々好きな料理を注文する。

 料理を待つ間、王子と話をする。


 「まずは自己紹介からかな。私はリブラ王国王子のアス。普段は次期王として内政に関わったり、軍の指揮を執っています」


 「俺は神代八雲。今は見聞を広げるための旅、見聞旅の一環でこの世界にやってきている」


 「おお!では君が今日からやってくるっていう例の異世界人か!」


 「うん。で、こっちが付き添いのアリエルとベルゼブブ」


 「アリエル・ハルナードです。早速王子にお会いできて光栄です」


 「フフフ、私の名はベルゼブブ。貴方、私の主に負けず劣らず面白そうな人ですねぇ」


 そういって身を乗り出して、観察しようとするベルゼブブをアリエルが制止する。


 「最後に、君の名前は?」


 「あ、私はイリスといいます………えっと、ウサギの亜人です」


 「亜人?」


 「ああそうか。八雲たちは知らないか。この世界にはいろいろな種族がいて、その中で人間と獣人のハーフが亜人なんだ」


 「なるほど」


 「それでここからの話なんだが、この国と亜人、獣人との関係の話なんだがあまり気分のいい話ではないから聞きたくなければ別に聞かなくても構わないよ」


 「いや、聞かしてくれ。俺は知りたい」


 「わかった。じゃあ話すよ」


 そういって彼が話し始めた。


 「この国は建国から人間が治めてきた国だ。しかし、他の種族と関係を持たなかったわけではなく周辺の他種族の国家とは良好な関係を築いてきた」


 「だけど、数代前の王から方針をがらりと変え、周辺の国とは敵対するようになってしまった。特に関係が悪化したのが亜人と獣人の国家だった」


 「なぜそうなったかというと、この国にやってきた獣人や亜人を奴隷として売り買いするようになってしまったからだ」


 「結果、今までそのような状態が解消されず今回八雲たちが出会ったような人攫いの光景が日常化してしまった」


 「というのが、リブラ王国と亜人、獣人との関係性なんだ」


 「そうか…………確かに気分のいい話ではないな」


 「私はこの現状を変えたくて奴隷制度の廃止をずっと訴えかけてきた。しかし、大きくは変わらず法を少しいじって対策した気になっているものだけ」


 「王…………私の父に進言しても突っぱねられてしまう。あの人には今の利益しか目に入っていないんだ」


 「ごめんね。食事の前にこんな話をしてしまって。さ、あったかいうちに食べてしまおう」


 アスと色々話をしていると、いいタイミングで料理が運ばれてきた。

 とりあえず、食事を終わらせてしまおう。


――――――


 食事を終え、レストランの外に出る。

 しかし、あのサルモンの酸味焼きという料理はなかなか美味しかった。

 ぜひ滞在しているうちにもう一度食べたい。

 

 「皆はこれから王宮へ向かうのかな?ぜひ私も一緒に立ち会わせてほしいがいかがかな」


 「ええ、問題ありませんよ。なにせ、アスさんはこの国の王子なんですから」


 「よかった、なら王宮の前で落ち合おう。私はイリスを安全な所へ送ってから向かう」


 「わかりました。では王宮の前で」


 そういって、アスといったん別れる。

 道中意外なアクシデントがあったが当初の目的の王宮へと向かうわけだ。

 この国の王宮はどんなだろうか。今から楽しみだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ